落ちこぼれギフト【ダメージ反射】は諦めない ~1割返しから始まる異世界冒険譚~

シマセイ

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第117話 Bランクへの飛躍、黒曜の盾『夜鏡』

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ミノタウロス討伐という、Cランクとしては破格の功績。

それは、アルトの冒険者としての評価を、王都アステリアにおいて決定的なものとした。
数日後、ギルド評議会からの正式な通知が、ギルドマスターを通じてアルトにもたらされた。

「アルト君、評議会の決定が出た。君のこれまでの目覚ましい活躍、特に今回のミノタウロス単独討伐という偉業を鑑み、特例として【Bランク】への昇格を正式に承認する!」

ギルドマスターは、厳粛な、しかしどこか誇らしげな表情でそう告げると、アルトが身に着けていたCランクの鉄製プレートを外し、代わりに、銀色の美しい輝きを放つ、より精巧で複雑な意匠が施された【Bランク】プレートを手渡した。

Bランク。
それは、王国広しといえども、ごく一部の手練れの冒険者のみが到達できる領域。
ギルドの中核をなし、時には国家規模の依頼にも関わる、まさに一流の証だ。

アッシュフォード村を出た時には想像もできなかった高みに、自分は今、立っている。
アルトは、そのプレートの重みを、物理的なもの以上に、精神的な重みとして感じながら、深く、深く頭を下げた。

「ありがとうございます。マスター。このランクに恥じぬよう、これからも精一杯努めます」

その言葉に、ギルドホールからは、驚きと尊敬のこもった、温かい拍手が送られた。
若きBランク冒険者の誕生は、この王都ギルドにとっても、明るいニュースとなったのだ。

Bランクになったからといって、アルトが訓練を怠ることはなかった。
むしろ、その責任の重さを自覚し、彼はこれまで以上に鍛錬に励むようになった。
特に力を入れていたのは、エリアーヌと共に進める、ギフトの特殊効果「リフレクト・ショック」の制御訓練だ。

エリアーヌが用意した、古代の香木を焚きしめた静かな部屋で、アルトは長時間にわたる瞑想を行った。
心を無にし、自身の内側に存在するギフトのエネルギーの流れを、より深く、より鮮明に感じ取る。
そして、エリアーヌの指導の下、そのエネルギーに意識的に干渉し、特定のイメージ「守る」という強い意志を乗せていく訓練を繰り返した。

それは、気の遠くなるような、地道で繊細な作業だった。
しかし、ある時、訓練中に、アルトは確かな手応えを感じた。
極度の集中状態の中、「仲間を守る」場面を強くイメージした瞬間、彼の全身から、ほんの一瞬だが、あの蒼白い閃光が、以前よりも制御された形で、微かに漏れ出したのだ!
それは完全な発動には程遠い、ほんの兆しのようなものだった。
しかし、アルトの意志がある程度、ギフトの覚醒に影響を与えられた、初めての瞬間だった。

「…少しだけ、掴めてきたかもしれない…」

アルトが呟くと、隣で測定器を睨んでいたエリアーヌも興奮気味に頷いた。

「素晴らしい進歩ですわ、アルトさん!あなたの精神状態とギフトエネルギーの同調率が、確実に向上しています!この調子でいけば、いつか任意発動も…!」

制御への道はまだ遠く険しい。
だが、確かな一歩を踏み出したことに、アルトは静かな喜びを感じていた。

そんな訓練の日々の中、アルトは頑鉄工房のボルガン親方からも、待ちに待った連絡を受けた。
依頼していた、特製のバックラーが完成したというのだ。
アルトは期待に胸を膨らませ、工房へと急いだ。

「おう、来たか、小僧。…まあ、待たせただけの価値はある代物になったはずだ」
ボルガンは、ぶっきらぼうながらも、その目に確かな自信を宿して、一つの盾をアルトに差し出した。

それは、アルトが持つ黒曜の剣と対を成すかのように、夜の闇をそのまま写し取ったかのような、深く、美しい黒色をしたバックラーだった。
素材は、やはり希少な「夜闇鋼」。
大きさは通常のバックラーと同じくらいだが、その縁には鋭利な刃のような加工が施され、中央にはドワーフの古き守護のルーンが、力強く、そして精緻に刻み込まれている。
見た目だけで、その尋常ではない性能が伝わってくるようだった。

