落ちこぼれギフト【ダメージ反射】は諦めない ~1割返しから始まる異世界冒険譚~

シマセイ

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第19話 新たな挑戦とギルドの変化

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ブルーキャップの採取依頼を終えてから数日後、アルトが冒険者ギルドの扉を開けると、以前とは明らかに違う空気が流れているのを感じた。
好奇や侮蔑の視線は消え、代わりに、他の冒険者たちがアルトの存在を自然に受け入れているような、そんな雰囲気があった。

カウンターでギルドマスターに挨拶をすると、「おう、来たか。次の依頼か?」と、まるで常連に接するかのように声をかけてくれる。
アルトが依頼掲示板を眺めていると、ギルドの隅で酒を飲んでいた、軽装鎧を着た年配の戦士風の冒険者が、ひょいと近づいてきた。

「よう、坊主。この前のブルーキャップ採取、大変だったらしいな」

突然の声かけに、アルトは驚いて顔を上げた。

「え?あ、はい…」

「はっはっは、ギルドマスターから聞いたぞ。毒胞子を吸っちまった上に、ポイズンスライムまで倒したんだってな。Fランクの初仕事にしちゃ、上出来だ。根性あるじゃねえか」

年配の冒険者は、ニカッと歯を見せて笑った。
そして、「森のあの辺りは、最近ブルーキャップが増えてるからな。湿地帯の先には、もっと厄介なモンもいるかもしれん。気をつけな」と、簡単なアドバイスまでしてくれた。

他の冒険者たちも、遠巻きながらアルトの様子を窺っているが、その視線には敵意はない。
「使えないギフト持ち」ではなく、「困難な依頼を達成した、駆け出しの新人」として、少しずつ認められ始めている。
その変化が、アルトには何よりも嬉しかった。

アルトは気持ちを新たに、次の依頼を選ぶことにした。
前回の薬草採取も良い経験になったが、やはり戦闘経験をもっと積みたい。
ジャイアントラット討伐に再挑戦するのもいいが、できれば違うタイプの魔物と戦ってみたい、とも考えていた。

掲示板を注意深く見ていくと、一つの依頼書が目に留まった。

『フォレストスパイダー討伐:森の東地区に巣食う大型蜘蛛を2匹討伐。報酬銅貨18枚。ランクF以上』

フォレストスパイダー。
大型の蜘蛛の魔物で、粘着性の高い糸による拘束や、弱いとはいえ毒を持つ牙が厄介な相手だという。
ジャイアントラットの素早さとはまた違う、特殊な攻撃への対応が求められるだろう。
アルトは、この新たな挑戦に魅力を感じ、依頼書を手に取った。

依頼書をカウンターに持っていくと、ギルドマスターは内容を確認し、頷いた。

「フォレストスパイダーか。いいだろう。あの蜘蛛は、動き自体はラットほど速くないが、糸が厄介だ。絡め取られると身動きが取れなくなる。それに、牙の毒も侮れんぞ。解毒の準備はしておけ」

「はい、了解です」

アルトは依頼を受け、早速情報収集に取り掛かった。
ギルドの資料棚でフォレストスパイダーの項目を探し、その生態や特徴を読み込む。
弱点はやはり腹部のようだが、多脚で動きが読みにくく、守られていることが多いらしい。
糸は、ナイフで素早く切断するのが有効。
毒は、痺れや軽い麻痺を引き起こす程度だが、戦闘中に受ければ致命的になりかねない。

先ほど声をかけてくれた年配の冒険者にも話を聞いてみた。

「スパイダーか。奴らの巣は分かりやすいが、近づくとすぐに糸を飛ばしてくるからな。まず糸をどうにかしないと、まともに戦えんぞ。腹を狙うなら、ひっくり返すのが一番だが…まあ、Fランクには難しいだろうな」

貴重なアドバイスを得て、アルトは対策を練り始めた。
糸はナイフで切る。
毒はリナにもらった薬草で対処する。
そして、あのギフトの応用、「衝撃波(仮)」で糸を弾き飛ばせないだろうか?

家に戻ったアルトは、新たな敵を想定した訓練を開始した。
細い蔓などを蜘蛛の糸に見立て、素早くナイフで切り払う練習。
そして、軽い小石などを投げてもらい、それを「衝撃波(仮)」で弾き飛ばすイメージトレーニング。
まだ威力は弱く、コントロールも難しいが、タイミングさえ合えば、軽いものなら弾けるかもしれない、という微かな手応えがあった。
もちろん、基本である反射の訓練も怠らない。より精密に、より強力に。ギフトの練度を高める努力を続けた。

訓練の合間に、アルトはリナの元を訪ね、次の依頼がフォレストスパイダー討伐であることを話した。

「蜘蛛!?大きな蜘蛛の魔物でしょう?糸とか毒とか、危ないじゃない!」

リナは、アルトの言葉にすぐに顔を曇らせた。
彼女の心配はもっともだ。

「大丈夫だよ、リナ。ちゃんと情報は集めたし、対策も考えてる。それに、色々な魔物と戦って経験を積まないと、もっと強い冒険者にはなれないから」

アルトは、自分の決意を真剣な眼差しで語った。
リナはしばらく黙ってアルトを見つめていたが、やがて小さくため息をつくと、

「……分かった。アルトが決めたことなら、応援する。でも、絶対に、絶対に無理はしないでね。……はい、これ、持っていって。新しい解毒薬草。前よりも少し強いやつだから」

そう言って、リナは小さな薬草の包みをアルトに手渡してくれた。
その優しさが、アルトの心を強く支えてくれる。

フォレストスパイダーの糸や牙のことを考えると、アルトは改めて自分の装備の心許なさを感じていた。
兄にもらった腕当てはあるが、胴体は相変わらず普段着のチュニック一枚だ。
もし腹部に牙を受けたら…?

「やっぱり、ちゃんとした防具が欲しいな…」

報酬を貯めて、最低限の革鎧くらいは手に入れなければ。
それは、アルトにとって新たな、そして現実的な目標となった。

数日後、アルトは全ての準備を整えた。
ナイフを研ぎ、腕当てを着け、解毒薬草を懐にしまう。
そして、決意を新たに、フォレストスパイダーが生息するという森の東地区へと向かった。

そこは、これまでアルトが足を踏み入れたことのない、より鬱蒼としたエリアだった。
木々の間には、白く太い蜘蛛の糸があちこちに張り巡らされ、不気味な雰囲気を醸し出している。
足元にも粘つく糸が絡みつき、歩きにくい。

「この辺りが、奴らの巣か…」

アルトはナイフを抜き放ち、慎重に周囲を警戒する。
果たして、厄介な糸と毒を持つ蜘蛛の魔物に、アルトはどう立ち向かうのか。
Fランク冒険者としての、次なる試練が、今まさに始まろうとしていた。
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