51 / 62
51.幸せな時間
しおりを挟む結婚式まであと三ヶ月。
仕事は覚えることがたくさんあるけど楽しい。たまにステファノから届く手紙でも、領地経営はセバスのサポートもあって上手くいっているらしい。
相変わらずメレディス様は僕に優しいし、仲良しだし幸せ。
「レスター、おいで」
「はい」
僕が庭園のガゼボのベンチに座るメレディス様の膝の上に向き合って座ると、メレディス様は微笑んでギュッと抱きしめてくれる。
「レスターの髪、少しカールしていて美しいな」
「僕はメレディス様みたいにサラサラの真っ直ぐな髪に憧れます」
「そうか。じゃあお互い無い物ねだりなんだな」
「ふふふ、そうかも」
僕にとってはメレディス様の全てが憧れ。
綺麗な銀糸のような髪ももちろん憧れだし、そのサファイアみたいに吸い込まれそうな綺麗な青い瞳も憧れ。
僕に触れる長い指も柔らかい唇も好き。
僕はベンチの横に手を伸ばしてジャムがサンドされたクッキーを1枚掴んだ。
「メレディス様、あーんして下さい」
「ん? レスターが食べさせてくれるのかい?」
「はい。嫌ですか?」
「嫌なわけないだろう? 嬉しいよ」
そう言ってメレディス様はあーんと口を開けてくれたから、僕はメレディス様の口にクッキーを半分くらい入れた。
サクッと音を立ててメレディス様がクッキーを齧ると、サンドされていたジャムが押し出されて僕の手にべっとり付いてしまった。だから僕は慌ててメレディス様が半分齧ったクッキーの残りを口に入れて、はしたないかもしれないけどジャムのついた自分の指を舐めようとしたんだ。
だけどその手はメレディス様に奪われてメレディス様の口に入った。
「メレディス様、それはクッキーじゃないから食べられませんよ」
「知ってるよ。甘くて可愛いレスターの指」
メレディス様はジャムを舐め取って、もうジャムは無くなってるのに、チュッ、チュッって音を立ててキスしたり舐めたりしてる。擽ったいけど気持ちよくて、そんなことされたら少し変な気持ちになってしまう。
「ふふふ、レスター、美味しかったよ」
舐めていた僕の指を解放してくれたメレディス様は悪戯が成功した子どもみたいに笑うから、絶対わざと僕の反応を見て楽しんでたんだと思った。
「僕を揶揄ったのですか?」
「うーん、揶揄ったのとは少し違うかな。甘くて美味しかったのは本当。レスターが可愛くてたまらなくて、いつでも欲しくてたまらなくて、レスターが愛しい」
「僕も、いつでもメレディス様のことが愛しいです」
メレディス様が甘い。きっとジャムサンドクッキーより甘いよ。
「結婚したらお揃いのバングルを着けたいんだが嫌か?」
「お揃い? 嬉しいです。お揃いって初めてですね」
「そうだな。サファイアとエメラルドを両方あしらったものにしようと思うんだがどうだろう?」
「僕の目とメレディス様の目の色ですか?」
「そうだよ」
「素敵だと思います」
お互いの目の色の小物を身に着けるのはよくあることだけど、両方ってのは思い付かなかった。
しかもお揃いなんだ。嬉しい。着けるの楽しみだな。
「レスター、大好きだよ」
「僕も、メレディス様が大好きです」
メレディス様はいつも僕に好きだと言って微笑んでくれる。抱きしめてキスをしてくれる。
僕はメレディス様だけを愛する。きっとずっとこれからも変わらずメレディス様だけを愛する。
メレディス様は、いつか側室とか持つんだろうか?
自分の血を分けた世継ぎを残したいだろうか?
「どうした?」
「メレディス様は、結婚相手が僕でいいんですか?」
「そんなことを聞いてどうしたんだ? 私はレスターがいいんだ。他の誰でもなくレスターがいい」
「あの……側室とか、世継ぎとか……」
「側室は要らない。世継ぎは親戚から養子を取ればいい。宰相を継げるような優秀な者が見つかれば親戚でなくてもいいが。
レスターはそんなことを心配していたのか? 可愛いな。私はレスターだけだ」
「そっか。僕もメレディス様だけです」
メレディス様は僕をギュッと抱きしめて、髪を撫でてくれた。
「心配するな。私はレスターだけのものだ。レスターも私だけのものでいてほしい」
「はい。もちろんです」
またメレディス様は僕の服の中に手を滑り込ませて背中を直に撫でている。
ゾクゾクして、その優しい手の動きが気持ちよくて力が抜けて、はぁーっと吐息が漏れてしまう。
さっきメレディス様が僕の指を官能的に舐めたりするから、余計気持ちよくて変な気分になってきた。
「レスターは可愛いな」
「メレディス様、好き」
「部屋に戻るか?」
「うん。キス、したい」
「いいよ。部屋に戻ったらたくさんしよう」
メレディス様はそのまま僕を抱っこして部屋まで歩いていった。
「みんなに見られて恥ずかしい……。僕もう大人なのに」
「大丈夫だ。家の者しか見てない」
「うん」
部屋に入ると、メレディス様はたくさんキスしてくれた。
「メレディス様、キスだけじゃ……足りないです」
「私も足りない。夜まで待てるか?」
「……待てない、です」
「ふふふ、レスターは素直で本当に可愛いな。私も待てないと思っていたところだ」
まだ外は明るいのに、こんな昼間からいいのかな? と思いながら僕はメレディス様と愛し合った。
僕は幸せすぎて、このまま溶けてしまうかもしれない。
143
あなたにおすすめの小説
転生先のぽっちゃり王子はただいま謹慎中につき各位ご配慮ねがいます!
