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第94話 黒いスライムの謎、森への追跡
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夜明けの光が、昨夜の激闘の生々しい痕跡、干からびた家畜の亡骸と、そこかしこに残る黒いシミを照らし出す。
アルト、ノエル、ゴルドーの三人は、疲労の色を隠せないながらも、謎の漆黒のスライムを撃退したという確かな手応えを感じていた。
しかし、根本的な解決には至っていない。
あの不気味な魔物は、一体何なのか?そして、どこから現れたのか?
朝一番に、アルトたちは村長と共に、馬を飛ばして駆けつけた領主代理の執事セバスチャンへと昨夜の出来事を詳細に報告した。
漆黒のスライムの特徴、壁や天井を這い回る能力、そして何より、生物の生命力を吸い取るという恐るべき性質。
さらに、昼間畑で見つけた黒い欠片(乾燥した核)が弱点となり、同質の核同士が触れると消滅するという、奇妙な特性についても説明した。
報告を受けたセバスチャンは、その怜悧な表情に驚きと困惑の色を浮かべた。
「生命力を吸い取る、黒いスライム…?そのような魔物の存在は、わたくしも初めて耳にしました。文献にも記録がないかもしれませんな…。しかし、君たちがそれを発見し、かつ撃退してくれたおかげで、少なくとも今夜、この村は安心して眠ることができるでしょう。心から感謝申し上げる、冒険者の皆さん」
セバスチャンは深く頭を下げた。
「子爵様も、きっとお喜びになるはずです。しかし、事件が解決したわけではない。引き続き、その魔物の正体と、領内での発生源の調査をお願いしたい。報酬については、必ずや約束以上のものをお支払いすることをお約束します」
力強い感謝と、任務続行の依頼。
アルトたち三人は、改めてこの難事件に挑む決意を固めた。
アルトたちが魔物を撃退したというニュースは、夜明けと共に瞬く間に村中に広まった。
恐怖におびえていた村人たちの表情には、安堵の色が浮かび、アルトたちを見る目には強い期待と感謝が込められていた。
「おお、冒険者様!本当にありがとうございますだ!」
「あの気味の悪いヌメヌメしたやつを、本当に退治してくれたんで?」
中には、昨夜の出来事に関連するかもしれない、新たな情報を提供してくれる者もいた。
「そういえば…最近、村の西に広がっている古い森のあたりで、夜になると黒い影のようなものが、うごめいているのを見た気がするだよ…気のせいかと思っていたんだが…」
「うちの畑の作物が急に枯れ始めたのも、ちょうどあの森の方から、変な冷たい風が吹いてくるようになってからだったなぁ…」
これらの村人たちの証言は、魔物の活動範囲が村の外、特に西の森に関連している可能性を強く示唆していた。
発生源は、やはりあの森の中にあるのかもしれない。
アルトは、回収したスライムの核(黒い欠片)と、その奇妙な性質に関する情報を、一刻も早く王都のエリアーヌに送り、専門的な分析を依頼する必要があると考えた。
幸い、子爵家がギルドとの緊急連絡用に保有している、伝書鳩よりも格段に速いとされる小型の通信用魔道具を、セバスチャンの計らいで使わせてもらえることになった。
アルトは、サンプルとなる黒い欠片を数個、厳重に梱包し、観察結果を記した詳細な報告書と共に、その魔道具に託した。
「エリアーヌさんなら、きっと何か分かるはずだ…」
王都からの返信が、今は何よりも待ち遠しかった。
エリアーヌからの返信を待つ間、アルト、ノエル、ゴルドーは、村の集会所の一室を借り、改めて今回の謎の魔物について考察を巡らせた。
「生命力を吸い上げ、同質の核によって崩壊する漆黒のスライム、か…」
ゴルドーは、腕を組み、唸る。
