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第十九話:魂の牢獄、そして聖なる光の反撃
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国王の寝室に響き渡った、漆黒のローブをまとった人物の嘲るような声。
その声の主は、自らを『黒き月の結社』の大導師と名乗り、フィリアとレオンハルト辺境伯、そして歴戦の騎士たちを前にしても、微塵の恐れも見せず、むしろ愉悦の色さえ浮かべていた。
「エルドラード国王の魂は、我が結社の新たなる時代の礎となるべく、今、聖なる儀式のために捧げられつつある。お前たちのような虫けらが、それを邪魔できると思うな。」
大導師が持つ黒水晶の杖が、禍々しい紫色の光を放つ。
その言葉と傲岸不遜な態度に、レオンハルトの怒りは頂点に達した。
「貴様ら外道に、エルドラードの魂を弄ばせるものか!フィリアの父君を返していただくぞ!」
レオンハルトは長剣を抜き放ち、雷光の如き速さで大導師へと斬りかかった。
騎士団長のゲルハルトも、雄叫びを上げて戦斧を振りかざし、それに続く。
「愚かな……。我が深淵の魔力の前に、ひれ伏すがよい!」
大導師は嘲笑し、黒水晶の杖を一振りする。
すると、彼の足元から漆黒の闇が奔流のように湧き出し、無数の鋭い棘となってレオンハルトたちに襲いかかった。
魔法と剣技が激しく交錯し、国王の寝室は一瞬にして壮絶な戦場と化した。
レオンハルトの剣技は冴え渡り、闇の棘を紙一重でかわし、あるいは力強く弾き返す。
ゲルハルトの戦斧は、闇の魔力を切り裂き、大導師へと肉薄しようとする。
しかし、大導師の魔力はあまりにも強大で、その身の周りには常に不可視の障壁が張られているかのように、決定的な一撃を与えることができない。
それどころか、闇の棘は予測不可能な動きで騎士たちを襲い、数名の屈強な騎士が、苦悶の声を上げてその場に倒れ伏した。
フィリアは、その激しい戦闘の傍ら、父であるエルドラード国王の元へと駆け寄った。
ベッドに横たわる父の体は氷のように冷たく、その顔には死相さえ浮かんでいるように見える。
しかし、フィリアがそっとその額に手を当てると、微かではあるが、まだ生命の温もりが残っているのを感じた。
そして、彼女の薬草師としての鋭敏な感覚が、父の体を取り巻く、異質で冷たい魔力の流れを捉えた。
(魂が完全に奪われたわけではない……何らかの呪縛によって、肉体と魂が無理やり引き離され、封じられているのだわ……!)
フィリアは、懐から取り出した聖なる香油、月光花と、その他数種類の浄化作用を持つ薬草から抽出した、彼女の祈りが込められた特製の香油を、父の額と胸にそっと塗り込んだ。
そして、かつて母から教わった、心を落ち着かせ、邪気を払うという古い子守唄を、小さな声で歌い始めた。
その歌声は、戦場の喧騒の中ではかき消されてしまいそうなほどか弱かったが、不思議なことに、その清らかな旋律は、国王の周囲に漂う禍々しい魔力を、少しずつではあるが中和していくかのように感じられた。
一方、王宮の別の場所では、セレスティアとアルフレッド元王子が、自分たちの浅はかな欲望の末路を迎えようとしていた。
大導師がレオンハルトたちと交戦している隙に、王宮の宝物庫から金銀財宝を可能な限り盗み出し、秘密の通路から逃亡しようと画策していたのだ。
「これで、私たちは安泰よ、アルフレッド様!エルドラードがどうなろうと、私たちには関係ないわ!」
セレスティアは、宝石の詰まった袋を抱え、甲高い笑い声を上げる。
「ああ、そうだとも、セレスティア。これだけの財産があれば、どこへ行っても贅沢に暮らせるさ。フィリアの追放も、王の病も、全ては我々のためにあったのだ!」
アルフレッドもまた、下卑た笑みを浮かべ、金貨の入った箱を小脇に抱えていた。
しかし、彼らがようやくたどり着いた秘密の通路の出口は、無情にも、ルシアンが手配した辺境伯軍の別動隊によって、既に固く封鎖されていた。
「……なっ!?」
二人は、目の前に立ちはだかる屈強な兵士たちの姿に、言葉を失った。
彼らの足元には、無残に散らばる金銀財宝。
その醜態は、まさに小悪党のようだった。
国王の寝室では、大導師とレオンハルトたちの戦いが、ますます激しさを増していた。
大導師が放つ闇の魔法は、部屋の調度品を破壊し、壁を焦がし、その威力は衰える気配がない。
レオンハルトもゲルハルトも、深手を負いながらも必死に食らいついていたが、徐々に劣勢へと追い込まれていく。
「もはやこれまでか、辺境伯よ!お前ごときが、我が『黒き月の結社』の野望を阻むことなどできぬのだ!」
大導師が高らかに勝利を宣言しようとした、その瞬間。
「……う……うぅ……」
ベッドの上で、エルドラード国王が、微かに呻き声を上げたのだ。
そして、フィリアが額に置いていた、亡き母の形見である小さな銀のアミュレットが、淡い、しかし温かい光を放ち始めた。
その光は、フィリアの子守唄と、聖なる香油の力と共鳴し、国王の魂を縛り付けていた闇の呪縛に、亀裂を生じさせた。
「な……何だと!?小娘め、何をした!?」
大導師の顔に、初めて焦りの色が浮かんだ。
国王の魂との繋がりが、一瞬揺らいだのだ。
それによって、彼の魔力制御にも、ほんのわずかな乱れが生じる。
フィリアは、その変化を見逃さなかった。
「レオンハルト様、今です!あの方の杖……あの黒水晶の杖が、おそらく魔力の源!そして、私のこの香油の香りを、極端に嫌っているようですわ!」
彼女は、残っていた香油の小瓶を、レオンハルトに向かって投げ渡した。
レオンハルトは、それを空中で見事に掴むと、迷うことなく小瓶の蓋を開け、その中身を自らの剣の刃に塗りつけた。
そして、渾身の力を込めて、大導師の持つ黒水晶の杖めがけて、最後の一撃を放った!
「おおおおおおっ!」
聖なる香りをまとった剣閃が、闇の魔力を切り裂き、黒水晶の杖に深々と突き刺さる。
バキィィィィンッ!!!
甲高い破壊音と共に、黒水晶の杖は無残に砕け散り、そこからおびただしい量の黒い煙が噴き出した。
「ぐあああああああっ!我が力が……我が魔力が……!」
大導師は、断末魔のような叫び声を上げ、その体は黒い煙と共に急速に萎んでいく。
時を同じくして、王宮の外から、辺境伯軍本隊の、天を衝くような鬨の声が、勝利のファンファーレのように響き渡ってきた。
城門はついに破られ、正義の軍勢が、雪崩を打って王宮内へと突入し始めたのだ。
大導師は、もはや抵抗する力も残っておらず、その場に崩れ落ちた。
しかし、その目はまだ死んではおらず、フィリアとレオンハルトを憎悪に満ちた表情で睨みつけていた。
「これで……終わりと思うなよ……小娘……辺境伯……。『黒き月の結社』の真の恐ろしさを……いずれ思い知るがいい……」
そう言い残すと、大導師の体は完全に黒い霧となって消え失せ、後には不気味な静寂だけが残った。
フィリアは、父のベッドへと駆け寄った。
国王は、まだ意識こそ戻らないものの、その顔色は先程よりも少しだけ良くなり、呼吸も穏やかになっているように見えた。
「父上……!」
彼女の目からは、安堵の涙が溢れていた。
レオンハルトは、深手を負った体を引きずりながらも、フィリアのそばへと歩み寄り、その肩を優しく支えた。
「……終わったな、フィリア。」
「はい……レオンハルト様……」
二人は、互いの無事を確かめ合うように、見つめ合った。
しかし、まだ全てが終わったわけではない。
国王の魂を完全に救い出し、エルドラード王国を真の闇から解放するための、最後の戦いが、まだ残されているのかもしれない。
そして、逃亡しようとしたセレスティアとアルフレッドの、あまりにも惨めな末路も……。
その声の主は、自らを『黒き月の結社』の大導師と名乗り、フィリアとレオンハルト辺境伯、そして歴戦の騎士たちを前にしても、微塵の恐れも見せず、むしろ愉悦の色さえ浮かべていた。
「エルドラード国王の魂は、我が結社の新たなる時代の礎となるべく、今、聖なる儀式のために捧げられつつある。お前たちのような虫けらが、それを邪魔できると思うな。」
大導師が持つ黒水晶の杖が、禍々しい紫色の光を放つ。
その言葉と傲岸不遜な態度に、レオンハルトの怒りは頂点に達した。
「貴様ら外道に、エルドラードの魂を弄ばせるものか!フィリアの父君を返していただくぞ!」
レオンハルトは長剣を抜き放ち、雷光の如き速さで大導師へと斬りかかった。
騎士団長のゲルハルトも、雄叫びを上げて戦斧を振りかざし、それに続く。
「愚かな……。我が深淵の魔力の前に、ひれ伏すがよい!」
大導師は嘲笑し、黒水晶の杖を一振りする。
すると、彼の足元から漆黒の闇が奔流のように湧き出し、無数の鋭い棘となってレオンハルトたちに襲いかかった。
魔法と剣技が激しく交錯し、国王の寝室は一瞬にして壮絶な戦場と化した。
レオンハルトの剣技は冴え渡り、闇の棘を紙一重でかわし、あるいは力強く弾き返す。
ゲルハルトの戦斧は、闇の魔力を切り裂き、大導師へと肉薄しようとする。
しかし、大導師の魔力はあまりにも強大で、その身の周りには常に不可視の障壁が張られているかのように、決定的な一撃を与えることができない。
それどころか、闇の棘は予測不可能な動きで騎士たちを襲い、数名の屈強な騎士が、苦悶の声を上げてその場に倒れ伏した。
フィリアは、その激しい戦闘の傍ら、父であるエルドラード国王の元へと駆け寄った。
ベッドに横たわる父の体は氷のように冷たく、その顔には死相さえ浮かんでいるように見える。
しかし、フィリアがそっとその額に手を当てると、微かではあるが、まだ生命の温もりが残っているのを感じた。
そして、彼女の薬草師としての鋭敏な感覚が、父の体を取り巻く、異質で冷たい魔力の流れを捉えた。
(魂が完全に奪われたわけではない……何らかの呪縛によって、肉体と魂が無理やり引き離され、封じられているのだわ……!)
フィリアは、懐から取り出した聖なる香油、月光花と、その他数種類の浄化作用を持つ薬草から抽出した、彼女の祈りが込められた特製の香油を、父の額と胸にそっと塗り込んだ。
そして、かつて母から教わった、心を落ち着かせ、邪気を払うという古い子守唄を、小さな声で歌い始めた。
その歌声は、戦場の喧騒の中ではかき消されてしまいそうなほどか弱かったが、不思議なことに、その清らかな旋律は、国王の周囲に漂う禍々しい魔力を、少しずつではあるが中和していくかのように感じられた。
一方、王宮の別の場所では、セレスティアとアルフレッド元王子が、自分たちの浅はかな欲望の末路を迎えようとしていた。
大導師がレオンハルトたちと交戦している隙に、王宮の宝物庫から金銀財宝を可能な限り盗み出し、秘密の通路から逃亡しようと画策していたのだ。
「これで、私たちは安泰よ、アルフレッド様!エルドラードがどうなろうと、私たちには関係ないわ!」
セレスティアは、宝石の詰まった袋を抱え、甲高い笑い声を上げる。
「ああ、そうだとも、セレスティア。これだけの財産があれば、どこへ行っても贅沢に暮らせるさ。フィリアの追放も、王の病も、全ては我々のためにあったのだ!」
アルフレッドもまた、下卑た笑みを浮かべ、金貨の入った箱を小脇に抱えていた。
しかし、彼らがようやくたどり着いた秘密の通路の出口は、無情にも、ルシアンが手配した辺境伯軍の別動隊によって、既に固く封鎖されていた。
