落ちこぼれギフト【ダメージ反射】は諦めない ~1割返しから始まる異世界冒険譚~

シマセイ

文字の大きさ
69 / 125

第71話 昇格への試練、忘れられた神殿

しおりを挟む
Dランク冒険者としての実績を着実に積み重ね、アルトはギルド内でも一目置かれる存在となっていた。
オーガ討伐という大きな成果は、彼の評価を確固たるものにし、次なるステップ、Cランクへの昇格を現実的な目標として捉えさせるのに十分だった。

そのアルトの意欲を知ってか、ギルドマスターは彼に一つの特別な依頼を提示した。

「アルト君、君のここ最近の活躍は目覚ましい。Dランクとしての実績は、もはや十分と言えるだろう。そこで、ギルドとして君をCランクへ推薦したいと考えている」

その言葉に、アルトの胸は高鳴った。
Cランク。それは一人前の中堅冒険者の証。受けられる依頼の質も報酬も格段に上がり、冒険者としての活動範囲も大きく広がる。

「もちろん、そのためには相応の試練を乗り越えてもらう必要があるが…挑戦してみる気はあるかね?」

マスターが差し出したのは、一枚の古びた羊皮紙に記された依頼書だった。

『忘れられた神殿・調査及び浄化:王都近郊東部山麓。内部に出現したアンデッド(ワイト級含む)の発生源を特定し、可能であれば浄化せよ。危険度高。ランクE以下単独不可、Dランク以上推奨』

「かつては豊穣の神を祀っていた古い神殿だが、数十年前に打ち捨てられ、廃墟となっていた。だが、最近になって内部からアンデッドが出没するという報告が相次いでいる。おそらく、何者かが死者を冒涜するような儀式でも行ったのだろう。内部を調査し、アンデッド発生の元凶を突き止め、可能であれば、それを浄化してもらいたい」

マスターの説明によれば、内部には通常のスケルトン兵に加え、より強力で知性を持つアンデッド「ワイト」の目撃情報もあるという。
ワイトは冷気を操る能力を持つこともあり、非常に厄介な相手だ。
Cランク昇格にふさわしい、間違いなく危険な任務だった。

「はい!ぜひ、挑戦させてください!」

アルトは、迷うことなく力強く答えた。
困難な挑戦ほど、乗り越えた時の成長は大きい。
そして、今の自分ならやれるはずだ、という自信もあった。

依頼を受けるにあたり、アルトはギフト研究の協力者であるエリアーヌにも相談してみた。
古代遺物にも詳しい彼女なら、忘れられた神殿について何か知っているかもしれないと思ったからだ。

「まあ、忘れられた神殿ですって?ええ、存じておりますわ!」

エリアーヌは、案の定、目を輝かせて語り始めた。

「元々は、この地域に古くから伝わる、土着の豊穣の女神様を祀っていた場所ですの。しかし、数百年前に王国が光の教会を国教と定めてからは、信仰も廃れ、忘れ去られてしまった…悲しい歴史を持つ神殿ですわ」

彼女は、神殿の大まかな構造や、祀られていた神に関する伝承など、いくつかの興味深い情報を教えてくれた。
そして、ワイトについても。

「ワイトは強力なアンデッドですけれど、弱点もはっきりしていますわ。聖なる力、そして炎です。物理的な攻撃なら、頭部にあるとされる『魂の核』を破壊するのが最も効果的でしょう。それと…あなたのギフトの、あの麻痺効果。精神を持たない低級アンデッドには効きにくいかもしれませんが、ワイトのような、ある程度の知性や残留思念を持つ上位アンデッドには、一時的に動きを阻害できる可能性はありますわね。試してみる価値は大いにありますわよ!」

