【完結】望まれなかった代役婚ですが、投資で村を救っていたら旦那様に溺愛されました。

ivy

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第一章 兄の代役?望まれぬ結婚は誰も得しないのですが

16・邪魔者は去るのみです

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 両親から逃げるように庭に出たライネルは、花壇の側で見つめ合うアシュレイとアルヴェリオを見つけて、思わず草の陰に隠れた。

(あれ?どうして隠れちゃったんだろう)

 自然に花の話でもしながら近づけばよかったのに、まるで立ち聞きしているみたいに見えるじゃないか。そうは思ったが、今更出て行くのも不自然だ。

 仕方なくライネルは、彼らが場所を移動するまでと覚悟を決め、木の根元にうずくまった。

「僕のために盛大な結婚式をしてくれますよね?」

「……ああ、そうだな」

 その言葉にライネルの心臓は、ドクンと大きく波打つ

「じゃあやっぱり早くライネルを追い出さなきゃ」

「いや、ライネルの事は私に任せてくれ」

「いえ、そこまでアルヴェリオ様の手を煩わせるわけにはいきません」

 アシュレイは何かを企んでいるのか一歩も引かない。

(そっか、やっぱりアルヴェリオ様はアシュレイと婚姻を結び直すことにしたんだな)

 悲しくなんかない。二人を会わせれば、きっとこんな風にうまくいくって分かってた。

(アシュレイがアルヴェリオ様の良さに気づいたってことだもんね。喜ばしいことだよ。うん。でもこのままだと僕はアシュレイにとんでもない所に売られてしまいそうだ) 

 そう考えたライネルは自分で出て行こうと決めた。

 とにかく一度、男爵邸に戻り、荷物をまとめなくては。
 ライネルは急いで邸を出て、辻馬車乗り場に走った。


「おや!この前の坊っちゃんじゃないか。今日はどこへ行くんだい?」

 先日、初めてアルヴェリオの家に行く時、同じ馬車に乗り合わせたおばさんが今日も馬車を待っていた。

「男爵邸に帰るんです」

「あぁ嫁入りって言ってたね。今日は里帰りだったのかい?それにしても貴族様なのに、わざわざ辻馬車で移動するなんて変わってるね」

「うちは庶民派なんです」

 冗談とも本気ともつかのようなライネルの言葉に、おばさんはわははと笑った。

「でもこの前見た時よりずっと肌つやも良くなったし、髪も服もきれいにしてもらってる。安心したよ」

 見ず知らずの人が自分を心配してくれていたんだと知り、ライネルは心がふわりと暖かくなるのを感じた。

「はい、僕には過ぎた人でした。とても優しくてとても立派な人です」

「そうかい。そりゃあいい縁をもらったね。幸せになるんだよ。」

 ライネルが過去形で話していることに気づかなかったのか、おばさんはうんうんうなずいて、反対方向の馬車に乗って行ってしまった。

「幸せに……なれるのかなあ……いつかは」

 ライネルの声は誰にも届かず、枯葉と一緒に地面に落ちて崩れた。




 その後、一人で男爵邸に戻って来たライネルは、自分の部屋に戻ると鞄に荷物を詰め込んだ。……と言っても身一つでここへ来たのだ。来た時と同じ小さなカバン1つで屋敷を出て行く。

 その時、玄関で執事のレオポルドと出くわした。

「おや?ライネル様、いつのまにかお戻りに?旦那様は?」

「まだ侯爵邸です。あの、僕……今日でこちらをおいとますることになりました。今までありがとうございました」

 突然のライネルの別れの言葉に、レオポルドはびっくりして、片唾を飲んだ。
 けれど、そもそもライネルのことを気に入っていなかった彼にとって、これは大きなチャンスだ。

「そうでしたかこちらこそありがとうございます。どうぞお元気で」

「はいありがとうございます。そうだ。レオポルドさん男爵家の西の領地ってご存知ですか?」

「もちろん存じ上げておりますが、もしかしてそちらにいかれる予定ですか?」

「はい、人も少ないと聞いたので静かに過ごせるかと思いまして」

 どこに行こうかと考えたとき、一番最初に思いついたのはアルヴェリオが話してくれた寂れたた西の村だった。そこなら、侯爵家の手も届かないだろう。

「さすがに少し遠いですよ。よければ馬車を呼びましょうか?」

「あぁ……いえ、あまりお金もないので」

 それを聞いて、レオポルドはライネルが少し気の毒になった。

「辻馬車で良いのなら、私が手配して差し上げます。最後の餞別だと思っていただければ」

「本当にいいんですか?助かります。ありがとうございます!」

 まっすぐな目で自分に頭を下げるライネルを見て、レオポルトの胸は、チクリと痛む。だが、この家にとって、ライネルは邪魔者だ。レオポルドは急ぎ馬車を手配し、それにライネルを乗せた。

 別れの直前、ライネルがアルヴェリオ宛の手紙をレオポルドに託した。それは今、彼の手の中でくしゃりと丸められゴミと化している。

「悪く思わないでくださいライネル様。どうぞお幸せに」

 レオポルドは、そう言って、手の中のものを庭の隅に捨てた。






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