落ちこぼれギフト【ダメージ反射】は諦めない ~1割返しから始まる異世界冒険譚~

シマセイ

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第13話 初めての薬草採取依頼

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薬草採取依頼の日。
アルトは、リナに書いてもらった薬草の特徴を記したメモと、採取した薬草を入れるための丈夫な布袋を手に、少し緊張した面持ちで家を出た。
戦闘はないかもしれないが、これも立派な冒険者の仕事だ。
失敗はできない、と自分に言い聞かせる。

最初の目標は「サンデュー」。
リナによれば、日当たりの良い草原に生えているという。
アルトは村を出て、見晴らしの良い近くの草原へと向かった。
太陽の光を浴びて、様々な種類の草花が伸びている。
青々とした草むらの中、リナが教えてくれた特徴――朝露をまとったような、青い小さな花――を探す。

「うーん、似たような草が多いな…」

注意深く観察しないと、見分けるのは難しい。
アルトは腰をかがめ、一つ一つの草を丁寧に見ていく。
しばらく探していると、朝の光を受けてキラキラと輝く露を葉に乗せた、小さな青い花を見つけた。

「これだ!サンデュー!」

アルトは思わず声を上げた。
メモの絵と見比べても、間違いなさそうだ。
慎重に根元から引き抜き、布袋にしまう。
同じ特徴を持つものをさらに探し、苦労しながらもなんとか指定された5本を採取することができた。

「よし、まずは一つ目クリア!」

幸先の良いスタートに、アルトは少し安堵した。

次は「ムーンリーフ」。
湿った岩場の影に生えているという。
アルトは、森の入り口近くにある、日が差さない薄暗い沢沿いの岩場へと向かった。
足元は苔で滑りやすく、岩の隙間や木の根元などを注意深く探していく必要がある。

ひんやりとした空気の中、岩陰に銀色がかった葉を持つ植物がいくつか生えているのを見つけた。

「あった、ムーンリーフ…かな?」

近づいてよく見てみると、葉の形がリナのメモにあるものと微妙に違う気がする。
それに、どこか不快な匂いがするような…。

「もしかして、これが毒草…?」

アルトは立ち止まり、メモと目の前の植物を何度も見比べた。
焦って採取して、もし毒草だったら依頼は失敗だ。
時間をかけて、より慎重に探すことにした。

岩場のさらに奥、より湿気の多い場所に、先ほどのものとは違う、明らかに銀色の輝きを放つ葉を持つ植物の群生を見つけた。
葉の形も、メモの通りだ。

「こっちが本物だ!」

アルトは確信し、丁寧に5本採取した。
見分けるのに少し時間はかかったが、慎重さが功を奏した。
これも冒険者として必要なスキルなのだろう。

さて、最後の目標は「ファイアハーブ」。
これは、少し森の奥に入った暖かい場所に生えているという。
アルトは気持ちを引き締め、ナイフの柄を握り直し、いつも訓練しているエリアよりもさらに深く森へと足を踏み入れた。
周囲の木々はより高く、太くなり、森の気配も濃くなってくる。
アルトは、聴覚と視覚を最大限に働かせ、魔物の気配がないか警戒しながら進んだ。

リナが言っていた「暖かい場所」…おそらく、日当たりが良い斜面か、あるいは地熱でもあるのだろうか。
しばらく進むと、木々が少し開け、陽光が差し込む暖かい斜面が見えてきた。
そして、その斜面には、燃えるような鮮やかな赤い花が点々と咲いているのが見えた。

「あれがファイアハーブか…!」

アルトは目的地を見つけ、少し安堵した。
しかし、その群生地に近づこうとした瞬間、すぐ近くの茂みがガサガサと激しく揺れた。
アルトは咄嗟にナイフを構える。

「グルァ!」

茂みから飛び出してきたのは、緑色の肌をした魔物だった。
ゴブリンだ。
だが、いつもアルトが訓練相手にしている小型のゴブリンとは違う。
体格が一回り大きく、筋骨隆々としており、手には粗末ながらも鋭く尖らせた木の槍を握っていた。
おそらく、「ゴブリン・ソルジャー」と呼ばれる、ゴブリンの中でも戦闘に特化した個体だろう。