「古今東西の魔物に関する伝承や、わしが読んだ限りの古文書にも、これほど奇妙な存在の記述は記憶にないわい。どこか異界から迷い込んだ新種の魔物か、あるいは…誰かが、錬金術か何かで人工的に作り出した存在か…?」
「……あの黒い核」
それまで黙って話を聞いていたノエルが、静かに口を開いた。
「…とても古い、感じがした。…石炭、みたいだけど、違う。…硬い。でも、脆い。…魔力、ほんの少しだけ、感じる。…死の、匂いも」
彼女の鋭敏な感覚は、その物質の異質さを捉えていたようだ。
「村人たちの話だと、やっぱり西の森が怪しいみたいだね」
アルトが地図を広げながら言う。
「発生源がそこにある可能性が高いと思う。次の調査は、あの森に絞って、発生源と思われる場所を探してみるべきじゃないかな」
「うむ、それが妥当じゃろうな」
ゴルドーも同意する。
「ただし、森の中となれば、奴らがどのような形で潜んでいるか分からん。慎重に進む必要があるぞ」
ノエルも、こくりと頷いた。
三人の意見は一致した。
次の目標は、西の森の調査、そして可能であれば、魔物の発生源の特定と破壊だ。
その前に、装備の確認と手入れが必要だった。
漆黒のスライムが放っていた粘液には、弱いながらも腐食性があったようで、ゴルドーの戦斧の刃や、アルトの革鎧の表面には、わずかながらダメージが残っていた。
幸い、この村には小さな鍛冶屋があり、アルトたちはそこで簡単な手入れと、応急的な補強を施してもらうことができた。
アルトのバックラーに入った亀裂も、これ以上広がらないように、革と金属の当て具で補強してもらった。
準備を整え、アルトたちパーティは、村人たちの不安と、そして強い期待の眼差しに見送られながら、村の西に広がる古い森へと向かった。
その森は、昼間でも木々が鬱蒼と生い茂り、陽の光があまり届かない、薄暗く、そしてどこか不気味な雰囲気が漂う場所だという。
謎の生命力吸収スライム。
その正体と発生源を突き止めるため、アルトたちは新たな、そしてより危険な調査へと足を踏み入れた。
アルト、ノエル、ゴルドーの三人は、疲労の色を隠せないながらも、謎の漆黒のスライムを撃退したという確かな手応えを感じていた。
しかし、根本的な解決には至っていない。
あの不気味な魔物は、一体何なのか?そして、どこから現れたのか?
朝一番に、アルトたちは村長と共に、馬を飛ばして駆けつけた領主代理の執事セバスチャンへと昨夜の出来事を詳細に報告した。
漆黒のスライムの特徴、壁や天井を這い回る能力、そして何より、生物の生命力を吸い取るという恐るべき性質。
さらに、昼間畑で見つけた黒い欠片(乾燥した核)が弱点となり、同質の核同士が触れると消滅するという、奇妙な特性についても説明した。
報告を受けたセバスチャンは、その怜悧な表情に驚きと困惑の色を浮かべた。
「生命力を吸い取る、黒いスライム…?そのような魔物の存在は、わたくしも初めて耳にしました。文献にも記録がないかもしれませんな…。しかし、君たちがそれを発見し、かつ撃退してくれたおかげで、少なくとも今夜、この村は安心して眠ることができるでしょう。心から感謝申し上げる、冒険者の皆さん」
セバスチャンは深く頭を下げた。
「子爵様も、きっとお喜びになるはずです。しかし、事件が解決したわけではない。引き続き、その魔物の正体と、領内での発生源の調査をお願いしたい。報酬については、必ずや約束以上のものをお支払いすることをお約束します」
力強い感謝と、任務続行の依頼。
アルトたち三人は、改めてこの難事件に挑む決意を固めた。
アルトたちが魔物を撃退したというニュースは、夜明けと共に瞬く間に村中に広まった。
恐怖におびえていた村人たちの表情には、安堵の色が浮かび、アルトたちを見る目には強い期待と感謝が込められていた。
