27 / 117
第24話 三角関係?
しおりを挟む「今日からミネルヴァの『お母さま』はこの人ですよ!」
ルーテはそう言って、孤児院の玄関口で待ち構えていたシスターのことをミネルヴァに紹介した。
「お母さまが二人に増えたです!」
「僕のことはカウントしないでください」
その様子を見て、シスターは頭を抱える。
「ルーテ……あなたは一体どこから子供達を連れて来ているのですか……?」
「色々なところで偶然出会ってしまうんです!」
「やはり……この子は神からの寵愛を受けているのでしょうか……? そして、私には神からの試練が与えられている……?」
こうして、シスターの悩みと孤児院の家族が増えたのだった。
*
――それから数日後。
「今日こそ本当の本当にお金を稼ぎます!」
指南書から【解剖】のスキルを習得したルーテは、孤児院にある図書室を飛び出して言った。
今日は雨が降っている為、暇を持て余した子供達が廊下で玩具を使って遊んでいる。
そんな中、ルーテに気付いて近づいてくる一人の少女の姿があった。
「どこ行くですか? ミネルヴァも連れて行くです!」
「くっ…………!」
「なんですかその反応は!」
ルーテは、毎日ほぼ一日中ミネルヴァに付きまとわれる生活を送っている。
毎朝目覚めるといつの間にかベッドの中へ忍び込んでいたミネルヴァが隣に居て、ウォーキング読書中も常に後ろから追いかけられ、食事中は膝の上に座って来ようとし、挙句の果てに風呂の中にまで侵入してくることもあった。
(流石はラスボス……日常生活でも僕のHPを的確に削って来ます……!)
ここに来て最大のピンチに陥るルーテ。
「……ええとですね、僕は用事があるので、ミネルヴァはあっちで遊んでいてください」
「いやなのです」
ミネルヴァは、ぶんぶんと首を振る。
「ミネルヴァはママに付いて行くです!」
「その呼び方はやめて下さい」
「でも……新しいお母さまを『お母さま』と呼んでいるから、お前に対する呼び方がないのです……」
「ルーテでいいでしょう」
「………………確かにそうなのです。ママは頭が良いのです!」
笑顔でそう言うミネルヴァを見て、ルーテは肩を落とした。
(そもそも、仲間キャラが後ろから付いてくる仕様はこのゲームに存在していなかったはずなのですが……)
そして、心の中でそんなことを考える。
――しかし、そんなミネルヴァにも弱点があった。
「聞こえたわよ二人とも。こんな雨の日に一体どこへ行くつもり?」
「…………!」
そう声をかけて来たのは、イリアである。
「ああ、今日も可愛いわねミネルヴァ」
彼女はミネルヴァを後ろから抱きしめ、ゆっくりと頬ずりした。
「や、やめるです……! 離すです……!」
「おとといくらいまではあんなに喜んでくれたのに……反抗期というやつかしら。成長が早いわね……」
「い、イリアはミネルヴァに抱きつきすぎなのですっ!」
「前みたいにママとも呼んでくれないだなんて……悲しいわ……」
「お前をママと呼ぶと一日中離してくれないから怖いのです。ミネルヴァはちゃんと相手を見ているのですよ!」
顔を真っ赤にして叫ぶミネルヴァ。それは照れ隠しでもあり、本心でもあった。
イリアの愛情は重すぎるのである。
「た、助かりましたイリア! ミネルヴァのことをよろしくお願いします!」
「――私はあなたにも聞いているのよルーテ」
「…………え?」
言いながらルーテの腕を掴み、じっと目を見つめるイリア。
「……いつもそうだわ。あなたはちょっと目を離した隙に勝手にいなくなってしまうの。――私はいつも一緒に居たいのに……!」
「思わぬ伏兵が居ました……!」
後ずさるルーテ。
「あのね。私はあなたが知っていることを話してくれて嬉しかったわ。……少しだけ、るーちゃんがどうして危ないことをするのか分かった気がしたから。あなたは――強くなってみんなを守ろうとしてくれていたのよね?」
(僕は単純にレベル上げを楽しんでいるだけなのですが……)
心の中でそう呟くルーテだったが、ここで言うと好感度が下がってしまいそうだったので踏みとどまる。
「でも私……守られるだけなんて嫌よ。せっかく魔法を覚えて強くなったんだもの。――だから、私にあなたのことを守らせて? るーちゃん」
「ミネルヴァはママ――じゃなくてルーテに守って欲しいのです」
ルーテは、母性をぶつけられながら母性を求められていた。
板挟み状態である。
「…………分かりました。それなら、二人には僕の金策に付き合ってもらいます! 人手が多い方が効率よく稼げるので!」
「お金稼ぎをするの……?」
「はい。この孤児院を防衛する為にはもっとお金が必要なんです! ――今からマリネリス大峡谷へ行きましょう!」
かくして、三人パーティでの金策が始まったのだった。
*
一方、その頃。
「……なあゾラ」
「どうしたんだよマルス?」
「なんで俺達だけ『まりょくせいぎょ?』の勉強をさせられてるんだ?」
「…………廊下を走り回ったから?」
「やっぱりそれだよなぁ……」
「まあ、単純にボク達がバカだからって可能性もあるけどね」
「いや、それはお前だけだ。俺はこう見えても賢い」
「あ?」
「……すみませんでした」
ルーテが出て行った図書室では、ゾラとマルスが居残りで勉強をさせられていた。
「二人とも、私の話をちゃんと聞いていますか?」
「ご、ごめんなさいっ!」
「お願いですから……雨の日に遊びで雲に向かって雷魔法を撃つのはやめて下さい……しょっちゅう孤児院の周りに雷が落ちるので村の人達が怖がっています……」
シスターの言葉を聞いた二人は、同時に「それかー」と納得する。
「あんな魔法を教えたのは……やはりルーテなのでしょうか……」
シスターの悩みは尽きない。
0
あなたにおすすめの小説
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?
嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】
ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。
見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。
大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!
神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。
「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」
俺の好きな人は勇者の母で俺の姉さん! パーティ追放から始まる新しい生活
石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。
ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。
だから、ただ見せつけられても困るだけだった。
何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。
この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。
勿論ヒロインもチートはありません。
他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。
1~2話は何時もの使いまわし。
亀更新になるかも知れません。
他の作品を書く段階で、考えてついたヒロインをメインに純愛で書いていこうと思います。
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる