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第5話 レベルアップへの道筋
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ギフトレベル。
その可能性を知ってから、アルトの訓練には明確な目標が生まれた。
しかし、問題はどうすればレベルが上がるのか、だ。
神父は「経験を積み、魂を磨くこと」と言っていたが、それはあまりにも漠然としている。
「やっぱり、受けたダメージの量が関係してるんじゃないかな…」
アルトは一つの仮説を立てた。
RPGゲームのように、敵から攻撃を受けることで経験値が蓄積され、一定量に達するとレベルアップするのではないか。
もしそうなら、やるべきことは一つ。
できるだけ多くのダメージを、安全に受けることだ。
アルトは、腕に巻く革の厚さや枚数を調整し、衝撃を和らげつつも、ある程度の痛みは体に伝わるように工夫した。
そして、連日早朝の森へ通い、ホーンラビットを見つけては、あえて複数回の突進を受ける訓練を繰り返した。
ドンッ!ゴッ!
鈍い衝撃が、革を通して腕に響く。
痛みに顔をしかめながらも、アルトは歯を食いしばって耐えた。
「これで…これで経験値が溜まってるはずなんだ…!」
心の中で自分に言い聞かせる。
反射ダメージでホーンラビットが怯むと、少し距離を取り、また次の突進を受ける。
単調で、ひたすら痛みを伴う訓練。
数日間続けてみたが、ギフトの反射率が上がったり、体が劇的に変化したりするような、明確なレベルアップの実感は得られなかった。
「うーん、ダメージ量だけじゃないのかな…」
アルトは次の仮説を考えた。
「もしかしたら、反射ダメージで敵を倒すことが条件なのかも?」
倒した敵の経験値が、ギフトにも入る、というような仕組みかもしれない。
そう考えたアルトは、ターゲットをより弱い魔物に変えることにした。
スライムや、森の浅い場所に時折現れる小型のゴブリン。
まずはスライムだ。
ぽよん、ぽよん、と繰り返される、ほとんど無害な体当たり。
アルトはひたすらそれを受け続ける。
反射ダメージは、やはり微々たるものだ。
スライムは、何十分経ってもぴんぴんしている。
「だめだ、これじゃ日が暮れちゃう…」
次に試したのは、棍棒を持った小型のゴブリンだった。
身長はアルトの腰ほどしかないが、棍棒による打撃はスライムの比ではなかった。
ガンッ!
革を巻いた腕で受け止めても、骨に響くような痛みが走る。
ゴブリンは、キーキーと奇声を発しながら、何度も殴りかかってきた。
反射ダメージは、スライム相手よりは明らかに効果があるようで、ゴブリンは時折「キャイン!」と鳴いて腕を押さえるような仕草を見せる。
しかし、それでも致命傷には程遠い。
アルトがゴブリンを反射だけで倒すには、一体何発殴られなければならないのか、想像もつかなかった。
「これも…現実的じゃないな…」
結局、ゴブリンはアルトが根負けして逃げ出すまで、元気に棍棒を振り回していた。
レベルアップへの道は、思った以上に険しいのかもしれない。
失意を感じながらも、アルトは訓練を諦めなかった。
何か、別の要因があるはずだ。
あるいは、単純に経験の総量がまだ足りないだけかもしれない。
アルトは訓練場所を少し変え、森のもう少し奥、これまで足を踏み入れたことのないエリアに入ってみることにした。
より強い魔物と遭遇すれば、何か分かるかもしれない。
もちろん、危険も増すが、慎重に行動すれば大丈夫だろう、と自分に言い聞かせた。
鬱蒼とした木々を抜け、少し開けた場所に出た時だった。
低い唸り声と共に、茂みから鋭い目つきの獣が飛び出してきた。
灰色と黒の混じった毛並み、体長は1メートルほど。
狼によく似ているが、明らかに普通の狼ではない。
牙が長く、爪も鋭い。
森に棲む魔物、「フォレストウルフ」だ。
しかも、まだ若い個体なのか、群れではなく単独でいるようだった。
「しまった…!」
アルトは咄嗟に身構えたが、相手の方が早かった。
フォレストウルフは、低い姿勢から一気にアルトに飛びかかってきた。
ガキンッ!
革を巻いた腕でなんとか牙を受け止めるが、その衝撃とパワーはホーンラビットやゴブリンとは比較にならない。
さらに、素早い動きでアルトの側面や背後に回り込もうとし、鋭い爪で切りつけてくる。
ザシュッ!
避けきれず、肩口の服が裂け、浅い傷ができる。
血が滲み、鋭い痛みが走った。
「くっ…!」
防御に徹するしかない。
アルトは必死にフォレストウルフの攻撃を受け流し、あるいは革を巻いた腕で受け止める。
攻撃を受けるたびに、反射ダメージが発生しているはずだ。
しかし、ウルフは怯む様子を見せない。
それどころか、アルトが防戦一方なのを見て、さらに勢いを増してくる。
「このままじゃ、やられる…!」
恐怖がアルトの心を支配しそうになる。
だが、その時、ふと気づいた。
攻撃を受けた瞬間の、あの「硬くなる感覚」。
フォレストウルフのような強い攻撃を受けると、その感覚がより強く、そして長く持続するような気がするのだ。
気のせいかもしれない。
でも、それに賭けるしかない!
アルトは、ウルフが再び飛びかかってくるタイミングに合わせ、意識を集中し、あえて攻撃を体の中心に近い部分で受け止めた。
ゴッ!という鈍い衝撃と共に、胸のあたりがわずかに光ったような気がした。
そして、今までで最も強い反射の感覚が、腕を通して伝わってきた。
「ギャウンッ!?」
フォレストウルフは、まるで透明な壁にぶつかったかのように大きく弾き飛ばされ、地面を転がった。
そして、混乱したようにアルトを睨みつけた後、警戒しながら森の奥へと逃げていった。
「はぁ…はぁ…行った…」
アルトはその場にへたり込み、荒い息をついた。
肩の傷がズキズキと痛む。
全身に冷や汗と泥が混じり、疲労感はピークに達していた。
しかし、心の中には、恐怖と安堵、そして確かな達成感があった。
「強い相手には…やっぱり、反射も強く効くんだ…!」
そして、あの硬くなる感覚の持続。
あれは、気のせいではないかもしれない。
もしかしたら、これがギフトの成長の兆し…?
反射率自体が上がったわけではないだろう。
それでも、わずかな変化を感じ取れたことは、大きな希望だった。
フラフラになりながらも、アルトは村へと戻った。
厳しい訓練と、連日の畑仕事のおかげか、以前よりも自分の体が引き締まり、体力がついてきたことを実感していた。
こうした基礎的な力の向上が、間接的にギフトの成長にも繋がっているのかもしれない。
村の入り口近く、冒険者ギルドの前を通りかかると、人だかりができていた。
見ると、中堅クラスと思われる冒険者パーティが、傷ついた仲間を抱えながらギルドに入っていくところだった。
鎧はへこみ、ローブは焼け焦げている。
どうやら、少し背伸びした依頼で、手痛い反撃を受けたようだ。
「オークの集落は、思ったより手強かったな…」
「まさかシャーマンまでいるとは…危うく全滅するところだった」
聞こえてくる会話から、彼らの苦戦ぶりがうかがえた。
アルトは、その光景をただ黙って見つめていた。
今の自分では、あのパーティの足元にも及ばない。
オークはおろか、フォレストウルフ一匹にすら、命がけで戦わなければならなかった。
「僕がもっと強ければ…」
誰かを助けたい。
困っている人を守りたい。
冒険者への憧れの根底には、そんな思いがあったはずだ。
ギフトが弱いからと、その気持ちまで諦めてはいけない。
「いつか、僕も…」
アルトは、ギルドから出てくる負傷した冒険者に、そっと治癒魔法をかけているリナの姿を遠くに見つけた。
彼女もまた、自分のギフトで誰かの役に立とうと努力している。
自分も、自分のやり方で強くなるしかない。
ギフトレベルを上げる明確な方法は、まだ分からない。
しかし、地道な訓練と、強い敵との経験が鍵になることは確かだ。
そして、基礎体力と、諦めない精神力。
それら全てが、きっと力になる。
アルトは、肩の痛みに顔をしかめながらも、決意を込めて拳を握りしめた。
明日もまた、森へ行こう。
もっと強くなるために。
いつか、誰かを守れる自分になるために。
その可能性を知ってから、アルトの訓練には明確な目標が生まれた。
しかし、問題はどうすればレベルが上がるのか、だ。
神父は「経験を積み、魂を磨くこと」と言っていたが、それはあまりにも漠然としている。
「やっぱり、受けたダメージの量が関係してるんじゃないかな…」
アルトは一つの仮説を立てた。
RPGゲームのように、敵から攻撃を受けることで経験値が蓄積され、一定量に達するとレベルアップするのではないか。
もしそうなら、やるべきことは一つ。
できるだけ多くのダメージを、安全に受けることだ。
アルトは、腕に巻く革の厚さや枚数を調整し、衝撃を和らげつつも、ある程度の痛みは体に伝わるように工夫した。
そして、連日早朝の森へ通い、ホーンラビットを見つけては、あえて複数回の突進を受ける訓練を繰り返した。
ドンッ!ゴッ!
鈍い衝撃が、革を通して腕に響く。
痛みに顔をしかめながらも、アルトは歯を食いしばって耐えた。
「これで…これで経験値が溜まってるはずなんだ…!」
心の中で自分に言い聞かせる。
反射ダメージでホーンラビットが怯むと、少し距離を取り、また次の突進を受ける。
単調で、ひたすら痛みを伴う訓練。
数日間続けてみたが、ギフトの反射率が上がったり、体が劇的に変化したりするような、明確なレベルアップの実感は得られなかった。
「うーん、ダメージ量だけじゃないのかな…」
アルトは次の仮説を考えた。
「もしかしたら、反射ダメージで敵を倒すことが条件なのかも?」
倒した敵の経験値が、ギフトにも入る、というような仕組みかもしれない。
そう考えたアルトは、ターゲットをより弱い魔物に変えることにした。
スライムや、森の浅い場所に時折現れる小型のゴブリン。
まずはスライムだ。
ぽよん、ぽよん、と繰り返される、ほとんど無害な体当たり。
アルトはひたすらそれを受け続ける。
反射ダメージは、やはり微々たるものだ。
スライムは、何十分経ってもぴんぴんしている。
「だめだ、これじゃ日が暮れちゃう…」
次に試したのは、棍棒を持った小型のゴブリンだった。
身長はアルトの腰ほどしかないが、棍棒による打撃はスライムの比ではなかった。
ガンッ!
革を巻いた腕で受け止めても、骨に響くような痛みが走る。
ゴブリンは、キーキーと奇声を発しながら、何度も殴りかかってきた。
反射ダメージは、スライム相手よりは明らかに効果があるようで、ゴブリンは時折「キャイン!」と鳴いて腕を押さえるような仕草を見せる。
しかし、それでも致命傷には程遠い。
アルトがゴブリンを反射だけで倒すには、一体何発殴られなければならないのか、想像もつかなかった。
「これも…現実的じゃないな…」
結局、ゴブリンはアルトが根負けして逃げ出すまで、元気に棍棒を振り回していた。
レベルアップへの道は、思った以上に険しいのかもしれない。
失意を感じながらも、アルトは訓練を諦めなかった。
何か、別の要因があるはずだ。
あるいは、単純に経験の総量がまだ足りないだけかもしれない。
アルトは訓練場所を少し変え、森のもう少し奥、これまで足を踏み入れたことのないエリアに入ってみることにした。
より強い魔物と遭遇すれば、何か分かるかもしれない。
もちろん、危険も増すが、慎重に行動すれば大丈夫だろう、と自分に言い聞かせた。
鬱蒼とした木々を抜け、少し開けた場所に出た時だった。
低い唸り声と共に、茂みから鋭い目つきの獣が飛び出してきた。
灰色と黒の混じった毛並み、体長は1メートルほど。
狼によく似ているが、明らかに普通の狼ではない。
牙が長く、爪も鋭い。
森に棲む魔物、「フォレストウルフ」だ。
しかも、まだ若い個体なのか、群れではなく単独でいるようだった。
「しまった…!」
アルトは咄嗟に身構えたが、相手の方が早かった。
フォレストウルフは、低い姿勢から一気にアルトに飛びかかってきた。
ガキンッ!
革を巻いた腕でなんとか牙を受け止めるが、その衝撃とパワーはホーンラビットやゴブリンとは比較にならない。
さらに、素早い動きでアルトの側面や背後に回り込もうとし、鋭い爪で切りつけてくる。
ザシュッ!
避けきれず、肩口の服が裂け、浅い傷ができる。
血が滲み、鋭い痛みが走った。
「くっ…!」
防御に徹するしかない。
アルトは必死にフォレストウルフの攻撃を受け流し、あるいは革を巻いた腕で受け止める。
攻撃を受けるたびに、反射ダメージが発生しているはずだ。
しかし、ウルフは怯む様子を見せない。
それどころか、アルトが防戦一方なのを見て、さらに勢いを増してくる。
「このままじゃ、やられる…!」
恐怖がアルトの心を支配しそうになる。
だが、その時、ふと気づいた。
攻撃を受けた瞬間の、あの「硬くなる感覚」。
フォレストウルフのような強い攻撃を受けると、その感覚がより強く、そして長く持続するような気がするのだ。
気のせいかもしれない。
でも、それに賭けるしかない!
アルトは、ウルフが再び飛びかかってくるタイミングに合わせ、意識を集中し、あえて攻撃を体の中心に近い部分で受け止めた。
ゴッ!という鈍い衝撃と共に、胸のあたりがわずかに光ったような気がした。
そして、今までで最も強い反射の感覚が、腕を通して伝わってきた。
「ギャウンッ!?」
フォレストウルフは、まるで透明な壁にぶつかったかのように大きく弾き飛ばされ、地面を転がった。
そして、混乱したようにアルトを睨みつけた後、警戒しながら森の奥へと逃げていった。
「はぁ…はぁ…行った…」
アルトはその場にへたり込み、荒い息をついた。
肩の傷がズキズキと痛む。
全身に冷や汗と泥が混じり、疲労感はピークに達していた。
しかし、心の中には、恐怖と安堵、そして確かな達成感があった。
「強い相手には…やっぱり、反射も強く効くんだ…!」
そして、あの硬くなる感覚の持続。
あれは、気のせいではないかもしれない。
もしかしたら、これがギフトの成長の兆し…?
反射率自体が上がったわけではないだろう。
それでも、わずかな変化を感じ取れたことは、大きな希望だった。
フラフラになりながらも、アルトは村へと戻った。
厳しい訓練と、連日の畑仕事のおかげか、以前よりも自分の体が引き締まり、体力がついてきたことを実感していた。
こうした基礎的な力の向上が、間接的にギフトの成長にも繋がっているのかもしれない。
村の入り口近く、冒険者ギルドの前を通りかかると、人だかりができていた。
見ると、中堅クラスと思われる冒険者パーティが、傷ついた仲間を抱えながらギルドに入っていくところだった。
鎧はへこみ、ローブは焼け焦げている。
どうやら、少し背伸びした依頼で、手痛い反撃を受けたようだ。
「オークの集落は、思ったより手強かったな…」
「まさかシャーマンまでいるとは…危うく全滅するところだった」
聞こえてくる会話から、彼らの苦戦ぶりがうかがえた。
アルトは、その光景をただ黙って見つめていた。
今の自分では、あのパーティの足元にも及ばない。
オークはおろか、フォレストウルフ一匹にすら、命がけで戦わなければならなかった。
「僕がもっと強ければ…」
誰かを助けたい。
困っている人を守りたい。
冒険者への憧れの根底には、そんな思いがあったはずだ。
ギフトが弱いからと、その気持ちまで諦めてはいけない。
「いつか、僕も…」
アルトは、ギルドから出てくる負傷した冒険者に、そっと治癒魔法をかけているリナの姿を遠くに見つけた。
彼女もまた、自分のギフトで誰かの役に立とうと努力している。
自分も、自分のやり方で強くなるしかない。
ギフトレベルを上げる明確な方法は、まだ分からない。
しかし、地道な訓練と、強い敵との経験が鍵になることは確かだ。
そして、基礎体力と、諦めない精神力。
それら全てが、きっと力になる。
アルトは、肩の痛みに顔をしかめながらも、決意を込めて拳を握りしめた。
明日もまた、森へ行こう。
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いつか、誰かを守れる自分になるために。
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