【完結】家も家族もなくし婚約者にも捨てられた僕だけど、隣国の宰相を助けたら囲われて大切にされています。

cyan

文字の大きさ
60 / 62

60.その後の僕ら

しおりを挟む
 
 僕たちは各所に手紙を送って、挨拶回りをした。みんなおかえりって言ってくれて、誰も僕を怒ったりしなかった。たくさん迷惑かけたと思うのになんで?
 メレディス様が手を回したのかな?

 オルロー王家にも謝罪の手紙を送って、ステファノにも謝罪の手紙を送った。
 ステファノには、せっかく領地まで来てくれたのに見つけられなくてごめんと謝られた。
 そんなこと全然気にしなくていいのに。
 結婚式には招待すると送ると、絶対行くとすぐに返事が来た。


 ベックとジェフにも会えた。

「マジでどこにいたの? 全然手掛かりもないし、最悪もういないんじゃないかと思ってたよ」
「2人には迷惑をかけたね。本当にごめんなさい。ベリッシモ領に寄った後、帝国に行ってたの」
「いや、帝国にいたなら仕方ない。俺らもさすがに帝国には入ってないからな。冒険は楽しかったか? 次冒険する時は俺らも呼んでくれよ」
「冒険……もうしないと思うけど、また会えたらいいね。結婚式には呼ぶよ」
「近くにいたら参列してやるよ」

 そう言ってたけど、ちゃんと来てくれそうな気がする。



 影と呼ばれる人にも会った。

「レスター兄貴! 弟子にしてくれ!」
「僕があなたに教えられることなんて何もありませんよ」
「俺が見つけられなかったんだ。隠密の才能があるんだろう。どうかそれを伝授してほしい」
「そんなの無いですから」

 ただ歩いて色んなところを回ったり、木の上で寝ただけなのだと説明したのに、なかなか納得してくれなかった。

「レスター兄貴! 頼む!」
「うわっ」

 まさに神出鬼没。かなりしつこく付き纏われて、色んなところに急に現れたり心臓に悪いし、僕はメレディス様に助けを求めた。

「メレディス様、僕は本当にただ歩いて移動しただけで、宿に泊まらず木の上に寝たのもお金が無かったからだし、特別なことはしてないと思うんです」
「あれを提供したらどうだ?」
「あれ?」
「回復の魔法陣を改造して認識されにくくしてたと言っていただろう?」
「あ、そうか。それいいかもしれない」

 メレディス様に言われたように、回復を改造して人に認識されにくくする魔法陣を渡したら、凄く嬉しそうな顔をしてやっと引き下がってくれた。

「レスター兄貴! やはり兄貴は天才だな!」
「う、うん……」

 引き下がってはくれたけど、兄貴って呼ぶのはやめてくれそうにない。
 僕の方がずっと年下なんだけどな。




「はぁ、まだまだ長いな。今すぐ結婚したいのに。手続きだけでも……」
「いいですよ。結婚しましょう」
「いいのか?」
「はい」

 謝罪とあいさつが終わると、すぐに僕たちは結婚した。
 結婚式は教会の予約が取れずに半年後になったけど、結婚の手続きだけ先にすることにした。
 別に結婚式なんてしなくてもいいと言ったけど、メレディス様が結婚式で僕を着飾って見せびらかしたいとか言って、結婚式は絶対するのだと力説されると僕は頷くことしかできなかった。



 メレディス様は「レスターを不安にさせたソファーなど要らない」とソファーを捨てようとしたけど、僕にとってはたくさんお話をして、抱き合った思い出のソファーだし、メレディス様とそのおばあちゃんの思い出も残したいと言って、ラブレターもそのままにソファーは引き続き使うことになった。

 その元凶となった本も、僕がもらって兄上の部屋から持ち出した僕が好きだった冒険の物語の隣に置いてある。


「メレディス様、僕たちも手紙を書きませんか?」
「ん? もう謝罪の挨拶は終わったんじゃないか? 誰に書くんだ?」
「このソファーの裏に、秘密の手紙を書きたいなって。僕はメレディス様宛に書きます」
「じゃあ私はレスターに宛てた手紙を書こう」

 結婚した記念にソファーの裏に、僕はメレディス様に宛てた手紙を書いた。メレディス様も僕に宛てた手紙を書いてくれた。

「毎年結婚記念日には、2人でこの手紙を読もう」
「はい。約束です」

 2人で指を絡めたその腕には、お揃いのバングルが嵌められている。




 (終)








 おまけ

 >>>ステファノ視点

「セバス、残念だが私の入る隙はないらしい」
「そのようですね。ステファノ様にもきっと素敵な方が見付かりますよ」

 レスターはやはりあの男がいいのか。
 領地に寄ったのに声も掛けてもらえなかった私は何なんだ……

 それにしても綺麗だな。結婚式であの男に向かって微笑む美しいレスターを眺めながらため息を吐いた。

 レスターから引き継いだこの領地は、現状維持でも十分なんだが、それでは私の影が薄れてしまう。
 どうにかレスターに気にしてもらえるよう、私ももっと頑張らなければならないな。
 いいんだ。伴侶として家族になれなかったとしても、私とレスターは親子なのだから。


 
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

転生先のぽっちゃり王子はただいま謹慎中につき各位ご配慮ねがいます!