ゴブリン・ソルジャーはアルトを視界に捉えると、短い奇声を発し、槍を構えて一直線に突進してきた。
薬草採取の最中だが、これはもう戦うしかない。

「くっ…!」

アルトは薬草袋を背中に庇うようにしながら、ナイフで迎え撃つ。
相手は槍を持っているため、間合いが遠い。
繰り出される鋭い突きを、アルトはナイフで懸命に弾く。
カン、カン、と金属と木がぶつかる音が森に響く。

リーチの長い槍の攻撃は、【ダメージ反射】のタイミングを合わせるのが難しい。
アルトは無理に反射を狙わず、まずは相手の攻撃を見切り、捌くことに集中した。
向上した体捌きと集中力で、致命的な一撃はなんとか避けているが、槍の穂先が時折腕や足を掠め、チリチリとした痛みが走る。

「このままじゃジリ貧だ…!」

アルトは一瞬の隙を突き、相手の槍の突きに合わせて、あえて懐へと踏み込んだ。
槍の柄の部分を、革で補強した腕で強引に受け止める。
衝撃は大きいが、耐えられる!

「――集中!」

意識を極限まで高め、ギフトを発動!
ドンッ!
鈍い衝撃と共に、反射ダメージがゴブリン・ソルジャーの腕を襲う。

「グギャ!?」

ゴブリンは槍を取り落としそうになり、体勢を崩した。
すかさずアルトはナイフで牽制し、距離を取らせる。
これまでのゴブリンよりも明らかに手強い相手だ。
しかし、アルトは焦らなかった。
訓練で培った冷静さを保ち、ナイフと反射を的確に使い分けていく。

槍を弾き、体勢を崩させ、隙を見て反射を決める。
何度かその攻防を繰り返すうちに、ゴブリン・ソルジャーの動きは目に見えて鈍くなってきた。
反射ダメージが確実に蓄積している証拠だ。
そして、アルトが放った渾身の反射が、ゴブリンの胴体にクリーンヒットした瞬間、

「ギ…ギギ…」

ゴブリン・ソルジャーは呻き声を上げると、ついに戦意を喪失したのか、槍を放り出して森の奥へと逃げていった。

「はぁ…はぁ…行ったか…」

アルトは息を整え、周囲を警戒する。
幸い、他の魔物の気配はないようだ。
予期せぬ戦闘だったが、以前よりも格段に落ち着いて対処できた自分に、アルトは確かな成長を感じていた。

戦闘の興奮を鎮め、アルトは本来の目的であるファイアハーブの採取に取り掛かった。
燃えるような赤い花が、斜面に力強く咲いている。
アルトはリナの注意を思い出し、一枚一枚、葉の裏を確認した。

「こっちは…毛がないな。こっちは…よし、毛がある。これが本物だ」

毒草と間違えないよう、慎重に本物のファイアハーブだけを選び、丁寧に根元から採取していく。
5本集め終えた時には、達成感で胸がいっぱいになった。

指定された3種類の薬草が、全て布袋の中に収まった。

「やった!依頼完了だ!」

アルトは満足感と共に、採取した薬草を大切にしまい、村への帰路についた。
初めての薬草採取依頼は、思わぬ戦闘もあったが、無事に達成することができた。
森の奥はやはり危険だと再認識したが、同時に、ゴブリン・ソルジャーという少し格上の相手にも渡り合えたことで、自分の力が着実に向上していることを強く実感できた。

「これなら、次はジャイアントラット討伐にも挑戦できるかもしれないな」

新たな目標が、アルトの心に芽生える。
夕暮れの光が差し込む森を抜けながら、アルトは少しだけ逞しくなった背中で、冒険者としての次なる一歩を踏み出す決意を固めていた。
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