【完結】望まれなかった代役婚ですが、投資で村を救っていたら旦那様に溺愛されました。

ivy

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第二章 静かに暮らしたいだけだったのに

20・支援してもらいましょう!

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 こうしてライネルは、一か月をかけてすべての工房を見て回った。
 もともと何でも器用にこなせる性格のため、どこへ行っても重宝され、今では引く手あまたの状態だった。

 だが――ひとつ大きな問題があった。

 それは“財政難”。

 どこで働くにしても、ちゃんと給料を払える工房がない。
 村の職人たちは皆、腕は確かだが、金が回っていなかった。

 そのせいで、新しい商品を作る素材すら買えず、倉庫には古びたものばかりが積まれている。
 素材も出来栄えも一流なのに、誰も買わない。
 そんな在庫が山のように積み上がり、村中の倉庫が溢れ返っていた。

(どうにかできないだろうか……)

 考えても考えても、答えは出ない。
 所詮、前世の記憶がうっすら残っているだけの十五歳の少年だ。
 この村を救いたくても、何をどうすればいいのか分からない。

 ただひとつ救いなのは、村人同士の絆の強さだった。
 皆が仲良く、協力し合って生きている。
 もし何かいい策が見つかれば、きっと全員で手を貸してくれる――そう思えた。

「でもなあ……まずは生地や原石を買うお金なんだよなあ」

 昔は王都から貴族が直接注文を出しに来ていたらしい。
 だが、職人たちがあまりに頑固で、注文のたびに口論が絶えず、やがて誰も来なくなってしまった。

「腕は確かって、貴族たちも知ってるんですよね?」

 ライネルは、お茶を淹れてくれていたショーに尋ねた。

「そうだね。腕は認められてる。でも、頼んだ品と違う物を作られたら、どんなに出来が良くてもいらないだろ?」

「それは……確かに」

 なるほど、アルヴェリオがこの村に苦戦していた理由がよく分かった。
 けれど、せっかく来たのだから、少しでも役に立ちたい。

(何か……お金を作る方法はないだろうか)

 そう考えていた時、ふと前世の記憶がよぎった。

「ショーさん。もし貴族の支援を受けられたら、素材を買えるんじゃないですか?」

「そりゃそうだけど、無理だろうな」
 
 ショーは苦笑した。

「どうしてですか?」

「支援するって貴族も昔はいたんだ。でも職人たちが工房を乗っ取られるんじゃないかって警戒して追い返してしまった」

「なるほど」

「それに支援を受けるには、それ相応の“商品”を渡さなきゃいけない。でも倉庫にあるのは、流行遅れの宝石やドレスばかりだ。そんなもの誰も欲しがらないし、買い手がついても、どうせ二束三文だろ?」

「そうなんですよ。……でも、もし“商品”じゃなくて、“工房そのもの”を買ってもらえるとしたら?」

「工房を売るってことか?」

「いえ。売るのは工房じゃなく、“技術と未来”です」

「未来?」

 ライネルは、前世の知識を思い出しながらゆっくりと説明した。

「“現物株投資”っていう仕組みを使います。――簡単に言うと、信じて応援してくれる人に“希望の証”を買ってもらうんです」

「希望の証?」

「はい。“この工房はこれから伸びますよ”っていう約束のカードです。そのカードを買ってもらったお金で素材を買い、新しい商品を作る。うまくいけば、工房は大きくなりますよね?」

「……なるほど。それで?」

「商品が売れたら、支援してくれた人に“お礼”として利益の一部を分けるんです。買ってくれた人が増えれば増えるほど、工房も大きく立派になり、みんなが得をする仕組みです」

「……なんか、面白いなそれ」

「でしょ? 王都の貴族たちはこういうのが大好きなんです。“見る目がある”って言われたいですから。職人たちにしても複数人の支援であれば、乗っ取られるなんて思わなくて済むでしょう?」

 ショーは腕を組んで考え込んだ。

「それにそれが成功すれば、貴族たちが勝手に宣伝してくれるってことか」

「そうです。貴族の口から“あの村の工房は儲かる”って広まれば、王都中が動きますよ」

「確かにやってみる価値はある。どちらにしてもこのままじゃこの村は衰退するからな」

「はい!早速皆さんに集まってもらって説明会を開きましょう!」

(これなら……この村を救えるかもしれない!)

 ライネルは早速、計画を立てようとペンを手に持つ。

「……ライネル」

「はい?」

「その前に話があるんだ」

 ショーは真剣な顔でライネルに向き直り、その手を取った。
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