【完結】発明家アレンの異世界工房～元・商品開発部員の知識で村おこし始めました～

シマセイ

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エルミナ魔法王国編

第百二話：アークライトの死闘とピラミッドへの道

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灼熱の太陽が照りつける中、古代オアシス都市アークライトは、不気味な静寂と、天を覆う暗紫色の渦から放たれる邪悪なオーラに包まれていた。

アレンたち一行は、都市の外縁部に身を潜め、息を殺して突入の機会を窺う。

彼らの目の前には、風化した白い城壁と、その内側に広がる迷路のような街並み、そして中央にそびえ立つ巨大なピラミッド型の神殿。

そこが、「古き星の探求者」の首魁、「導師」が最後の儀式を行っている場所であった。

「斥候の報告によれば、正面の門は厳重に警備されている。
だが、あちらの南西の壁、以前の戦闘で一部が崩落した箇所があるようだ。
そこからなら、比較的少人数で潜入できるかもしれない」

グレイグ隊長が、アレンが作成したアークライトの簡易見取り図を指さしながら、作戦を説明する。

「よし、そこから行くぞ。
フィン、エリオットさん、君たちは僕のすぐ後ろに。
バルドさん、ハンスさん、そして兵士の方々は、僕たちを援護しつつ、後方の警戒を頼みます。
グレイグ隊長、全体の指揮をお願いします」

アレンの指示に、全員が力強く頷いた。
彼らの顔には、極度の緊張と、しかしそれ以上に、この戦いに全てを賭けるという悲壮な決意が浮かんでいる。

崩落した壁の隙間から、アレンたちは音もなくアークライトの市街地へと侵入した。

街の中は、まるでゴーストタウンのように人の気配がなく、ただ不気味な静寂と、ピラミッドから放たれる邪悪な波動だけが満ちている。
しかし、その静寂は長くは続かなかった。

「来たか、招かれざる客どもめ！」

曲がり角を抜けた瞬間、待ち伏せていたかのように、十数名の「古き星の探求者」の兵士たちが、黒曜石の武器を煌めかせながら襲いかかってきた。

「散開！アレン殿を守れ！」

バルドとハンスが、盾を構えてアレンの前に立ちはだかる。
フィンも剣を抜き放ち、敵の一人に斬りかかった。

狭い路地での乱戦。
敵は地の利を得ており、その連携も巧みであった。

「アレン、こいつら、動きが変だ！まるで人形みたいに……！」

フィンが、敵兵の異常なまでに統制の取れた、しかしどこか人間味のない動きに気づき、叫ぶ。
アレンもまた、彼らの瞳に宿る、狂信的で虚ろな光を見て、ある可能性に思い至った。

「まさか……導師の奴、捕らえた人々を操っているのか……！？」

もしそうだとすれば、彼らはもはや説得の通じる相手ではない。
アレンは、腰の仕掛け杖から衝撃波を放ち、フィンに襲いかかろうとしていた敵兵を吹き飛ばした。
そして、エリオットに合図を送る。

「エリオットさん、あの『閃光玉』を！」

エリオットは、アレンがこの日のために用意していた、強烈な光と音で敵の平衡感覚を奪う特殊なカプセルを、敵兵の集団の中心へと投げ込んだ。

閃光と轟音が炸裂し、敵兵たちは一瞬にして方向感覚を失い、その場にうずくまる。

「今だ！一気に突破するぞ！」

グレイグ隊長の号令一下、アルトリアの兵士たちが、その隙を突いて敵陣を切り裂き、ピラミッドへと続く道を開いた。

しかし、アークライトの街全体が、まるで巨大な罠のように、次々とアレンたちの行く手を阻む。

崩れかけた建物からの投石、地面に仕掛けられた鋭い棘、そしてどこからともなく現れる、導師によって操られたとおぼしき街の住人たちの襲撃。

「くそっ、これじゃキリがない！ピラミッドへ急ぐんだ！」

アレンは、歯噛みしながら叫んだ。
儀式を止めるためには、一刻も早く導師の元へたどり着かなければならない。

幾多の困難を乗り越え、一行はピラミッド型の神殿の麓へと到達した。
その巨大な建造物からは、もはや隠しようもないほどの強大な邪悪なエネルギーが、波動となって周囲に放たれている。

空の暗紫色の渦は、今やピラミッドの頂点と直結し、まるで天と地を繋ぐ巨大な竜巻のようであった。

そして、ピラミッドの頂上、祭壇らしき場所には、例の銀仮面いや、今はその仮面を外し、狂気に満ちた素顔を晒した導師の姿が見える。

彼の両手は天に掲げられ、その手の中には、黒曜石の箱「星の揺り籠」、と、そして王宮から盗み出された「星詠みの宝珠」が、禍々しい光を放っていた。

「間に合え……！」

アレンは、最後の力を振り絞り、ピラミッドへと続く急な石段を駆け上がり始めた。
フィンも、エリオットも、そして生き残った兵士たちも、その後に続く。

しかし、彼らの行く手を阻むかのように、ピラミッドの入り口を守るように配置されていた、二体の巨大な石像が、ゴゴゴゴという地響きと共に動き出したではないか。

それは、古代の魔法によって命を吹き込まれた、恐るべき守護ゴーレムであった。

「アレン！先に行け！こいつらは俺たちが引き受ける！」

フィンが、アレンの背中を押し、ゴーレムへと斬りかかっていく。
バルドとハンスも、残った兵士たちと共に、決死の覚悟で二体の巨像へと立ち向かった。

アレンは、一瞬ためらったが、仲間たちの覚悟を信じ、ただ一人、ピラミッドの頂上、導師が待つ儀式の場へと続く暗い通路へと駆け込んでいく。

その通路の奥からは、もはや人間のものとは思えない、おぞましい咆哮と、そして世界が軋むかのような不吉な音が響いてくる。
「厄災の主」の顕現は、もはや最終段階に入っている。

アレンの手に握られた「エネルギー照射装置」が、彼の決意に呼応するかのように、青白い光を放ち始めた。

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