「……なっ!?」
二人は、目の前に立ちはだかる屈強な兵士たちの姿に、言葉を失った。
彼らの足元には、無残に散らばる金銀財宝。
その醜態は、まさに小悪党のようだった。
国王の寝室では、大導師とレオンハルトたちの戦いが、ますます激しさを増していた。
大導師が放つ闇の魔法は、部屋の調度品を破壊し、壁を焦がし、その威力は衰える気配がない。
レオンハルトもゲルハルトも、深手を負いながらも必死に食らいついていたが、徐々に劣勢へと追い込まれていく。
「もはやこれまでか、辺境伯よ!お前ごときが、我が『黒き月の結社』の野望を阻むことなどできぬのだ!」
大導師が高らかに勝利を宣言しようとした、その瞬間。
「……う……うぅ……」
ベッドの上で、エルドラード国王が、微かに呻き声を上げたのだ。
そして、フィリアが額に置いていた、亡き母の形見である小さな銀のアミュレットが、淡い、しかし温かい光を放ち始めた。
その光は、フィリアの子守唄と、聖なる香油の力と共鳴し、国王の魂を縛り付けていた闇の呪縛に、亀裂を生じさせた。
「な……何だと!?小娘め、何をした!?」
大導師の顔に、初めて焦りの色が浮かんだ。
国王の魂との繋がりが、一瞬揺らいだのだ。
それによって、彼の魔力制御にも、ほんのわずかな乱れが生じる。
フィリアは、その変化を見逃さなかった。
「レオンハルト様、今です!あの方の杖……あの黒水晶の杖が、おそらく魔力の源!そして、私のこの香油の香りを、極端に嫌っているようですわ!」
彼女は、残っていた香油の小瓶を、レオンハルトに向かって投げ渡した。
レオンハルトは、それを空中で見事に掴むと、迷うことなく小瓶の蓋を開け、その中身を自らの剣の刃に塗りつけた。
そして、渾身の力を込めて、大導師の持つ黒水晶の杖めがけて、最後の一撃を放った!
「おおおおおおっ!」
聖なる香りをまとった剣閃が、闇の魔力を切り裂き、黒水晶の杖に深々と突き刺さる。
バキィィィィンッ!!!
甲高い破壊音と共に、黒水晶の杖は無残に砕け散り、そこからおびただしい量の黒い煙が噴き出した。
「ぐあああああああっ!我が力が……我が魔力が……!」
大導師は、断末魔のような叫び声を上げ、その体は黒い煙と共に急速に萎んでいく。
時を同じくして、王宮の外から、辺境伯軍本隊の、天を衝くような鬨の声が、勝利のファンファーレのように響き渡ってきた。
城門はついに破られ、正義の軍勢が、雪崩を打って王宮内へと突入し始めたのだ。
大導師は、もはや抵抗する力も残っておらず、その場に崩れ落ちた。
しかし、その目はまだ死んではおらず、フィリアとレオンハルトを憎悪に満ちた表情で睨みつけていた。
「これで……終わりと思うなよ……小娘……辺境伯……。『黒き月の結社』の真の恐ろしさを……いずれ思い知るがいい……」
そう言い残すと、大導師の体は完全に黒い霧となって消え失せ、後には不気味な静寂だけが残った。
フィリアは、父のベッドへと駆け寄った。
国王は、まだ意識こそ戻らないものの、その顔色は先程よりも少しだけ良くなり、呼吸も穏やかになっているように見えた。
「父上……!」
彼女の目からは、安堵の涙が溢れていた。
レオンハルトは、深手を負った体を引きずりながらも、フィリアのそばへと歩み寄り、その肩を優しく支えた。
「……終わったな、フィリア。」
「はい……レオンハルト様……」
二人は、互いの無事を確かめ合うように、見つめ合った。
しかし、まだ全てが終わったわけではない。
国王の魂を完全に救い出し、エルドラード王国を真の闇から解放するための、最後の戦いが、まだ残されているのかもしれない。
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