梅村香子
BL
バカ王子の名をほしいままにしていたロベルティア王国のぽっちゃり王子テオドール。
あまりのわがままぶりに父王にとうとう激怒され、城の裏手にある館で謹慎していたある日。
突然、全く違う世界の日本人の記憶が自身の中に現れてしまった。
何が何だか分からないけど、どうやらそれは前世の自分の記憶のようで……?
人格も二人分が混ざり合い、不思議な現象に戸惑うも、一つだけ確かなことがある。
僕って最低最悪な王子じゃん!?
このままだと、破滅的未来しか残ってないし!
心を入れ替えてダイエットに勉強にと忙しい王子に、何やらきな臭い陰謀の影が見えはじめ――!?
これはもう、謹慎前にののしりまくって拒絶した専属護衛騎士に守ってもらうしかないじゃない!?
前世の記憶がよみがえった横暴王子の危機一髪な人生やりなおしストーリー!
騎士×王子の王道カップリングでお送りします。
第9回BL小説大賞の奨励賞をいただきました。
本当にありがとうございます!!
※本作に20歳未満の飲酒シーンが含まれます。作中の世界では飲酒可能年齢であるという設定で描写しております。実際の20歳未満による飲酒を推奨・容認する意図は全くありません。
【本編完結】最強S級冒険者が俺にだけ過保護すぎる!
天宮叶
BL
前世の世界で亡くなった主人公は、突然知らない世界で知らない人物、クリスの身体へと転生してしまう。クリスが眠っていた屋敷の主であるダリウスに、思い切って事情を説明した主人公。しかし事情を聞いたダリウスは突然「結婚しようか」と主人公に求婚してくる。
なんとかその求婚を断り、ダリウスと共に屋敷の外へと出た主人公は、自分が転生した世界が魔法やモンスターの存在するファンタジー世界だと気がつき冒険者を目指すことにするが____
過保護すぎる大型犬系最強S級冒険者攻めに振り回されていると思いきや、自由奔放で強気な性格を発揮して無自覚に振り回し返す元気な受けのドタバタオメガバースラブコメディの予定
要所要所シリアスが入ります。
冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる
尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる
🌟2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟
ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。
――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。
お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。
目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。
ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。
執着攻め×不憫受け
美形公爵×病弱王子
不憫展開からの溺愛ハピエン物語。
◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。
四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。
なお、※表示のある回はR18描写を含みます。
🌟第10回BL小説大賞にて奨励賞を頂戴しました。応援ありがとうございました。
🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。
転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜
隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。
目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。
同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります!
俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ!
重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ)
注意:
残酷な描写あり
表紙は力不足な自作イラスト
誤字脱字が多いです!
お気に入り・感想ありがとうございます。
皆さんありがとうございました!
BLランキング1位(2021/8/1 20:02)
HOTランキング15位(2021/8/1 20:02)
他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00)
ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。
いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!
【完結】伯爵家当主になりますので、お飾りの婚約者の僕は早く捨てて下さいね?
MEIKO
BL
【完結】伯爵家次男のマリンは、公爵家嫡男のミシェルの婚約者として一緒に過ごしているが実際はお飾りの存在だ。そんなマリンは池に落ちたショックで前世は日本人の男子で今この世界が小説の中なんだと気付いた。マズい!このままだとミシェルから婚約破棄されて路頭に迷う未来しか見えない!
僕はそこから前世の特技を活かしてお金を貯め、ミシェルに愛する人が現れるその日に備えだす。2年後、万全の備えと新たな朗報を得た僕は、もう婚約破棄してもらっていいんですけど?ってミシェルに告げる。なのに対象外のはずの僕に未練たらたらなのどうして?
※R対象話には『*』マーク付けます。
婚約破棄された俺の農業異世界生活
深山恐竜
BL
「もう一度婚約してくれ」
冤罪で婚約破棄された俺の中身は、異世界転生した農学専攻の大学生!
庶民になって好きなだけ農業に勤しんでいたら、いつの間にか「畑の賢者」と呼ばれていた。
そこに皇子からの迎えが来て復縁を求められる。
皇子の魔の手から逃げ回ってると、幼馴染みの神官が‥。
(ムーンライトノベルズ様、fujossy様にも掲載中)
(第四回fujossy小説大賞エントリー中)
夫婦喧嘩したのでダンジョンで生活してみたら思いの外快適だった
ミクリ21 (新)
BL
夫婦喧嘩したアデルは脱走した。
そして、連れ戻されたくないからダンジョン暮らしすることに決めた。
旦那ラグナーと義両親はアデルを探すが当然みつからず、実はアデルが神子という神託があってラグナー達はざまぁされることになる。
アデルはダンジョンで、たまに会う黒いローブ姿の男と惹かれ合う。
5回も婚約破棄されたんで、もう関わりたくありません
くるむ
BL
進化により男も子を産め、同性婚が当たり前となった世界で、
ノエル・モンゴメリー侯爵令息はルーク・クラーク公爵令息と婚約するが、本命の伯爵令嬢を諦められないからと破棄をされてしまう。その後辛い日々を送り若くして死んでしまうが、なぜかいつも婚約破棄をされる朝に巻き戻ってしまう。しかも5回も。
だが6回目に巻き戻った時、婚約破棄当時ではなく、ルークと婚約する前まで巻き戻っていた。
今度こそ、自分が不幸になる切っ掛けとなるルークに近づかないようにと決意するノエルだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる