落ちこぼれギフト【ダメージ反射】は諦めない ~1割返しから始まる異世界冒険譚~

シマセイ

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第6話 成長への新たな道筋

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フォレストウルフとの遭遇は、アルトに恐怖と共に大きな気づきを与えていた。
ただ闇雲に攻撃を受け、ダメージを蓄積するだけでは、おそらくレベルは上がらない。
あのギリギリの攻防の中で感じた、ギフトの感覚の高まり。
あれこそが、成長の鍵なのではないか。

「ダメージの『量』じゃなくて、『質』なのかもしれない…」

アルトは自室のベッドの上で、腕に巻いた革を眺めながら考え込んでいた。
強い敵からの、避けられない一撃。
それを全身全霊で受け止め、反射した時。
あの時、確かにギフトの反応は違った。
そして、あの「硬くなる感覚」。
あれは一体何なのだろう。
単純に防御力が上がっているのか?
それとも、受けた衝撃を、反射する瞬間にだけ、別の力に変えて押し返しているのか?
謎は深まるばかりだ。

翌日、アルトはフォレストウルフに付けられた肩の傷の様子を見てもらうため、薬師の手伝いをしているリナの元を訪ねた。
幸い傷は浅く、リナが手際よく薬草を塗り替え、新しい包帯を巻いてくれた。

「ありがとう、リナ。助かるよ」

「ううん、これくらい。でも、アルト、本当に無茶しないでね。この前の傷だって、もう少し深かったら大変だったんだから」

リナは心配そうにアルトの顔を覗き込んだ。

「分かってるよ。でも、強くならないと…」

アルトは、自分の考えをリナに話してみた。
ギフトレベルを上げるには、ただダメージを受けるだけでなく、もっと質の高い経験、つまりギリギリの戦いが必要なのではないか、ということ。
そして、ギフトの感覚が、精神状態によって変わるような気がすること。

「質の高い経験…精神状態…」

リナはアルトの話を聞きながら、何か考え込むように顎に手を当てた。

「そういえばね、私の『治癒(小)』も、少し似ているかもしれない」

「え?」

「ただ魔法を使おうとするだけじゃなくて、相手の傷を『絶対に治す』って強く思ったり、すごく集中したりすると、いつもより回復が早かったり、痛みが和らいだりする気がするの。まだ、気のせいかもしれないけど…」

リナは少し恥ずかしそうに言った。

「そっか…リナも同じようなことを感じてるんだ。やっぱり、気持ちとか、集中力とかも関係してるのかも…」

リナの言葉は、アルトの仮説を裏付けるもののように思えた。
ギフトは、単なる物理的な能力ではないのかもしれない。
使う者の精神状態にも、大きく左右されるのではないか。

「ありがとう、リナ。すごく参考になったよ!」

アルトはリナに礼を言い、新たな決意を胸に薬師の家を後にした。
訓練の方向性を変えよう。
これからは、無闇に攻撃を受けるのではなく、相手の動きをよく見て、攻撃の種類やタイミングを見極める。
そして、受ける瞬間に、全神経を集中させる。
そうすることで、「質の高い経験」を得られるのではないか。

その日の午後、アルトはいつも通り畑仕事を手伝っていた。
以前はすぐに息を切らしていた作業も、最近は最後までやり遂げられるようになっていた。
厳しい訓練と規則正しい生活が、確実にアルトの基礎体力を向上させているのだ。
黙々と土を耕していると、隣で作業していた兄のヨハンが、ちらりとアルトの腕を見た。

「…おい、アルト」

「ん?なに、兄さん」

「お前…最近、夜遅くまで何やってるんだ?」

ヨハンは、ぶっきらぼうな口調で尋ねた。
その声には、いつものような嘲りや呆れとは違う、何か別の響きが含まれているような気がした。

「え?あ、いや、ちょっと…トレーニングみたいな…」

アルトは正直に答えるべきか迷い、言葉を濁した。
ヨハンは、ふん、と鼻を鳴らしたが、それ以上は追及してこなかった。
ただ、畑仕事を終えて家に戻る時、ぽつりと呟いた。

「…あまり、無茶はするなよ」

それは、アルトがヨハンから初めてかけられた、心配するような言葉だった。
兄なりに、アルトの変化に気づき、何かを感じているのかもしれない。
アルトは少し驚きながらも、胸の中に温かいものが広がるのを感じた。

夕暮れ時、アルトは新たな訓練法を試すために森へ向かった。
必要なのは、ギリギリの攻防を経験できる相手。
しかし、いきなりフォレストウルフに再挑戦するのは無謀だ。
まずは、以前苦戦した相手で試してみよう。
アルトは注意深く森を進み、数匹のホーンラビットの群れを見つけた。
以前なら、囲まれたら厄介だと感じただろう。
しかし、今のアルトは違った。

ホーンラビットたちが、四方から同時に突進してくる。
アルトは慌てなかった。
目を凝らし、それぞれの動き、速度、角度を見極める。
一体目の突進。
革を巻いた腕で受け止める直前、息を詰め、意識を集中させる。
ドンッ!
衝撃と共に、反射の感覚。
以前よりも、確実に相手にダメージが通じている手応えがあった。
ホーンラビットが怯んだ隙に、すぐさま次の突進に対応する。
二体目、三体目…。
アルトは、まるで踊るように、次々と繰り出される攻撃を受け流し、あるいは的確に受け止め、反射していく。
以前のように大きなダメージを受けることはない。
最小限の動きで、最大限の集中力を持って、ギフトを発動させる。
体が硬くなる感覚も、以前より制御しやすくなっている気がした。

やがて、リーダー格らしき一回り大きなホーンラビットが、アルトの反射ダメージを受けて大きく後退すると、群れ全体が警戒音を発し、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

「…はぁ…やった…!」

アルトは、息を弾ませながらも、確かな達成感に満たされていた。
以前なら、もっとボロボロになっていただろう。
ギフトそのものが劇的に強くなったわけではない。
しかし、ギフトの特性を理解し、使い方を工夫し、そして何より、集中力と精神力を鍛えたことで、明らかに戦闘能力は向上していた。

「少しだけど…前より、やれるようになってる!」

ギフトレベル。
それは、単純な数値の上下だけではないのかもしれない。
ギフトとの向き合い方、使い手の成長そのものが、レベルアップに繋がっていくのかもしれない。
アルトは、ようやくその道筋の入り口に立てたような気がした。

必要なのは、「質の高い経験」と「精神的な集中」。
そして、それを可能にするための基礎体力と、諦めない心。
次なる目標は、明確だ。

「もう一度、あのフォレストウルフと…」

今度は、不意打ちではなく、こちらから仕掛け、渡り合ってみる。
もちろん、危険は大きい。
しかし、成長のためには、より強い相手との真剣勝負を避けては通れない。
アルトは、夕暮れの森の中で、静かに闘志を燃やしていた。
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