転生ゲーマーは死亡確定のサブキャラから成り上がる~最序盤で魔物に食い殺されるキャラに転生したので、レベルの暴力で全てを解決します~

おさない

文字の大きさ
53 / 117

第46話 先手必勝

しおりを挟む

「すまんの、花丸ちゃんや。戻るのが遅くなってしまったわい」
「私の方も戻りました。二度とその名前で呼ばないでください」
「――――へ?」

 レオ・オクルスが消失してから程なくして、老人は地割れの調査から帰還した。

 話によると、そこから湧き出した魔物の対処に少し手こずってしまったらしい。

「怪しい人影があったんじゃが……魔物の討伐を優先したので取り逃がしてしまったわい。――面妖な黒い衣服に身を包んだ、赤い瞳の男じゃ。もし見かけても近寄ったらいかんぞ」
「は、はい! 気を付けます」
「………………?」
「ええと……私の方は、ルーテ達の協力で服が脱げたこと以外、特になにもありませんでした!」

 そう言って誤魔化す明丸。

 老人が話しているのは明らかにレオ・オクルスのことだったが、木刀を勝手に使ってタコ殴りにした後ろめたさがあったので、黙っておくことにしたのである。

「明丸……何かすごいこっちのこと睨んできてない……?」
「たぶん、あんかけレタスの奴について話すなってことだと思うぜ」
「あんこレタスだろ?」
「そうそれ。じーさん、魔物相手でも弱いものいじめとかしたら怒りそうだもんな。……特に、喜んで蹴りまくってたお前とかやばそう」
「よし! 絶対に黙っておこう!」

 ゾラとマルスも、彼の意図をくみ取った。

 三人はルーテにそそのかされ、順調に悪ガキの道を進みつつある。

「ところでじーさん。魔物が出てくる地割れって……大丈夫なのかよ?」

 それから、マルスは少し遠くに居る老人に大きめの声で問いかけた。

「安心せい。地割れは寺の僧どもが清めたから問題ないぞい。魔物もこれで鎮まるはずじゃ」

 どうやら規模としては小さく、大事には至らなかったそうだ。

 おそらく、今回のような「前兆」が世界各地で起こり始めるだろう。

 明丸は、老人にルーテが見た「未来」についての事だけ話し、警戒が必要であると伝えた。

「なるほどのう。あやつにそんな神通力が……。他とは違うと思っておったが……驚きじゃわい」
「うぅっ……ひっぐ……ぐす……ひっひっひっ……!」
「ところで……どうしてあやつは泣いておるのじゃ?」

 首を傾げる老人。

「…………さあ?」

 言い訳が思いつかなかった明丸は、しらを切ることにした。

「……さてと、俺たちは帰った方が良さそうだな」
「そうだね。――ほら、帰るよルーテ。立てる?」
「ぐすっ……だいじょうぶでず……っ」

 ――その後、マルスとゾラは、絶望に打ちひしがるのルーテを連れて夜の孤児院へ帰還するのだった。

 *

 翌日のルーテは、魂が抜けたように意気消沈していた。

 朝食を食べ終わった後も食堂に残り、虚な表情で窓の外を眺めている。

「る、るーちゃん……大丈夫……?」

 そんな彼に事情を知らないイリアが近づき、心配そうに問いかけた。

「……え? はい……僕は……大丈夫です」

 一方、ルーテはそう返事をして無理やり笑顔をつくる。

「…………っ!」

 あまりにも痛々しいその姿に、イリアは思わず唇を噛み締めた。

「……何があったのかは聞かないわ。辛かったらいつでも私を頼って……っ!」
「ありがとうございます、イリア」
「うぅ……るーちゃんっ!」
「わ」

 耐えきれなくなり、とうとうルーテの事を抱きしめるイリア。

「辛かったら泣いていいの……っ! あなたは……そういうの我慢しちゃう子だと思うから……っ!」
「大丈夫です。……もう、沢山泣きましたから……」
「………………っ! るーちゃあああああんっ!」

 経験値を逃しただけで彼がこんな事になっているとは、微塵も思っていなかった。

「まったく……イリアが泣いてどうするのですか? ……でも、ありがとうございます。お陰で少し立ち直れました」
「ぐすっ……無理しないでね……っ!」
「分かっています。……けど、早くしないと」
「え……?」

 *
 
 そして、更に翌日。

「…………!」

 早朝、ルーテは突如として起き上がった。

 そして、ふらふらとした足取りで部屋を抜け出し、孤児院の外へ出る。

 その日は雨が降っていた。

「……今日も……いいグラフィックです」

 外の様子を眺めて、ルーテは感情を失った瞳で呟く。

「早く……早く経験値にしないと……!」

 ――彼はある狂気的な考えに取り憑かれていた。

(他の紅蝠血ヴェスペルティリオも、もたもたしていると消えてしまうかもしれません……急いで仕留めないと……! 早く早く早く……!)

 倒そうとした敵がいきなり消失するという体験は、彼にとってそれだけ衝撃的な出来事だったのである。

(まずは……ピリエラウアです。おそらく……レオ・オクルスの後釜として序列八位に任命されるのでしょう。……つまり、紅蝠血ヴェスペルティリオの中では一番新入りで倒しやすい……! だから、先手を打って経験値にします……!)

 ピリエラウアは、原作だとエリュシオンに存在する「アンタレス崇拝教団本部」で交戦することになる。

 そこに手がかりがあると考えたルーテは、アレスノヴァを起動し、砂漠の国『エリュシオン』へ単独でワープするのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?

嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】  ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。  見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。  大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!  神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。 「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」

俺の好きな人は勇者の母で俺の姉さん! パーティ追放から始まる新しい生活

石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。 ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。 だから、ただ見せつけられても困るだけだった。 何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。 この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。 勿論ヒロインもチートはありません。 他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。 1~2話は何時もの使いまわし。 亀更新になるかも知れません。 他の作品を書く段階で、考えてついたヒロインをメインに純愛で書いていこうと思います。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

処理中です...