エリアーヌの言葉は、アルトに勇気と、そして戦術のヒントを与えてくれた。

アルトは、対アンデッド戦と、そして初めての本格的なダンジョン探索に備え、入念な準備を行った。
聖水は高価で手が出なかったが、頑鉄工房のボルガンに相談し、黒曜の剣の柄の部分に、ドワーフに古くから伝わるという、簡易的な浄化のルーン文字を刻んでもらった。「気休め程度かもしれんがな」とボルガンは言っていたが、それでも心強いお守り代わりにはなるだろう。
銀製のナイフも、護身用に一本購入した。

ダンジョン探索に不可欠な、長くて丈夫なロープ、普段より多めの松明と予備の油、地図を作成するための羊皮紙と炭、そして簡単な罠なら解除できるかもしれない細い金属棒なども用意する。
もちろん、リナにもらった回復軟膏と解毒薬草も、多めに携帯していく。

準備を万端に整え、アルトは王都から半日ほど離れた東部山麓にある、「忘れられた神殿」へと向かった。
森の中にひっそりと佇むその神殿は、蔦に覆われ、壁の多くは崩れ落ち、長い年月の経過と、人々に忘れ去られた寂寥感を色濃く漂わせていた。
大きく口を開けた入り口は暗く、中からはひんやりとした、そして明らかに死の気配が漂ってくるようだった。

ランタンに火を灯し、アルトは慎重に神殿内部へと足を踏み入れた。
中は予想通り、埃っぽく、無数の蜘蛛の巣が張り巡らされている。
床には崩れた天井や壁の瓦礫が散乱し、歩くたびにジャリジャリと音を立てる。
壁には、かつての信仰を偲ばせる、しかし今はもう色褪せて判読困難な古い壁画のようなものが、かろうじて残っていた。
時折、カサ…というネズミか何かの小さな物音や、あるいは気のせいか、遠くから聞こえる誰かの呻き声のようなものが、アルトの緊張感をいやがうえにも高めていく。

いくつかの通路や、かつて信者の控え室だったような小部屋を探索する中で、アルトは数体のスケルトン兵と遭遇した。
カチャカチャと骨を鳴らし、錆びた剣で襲いかかってくる骨の兵士。
しかし、もはや彼らはアルトの敵ではなかった。
ショートソードではなく、黒曜の剣でのカウンター反射は、面白いようにスケルトンの骨を砕き、頭部への的確な一撃で、危なげなく、そして迅速に無力化していく。

そして、神殿の中央ホールと思われる、天井の高い、広い空間に出た時。
そこに、それは待ち構えていた。
薄暗いホールの奥、崩れかけた祭壇の前に佇む、三つの人影。
しかし、それは生者ではなかった。
ボロボロになった、かつては上等だったであろう貴族のような衣服をまとい、その肌は青白く干からび、眼窩には不気味な青白い燐光が宿っている。
手には、見るからに冷気をまとった、歪んだ形状の剣。
ワイトだ。
しかも、一体ではない。
三体のワイトが、アルトの存在に気づき、その虚ろな瞳を一斉にこちらに向けたのだ。

キィィン……。
まるで冬の寒風のような、不気味な音がホールに響く。
ワイトたちが持つ剣から、冷気が立ち昇り始めている。
アルトは、背筋を走る冷たい感覚を感じながらも、臆することなく黒曜の剣の柄を強く握りしめ、左腕のバックラーを構えた。

Cランク昇格を賭けた試練。
忘れられた神殿の奥深くで、アルトはついに強力なアンデッド、ワイトと対峙した。
一体だけでも厄介な相手が、三体。
そして、この神殿のどこかには、アンデッド発生の元凶となっている存在がいる可能性が高い。

これまでの経験、磨き上げた剣と盾の技、そして未知の可能性を秘めたギフト。
その全てをぶつけなければ、この試練を乗り越えることはできないだろう。
アルトの冒険者としての、そしてギフト使いとしての真価が問われる、新たな戦いが、今、始まろうとしていた。
静まり返った神殿ホールに、アルトの覚悟を決めた呼吸音だけが、響いていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。 ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。 しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。 奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。 そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

処理中です...