梅村香子
BL
バカ王子の名をほしいままにしていたロベルティア王国のぽっちゃり王子テオドール。 あまりのわがままぶりに父王にとうとう激怒され、城の裏手にある館で謹慎していたある日。 突然、全く違う世界の日本人の記憶が自身の中に現れてしまった。 何が何だか分からないけど、どうやらそれは前世の自分の記憶のようで……? 人格も二人分が混ざり合い、不思議な現象に戸惑うも、一つだけ確かなことがある。 僕って最低最悪な王子じゃん!? このままだと、破滅的未来しか残ってないし! 心を入れ替えてダイエットに勉強にと忙しい王子に、何やらきな臭い陰謀の影が見えはじめ――!? これはもう、謹慎前にののしりまくって拒絶した専属護衛騎士に守ってもらうしかないじゃない!? 前世の記憶がよみがえった横暴王子の危機一髪な人生やりなおしストーリー! 騎士×王子の王道カップリングでお送りします。 第9回BL小説大賞の奨励賞をいただきました。 本当にありがとうございます!! ※本作に20歳未満の飲酒シーンが含まれます。作中の世界では飲酒可能年齢であるという設定で描写しております。実際の20歳未満による飲酒を推奨・容認する意図は全くありません。

【本編完結】最強S級冒険者が俺にだけ過保護すぎる!

天宮叶
BL
前世の世界で亡くなった主人公は、突然知らない世界で知らない人物、クリスの身体へと転生してしまう。クリスが眠っていた屋敷の主であるダリウスに、思い切って事情を説明した主人公。しかし事情を聞いたダリウスは突然「結婚しようか」と主人公に求婚してくる。 なんとかその求婚を断り、ダリウスと共に屋敷の外へと出た主人公は、自分が転生した世界が魔法やモンスターの存在するファンタジー世界だと気がつき冒険者を目指すことにするが____ 過保護すぎる大型犬系最強S級冒険者攻めに振り回されていると思いきや、自由奔放で強気な性格を発揮して無自覚に振り回し返す元気な受けのドタバタオメガバースラブコメディの予定 要所要所シリアスが入ります。

冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる

尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる 🌟2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟 ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。 ――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。 お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。 目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。 ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。 執着攻め×不憫受け 美形公爵×病弱王子 不憫展開からの溺愛ハピエン物語。 ◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。 四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。 なお、※表示のある回はR18描写を含みます。 🌟第10回BL小説大賞にて奨励賞を頂戴しました。応援ありがとうございました。 🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。

転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜

隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。 目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。 同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります! 俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ! 重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ) 注意: 残酷な描写あり 表紙は力不足な自作イラスト 誤字脱字が多いです! お気に入り・感想ありがとうございます。 皆さんありがとうございました! BLランキング1位(2021/8/1 20:02) HOTランキング15位(2021/8/1 20:02) 他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00) ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。 いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!

【完結】伯爵家当主になりますので、お飾りの婚約者の僕は早く捨てて下さいね?

MEIKO
BL
 【完結】伯爵家次男のマリンは、公爵家嫡男のミシェルの婚約者として一緒に過ごしているが実際はお飾りの存在だ。そんなマリンは池に落ちたショックで前世は日本人の男子で今この世界が小説の中なんだと気付いた。マズい!このままだとミシェルから婚約破棄されて路頭に迷う未来しか見えない!  僕はそこから前世の特技を活かしてお金を貯め、ミシェルに愛する人が現れるその日に備えだす。2年後、万全の備えと新たな朗報を得た僕は、もう婚約破棄してもらっていいんですけど?ってミシェルに告げる。なのに対象外のはずの僕に未練たらたらなのどうして? ※R対象話には『*』マーク付けます。

婚約破棄された俺の農業異世界生活

深山恐竜
BL
「もう一度婚約してくれ」 冤罪で婚約破棄された俺の中身は、異世界転生した農学専攻の大学生! 庶民になって好きなだけ農業に勤しんでいたら、いつの間にか「畑の賢者」と呼ばれていた。 そこに皇子からの迎えが来て復縁を求められる。 皇子の魔の手から逃げ回ってると、幼馴染みの神官が‥。 (ムーンライトノベルズ様、fujossy様にも掲載中) (第四回fujossy小説大賞エントリー中)

夫婦喧嘩したのでダンジョンで生活してみたら思いの外快適だった

ミクリ21 (新)
BL
夫婦喧嘩したアデルは脱走した。 そして、連れ戻されたくないからダンジョン暮らしすることに決めた。 旦那ラグナーと義両親はアデルを探すが当然みつからず、実はアデルが神子という神託があってラグナー達はざまぁされることになる。 アデルはダンジョンで、たまに会う黒いローブ姿の男と惹かれ合う。

5回も婚約破棄されたんで、もう関わりたくありません

くるむ
BL
進化により男も子を産め、同性婚が当たり前となった世界で、 ノエル・モンゴメリー侯爵令息はルーク・クラーク公爵令息と婚約するが、本命の伯爵令嬢を諦められないからと破棄をされてしまう。その後辛い日々を送り若くして死んでしまうが、なぜかいつも婚約破棄をされる朝に巻き戻ってしまう。しかも5回も。 だが6回目に巻き戻った時、婚約破棄当時ではなく、ルークと婚約する前まで巻き戻っていた。 今度こそ、自分が不幸になる切っ掛けとなるルークに近づかないようにと決意するノエルだが……。

処理中です...