落ちこぼれギフト【ダメージ反射】は諦めない ~1割返しから始まる異世界冒険譚~

シマセイ

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第24話 念願の革鎧と初めての捜索依頼

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ジャイアントラット討伐の報酬と、これまでの地道な依頼で貯めた銅貨。
アルトの革袋はずっしりと重みを増し、ついに目標としていた革鎧の購入資金が貯まった。
その事実に、アルトの心は期待で大きく膨らんでいた。

「よし、まずは鍛冶屋の親方さんのところへ行ってみよう!」

アルトは、兄ヨハンの助言に従い、村のはずれにある鍛冶屋へと向かった。
カンカン、とリズミカルな金属音が響いてくる。

中に入ると、むっとするような熱気と共に、屈強な体つきの鍛冶屋の親方が、真っ赤に焼けた鉄をハンマーで叩いている姿があった。
その真剣な眼差しと、飛び散る火花に、アルトは少し気圧されそうになる。

「あ、あの、すみません…!」

アルトがおずおずと声をかけると、親方は手を止め、汗を拭いながら無愛想な顔を向けた。

「……なんだ、小僧。こんなところで油を売りに来たんなら、さっさと帰りな。こっちは忙しいんだ」

「い、いえ!遊びに来たんじゃなくて…あの、革鎧を探しているんです!」

アルトは怯まず、自分が冒険者であること、予算が限られていること、そして兄のヨハンから、親方なら相談に乗ってくれるかもしれないと聞いたことを、一生懸命に説明した。

親方は、アルトの話を黙って聞いていたが、「ヨハンの弟」という言葉に、ピクリと眉を動かした。

「ふん、あの悪ガキの弟か。あいつも昔は、無茶ばかりして俺に道具の修理を頼みに来たもんだったが…」

親方は、どこか懐かしむような表情を見せた後、ため息をついた。

「まあ、いいだろう。ちょうど、手頃な中古の革鎧が一つある。少し古いがな、俺がしっかり手入れしてやった特別製だ。持ち主がランクアップして手放したやつでな。物自体は悪くないぞ」

そう言って、親方は店の奥から、黒光りする革鎧を持ってきた。
硬質化された革で作られた胸当てと肩当て、そして腰回りを守る前垂れが一体になった、シンプルだが非常に頑丈そうな鎧だ。

「お前の体に合わせて、少し調整してやる。それで、この値段でどうだ?」

親方が提示した価格は、アルトの予算でなんとか手が届く範囲だった。

「は、はい!是非、お願いします!」

アルトは喜び勇んで購入を決め、数日後に調整が終わった革鎧を受け取ることになった。

数日後。
アルトは、自分の体にぴったりと合うように調整された革鎧を受け取った。
早速家に帰り、試着してみる。
重さはあるが、動きを大きく妨げるほどではない。
鏡に映る、鎧を身に着けた自分の姿。
まだ頼りなさは残るが、それでも以前よりずっと「冒険者」らしく見える気がして、アルトは満面の笑みを浮かべた。

「これで、防御力は格段に上がったはずだ!」

安心感が違う。
これなら、多少の攻撃を受けても、致命傷は避けられるかもしれない。
アルトは、ヨハンに教わった通り、専用のオイルを綺麗な布に染み込ませ、感謝の気持ちを込めて、丁寧に鎧の手入れを始めた。
自分の命を守ってくれる、大切な相棒になるのだから。

防御面での不安が大きく軽減されたことで、アルトは新たな挑戦への意欲をさらに強くした。
ギルドへ向かい、彼は以前から少し気になっていた依頼書を手に取った。

『迷子の黒猫捜索:村長の孫娘の大事な猫「クロ」。臆病な性格。特徴は右耳の先の白い毛。報酬銅貨10枚』

討伐や採取とは違う、捜索依頼。
戦闘能力ではなく、観察眼や聞き込み能力、そして根気強さが求められるだろう。
自分のスキルアップのためにも、良い経験になるはずだ。

「ほう、猫探しとはな。たまにはそういう依頼もいいだろう。だが、油断はするなよ。臆病な猫を見つけるのは、魔物を倒すより骨が折れるかもしれんぞ」

ギルドマスターは、少し意外そうな顔をしながらも、依頼を承認してくれた。

アルトはまず、依頼主である村長の家を訪ねた。
応対してくれたのは、目を真っ赤に腫らした小さな女の子だった。
村長の孫娘だ。
彼女は、しゃくりあげながら、愛猫「クロ」がいなくなった時の状況を話してくれた。
昨日、少し目を離した隙に、庭からいなくなってしまったこと。
クロはとても臆病な性格で、知らない人には滅多に近寄らないこと。
魚が大好きで、よく市場の魚屋の周りをうろついていたこと。
そして、一番の特徴は、右耳の先だけが、生まれつき白くなっていること。

「クロ…私の大事なクロ…見つけてください、お兄ちゃん…」

女の子の涙ながらの訴えに、アルトは「任せて!」と力強く頷いた。

アルトは、女の子から聞いた情報を頼りに、村の中での聞き込みを開始した。
「昨日、黒い猫を見かけませんでしたか?右耳の先が白い…」
村人たちに尋ねて回る。

「ああ、そういえば、昨日、市場の魚屋の裏手で、そんな猫がこそこそしてたような気がするなぁ」
「うちの納屋の屋根裏には、たまに野良猫が入り込んでるんだよ。黒い猫もいたかもしれん」
「村はずれの畑の方で、黒い影が走っていくのを見たような…?」

様々な情報が集まった。
中には曖昧なものもあるが、どれも貴重な手がかりだ。
アルトはそれらを一つ一つ丁寧にメモに取り、可能性のある場所をしらみつぶしに探し始めた。

魚屋の裏。
納屋の屋根裏。
日当たりの良い塀の上。
村はずれの畑。
猫が好きそうな暖かい場所、隠れやすそうな狭い場所…。

アルトは、これまでの訓練で培った観察眼をフルに活用した。
地面に残された小さな足跡、壁に残された爪痕、食べ残しの魚の骨…。
しかし、クロに繋がる決定的な証拠は見つからず、時間だけが過ぎていく。
臆病なクロのことだ、きっとどこか安全な場所に身を潜めているに違いない。

捜索は難航した。
アルトは、村はずれにある、古い廃材置き場にやってきた。
ここは、野良猫の寝ぐらになっているという噂もある。
もしかしたら、クロもここに迷い込んでいるかもしれない。

「クロ~?どこにいるんだ~?」

アルトは声をかけながら、廃材の山の間を探し回る。
しかし、猫の気配はない。

「うーん、ここにもいないか…。こういう時、ギフトで何かできればいいんだけどな…」

アルトはふと思いついた。
あの「衝撃波(仮)」。
威力は弱いが、音を立てて、隠れている猫を驚かせて外に出す、なんてことはできないだろうか?
ダメ元で試してみる価値はあるかもしれない。

アルトは、廃材の山の一角に向かって、腕を突き出し、ギフトの力をほんの少しだけ込めて、衝撃波(仮)を放ってみた。
パンッ、と乾いた小さな音が響く。

……やはり、何も起こらない。
そんな都合の良い使い方はできないか、とアルトが肩を落としかけた、その時だった。

廃材の山の奥の方から、か細い、しかし確かに猫のものと思われる鳴き声が聞こえてきたのだ。

「ニャア……」

「…今の、もしかして!」

アルトは息を殺し、耳を澄ませた。
間違いなく、猫の声だ。
そして、その声は、廃材の山の、一番奥深く、人が入り込むのが難しいような隙間から聞こえてくる。

「クロなのか…!?」

アルトは、声がしたと思われる方向へ、慎重に、そして期待を込めて近づいていった。
戦闘とは全く違う種類の緊張感が、アルトを包み込んでいた。
果たして、そこに臆病な黒猫はいるのだろうか?
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