【完結】家も家族もなくし婚約者にも捨てられた僕だけど、隣国の宰相を助けたら囲われて大切にされています。

32.王の答え（メレディス視点）

　
　コンコン
「ソリターリオ様とベリッシモ伯爵をお連れいたしました」
「入ってもらえ」

　私たちが昨日訪れた部屋に入ると、王の他に20歳そこそこの男が一緒にいた。きっとこれはベリッシモ家を継ぐ王子だろうな。

「ご足労いただきありがとうございます」
「構わない」
「こちらは第五王子のステファノ。この度ベリッシモ家を継ぐのに一番適任と思われる者でございます」
「そうか」
「昨日、提案いただいた内容で進めさせていただきたく思います。
　旧ベリッシモ領もベリッシモ家に返還し、そのままこの者が継ぐことにしたいのですが、色々と領地発展のために尽くされたと聞いている。
　できればどのようなことをどこまで進められたのかご教示いただきたい」

「分かりました。
　メレディス様、僕は引き継ぎのためにもう少しだけこの国に残ることにします。一緒に帰れなくてごめんなさい。終わったらすぐに帰るので待っていて下さい」
「ふぅ、仕方ないな。うちの執事を1人置いていこう。護衛はあの頼んでいる者たちでいいか」

　やはりそうなったか。私としては進捗を伝えてそのまま丸投げしてレスターを連れて帰りたいところだが、自分の家の存続ができることになったんだから、心配にもなるだろうし責任感が強いレスターがこう言うことは何となく想像できた。
　私が提案したことだしな。
　レスターの母の墓参りをしたら、私は大人しく一人で国に帰ろう。
　うちの陛下には迎えに行ったのに一人で帰ってきたことを揶揄われるかもしれんが、レスターのためなんだから仕方ない。
　私も国の中枢を担う者なんだ。理解はしている。

　理解はしているが、やはり離れるのは寂しいんだ。




　その後、レスターはレスターの養子になるステファノと話をしており、私は仕方なく王と話すことになった。


「昨日ベリッシモ伯爵に不敬を働いた者ですが、処刑となるとベリッシモ伯爵が気にされるかと思い、犯罪奴隷として炭鉱送りにすることにいたしました」
「そうか。いいのではないか？」

　私がそう言うと、王は明らかにホッとした表情をした。
　国を荒らしたくはないと、明言はしていないが、そいつの対応によっては兵を挙げると言っているようなものだったからな。

「ステファノは、王位継承権を随分前に放棄しておりまして、他の兄弟とは違い、争い事を好まない真面目で温厚な性格なんです。まだ未熟ではありますが、ベリッシモ家を任せられると思っております」
「そうか。私は人選には口出しをする気はない。レスターが苦労しないといいんだが」

　レスターは歳の近いステファノとは仲良くやっていけそうな感じだった。
　王家預かりとなっていた旧ベリッシモ領は、すぐにベリッシモ家へ返還の手続きが行われ、爵位も侯爵へ上げられることになった。
　王子が後を継ぐことも陞爵の理由になっているんだろう。
　真面目で温厚か。レスターがいいならまぁいいか。


　明日はレスターの母の墓参りをし、私は明後日には帰路につく。
　そして、明々後日からレスターはこのステファノと共にベリッシモ領に入り、領地の現状や、手がけた事業の進捗を教え……
　まさかとは思うが、このステファノという男に領地経営を1から教えるんじゃないよな？
　レスターだって領地経営などしたことがないんだ。レスターなら父や兄が残した経営実績の資料から全てを把握してやり退けてしまうんだろうが、この男にそれができるのか？

　数日だと見積もっていたが、もしかしたら数週間、要領が悪ければ月単位で離れ離れになるのではないか？
　私は、そんなに離れているなど耐えられない。
　しかし、他国にそう頻繁に来ることもできない。