「おお、冒険者様!本当にありがとうございますだ!」
「あの気味の悪いヌメヌメしたやつを、本当に退治してくれたんで?」
中には、昨夜の出来事に関連するかもしれない、新たな情報を提供してくれる者もいた。
「そういえば…最近、村の西に広がっている古い森のあたりで、夜になると黒い影のようなものが、うごめいているのを見た気がするだよ…気のせいかと思っていたんだが…」
「うちの畑の作物が急に枯れ始めたのも、ちょうどあの森の方から、変な冷たい風が吹いてくるようになってからだったなぁ…」
これらの村人たちの証言は、魔物の活動範囲が村の外、特に西の森に関連している可能性を強く示唆していた。
発生源は、やはりあの森の中にあるのかもしれない。
アルトは、回収したスライムの核(黒い欠片)と、その奇妙な性質に関する情報を、一刻も早く王都のエリアーヌに送り、専門的な分析を依頼する必要があると考えた。
幸い、子爵家がギルドとの緊急連絡用に保有している、伝書鳩よりも格段に速いとされる小型の通信用魔道具を、セバスチャンの計らいで使わせてもらえることになった。
アルトは、サンプルとなる黒い欠片を数個、厳重に梱包し、観察結果を記した詳細な報告書と共に、その魔道具に託した。
「エリアーヌさんなら、きっと何か分かるはずだ…」
王都からの返信が、今は何よりも待ち遠しかった。
エリアーヌからの返信を待つ間、アルト、ノエル、ゴルドーは、村の集会所の一室を借り、改めて今回の謎の魔物について考察を巡らせた。
「生命力を吸い上げ、同質の核によって崩壊する漆黒のスライム、か…」
ゴルドーは、腕を組み、唸る。
「古今東西の魔物に関する伝承や、わしが読んだ限りの古文書にも、これほど奇妙な存在の記述は記憶にないわい。どこか異界から迷い込んだ新種の魔物か、あるいは…誰かが、錬金術か何かで人工的に作り出した存在か…?」
「……あの黒い核」
それまで黙って話を聞いていたノエルが、静かに口を開いた。
「…とても古い、感じがした。…石炭、みたいだけど、違う。…硬い。でも、脆い。…魔力、ほんの少しだけ、感じる。…死の、匂いも」
彼女の鋭敏な感覚は、その物質の異質さを捉えていたようだ。
「村人たちの話だと、やっぱり西の森が怪しいみたいだね」
アルトが地図を広げながら言う。
「発生源がそこにある可能性が高いと思う。次の調査は、あの森に絞って、発生源と思われる場所を探してみるべきじゃないかな」
「うむ、それが妥当じゃろうな」
ゴルドーも同意する。
「ただし、森の中となれば、奴らがどのような形で潜んでいるか分からん。慎重に進む必要があるぞ」
ノエルも、こくりと頷いた。
三人の意見は一致した。
次の目標は、西の森の調査、そして可能であれば、魔物の発生源の特定と破壊だ。
その前に、装備の確認と手入れが必要だった。
漆黒のスライムが放っていた粘液には、弱いながらも腐食性があったようで、ゴルドーの戦斧の刃や、アルトの革鎧の表面には、わずかながらダメージが残っていた。
幸い、この村には小さな鍛冶屋があり、アルトたちはそこで簡単な手入れと、応急的な補強を施してもらうことができた。
アルトのバックラーに入った亀裂も、これ以上広がらないように、革と金属の当て具で補強してもらった。
準備を整え、アルトたちパーティは、村人たちの不安と、そして強い期待の眼差しに見送られながら、村の西に広がる古い森へと向かった。
その森は、昼間でも木々が鬱蒼と生い茂り、陽の光があまり届かない、薄暗く、そしてどこか不気味な雰囲気が漂う場所だという。
謎の生命力吸収スライム。
その正体と発生源を突き止めるため、アルトたちは新たな、そしてより危険な調査へと足を踏み入れた。
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