「名は『夜鏡(やきょう)』と名付けた。黒曜の剣と対になる、お前さんだけの、最高の盾だ」
ボルガンは、誇らしげに言った。
「夜闇鋼の特性でな、物理的な防御力は言うに及ばず、魔法的な攻撃に対しても、並の盾とは比較にならんほどの抵抗力を持つはずだ。そして…」

ボルガンは、アルトのギフトのことを思い出したのか、ニヤリと笑った。

「お前さんの、あの妙な反射の力。そのエネルギーを、より効率よく受け止め、そして何倍にも増幅させて相手に叩き返せるように、わしなりの工夫を凝らしておいた。まあ、使いこなせるかどうかは、お前さん次第だがな」

アルトは、畏敬の念と共に、「夜鏡」と名付けられたバックラーを受け取った。
手に伝わる、ずっしりとした、しかし不思議なほどの軽やかさ。
腕に装着すると、まるで最初からそこにあったかのように、完璧にフィットする。
黒曜の剣を右手に、夜鏡の盾を左腕に構えてみる。
黒と黒。
剣と盾。
まるで、一つの装備であるかのような、圧倒的な一体感があった。
これこそが、自分のための、最高の武具だ。
アルトは、ボルガン親方に、心の底からの感謝を伝えた。

新しい盾「夜鏡」を手にしたアルトは、早速訓練場でその性能を試した。
黒曜の剣との連携は、もはや芸術的とも言えるほどスムーズだ。
盾での防御から剣での反撃へ、あるいはその逆も、淀みなく、一瞬の隙もなく行える。
盾自体の強度も凄まじく、バルガスが訓練用に使う重い鉄槌の打撃すら、ほとんど衝撃を感じさせずに受け止めてしまう。

そして、カウンター反射。
ボルガンの言葉通り、夜鏡は、受けた衝撃をロスなくアルトのギフトへと伝え、そして反射されるエネルギーを、明らかに増幅させていた。
訓練用のダミーに反射を叩き込むと、以前とは比較にならないほどの破壊力で、ダミーが木っ端微塵に吹き飛んだ。
インパクト・パルスの威力も、夜鏡を通して放つことで、目に見えて向上している。
まさに、アルトのギフトのために鍛え上げられたかのような、最高の盾だった。

新たなランク、Bランク。
そして、新たな相棒、夜鏡の盾。
さらに、覚醒の兆しを見せるギフトの力。
アルトは、今、冒険者として、そして一人の戦士として、大きな飛躍の時を迎えていた。
彼は、Bランク冒険者としての最初の仕事に、そして己の新たな力を試すための、次なる挑戦に臨む時が来たと感じていた。

アルトはギルドへ向かい、Bランク向けの依頼が並ぶ掲示板の前に立った。
その中から、彼は一つの討伐依頼を選び出した。

『鎧角獣(アーマーライノ)討伐:南部平原に出現した鎧角獣1体の討伐。極めて硬い外皮と、城壁すら砕くと言われる突進力に最大限の注意を要す。危険度高。報酬 金貨2枚。ランクB推奨』

アーマーライノ。
サイのような姿をした巨大な魔獣で、その名の通り、全身が分厚い鎧のような外皮で覆われている。
生半可な攻撃は一切通用せず、その突進力は脅威そのもの。
Bランク冒険者にとっても、決して油断できない強敵だ。

「こいつだ」
アルトは、この強敵に挑戦することを決めた。
新しい盾「夜鏡」の防御力。
黒曜の剣の貫通力。
そして、4割へと成長し、さらに覚醒の兆しを見せるギフト【ダメージ反射】。
その全てをぶつけなければ、勝てない相手だろう。
これこそが、Bランク冒険者アルトとしての、最初の試練にふさわしい。

アルトは、依頼書を手に、カウンターへと向かう。
その足取りには、強敵への挑戦心を隠せない、確かな力がみなぎっていた。
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