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第54話 がんばれシスター
しおりを挟む主にルーテとシャーディヤの活躍でビュレトは消滅し、反抗的な信者は教団内にある牢屋へとぶち込まれた。
「攫われていた人はこれで全員か……」
一方バシリアは、囚われていた人々を助け出し、地下一階にある広間へと避難させた。
「応援を呼んでくるので、皆さんはここで待機していて下さい。――ルーテとシャーディヤ、お前達も勝手に動いてはいけないぞ! この人たちは魔物じゃないからな!」
「分かってるわよそんなこと……私を何だと思ってるの……?」
シャーディヤはイライラした様子で呟く。
「バシリアさんは面白いですね!」
ルーテは、彼女が念を押した原因が自分にあるとは微塵も思っていなかった。
「すぐに戻って来るから、大人しくしているんだぞ!」
更に念を押して、その場を後にするバシリア。
「さてと……帰りましょう!」
しかし、常に時間と戦っているルーテには、その場で待機している暇などない。
「早く戻らないと、また外出禁止にされてしまいます!」
ルーテは、バシリアが居なくなった瞬間に立ち上がってその場から抜け出した。
そして、階段で地下二階へと降り、一番近くの小部屋へ入る。
そこは物置になっていて、教団の儀式で使用されていたと思しき怪しげな道具が、箱の中に詰め込まれていた。
「……よし、誰も居ませんよね!」
ルーテは、部屋の中をざっと見回して人が居ないことを確認し、アレスノヴァを起動させる。
――しかしその時。
「かくれててごめんなさいっ!」
レアが近くの箱から飛び出して言った。
「に、にげてごめんなさいっ!」
続いて、ノアも同じ場所から飛び出す。
「ノアにひどいことしないでっ!」
「レアにもしないでくださいっ!」
箱の中に隠れていた二人は、ルーテの言葉を脅迫と勘違いして姿を現したのだ。
「えっ?! は、早く部屋から出て行ってくださいっ!」
ルーテが叫んだ次の瞬間、アレスノヴァの準備が完了する。
こうして、レアとノアの二人は、転移に巻き込まれてしまうのだった。
――教団を壊滅させ、行方不明になった人々を救い、そして忽然と姿を消したルーテ。
彼の存在は、英雄バシリアと賢者シャーディヤを助けた伝説の精霊としてこの地で語り継がれることになるが、それはまた別の話である。
*
一方、予想外の事故によりレアとノアを連れて帰還してしまったルーテは、慌てふためいていた。
「ど、どうしましょう? いや、これは始末するチャンスなのでは……? で、でも、ゾラやミネルヴァの時と同じパターンのような気もします……!」
そんな彼に、双子が問いかける。
「こ、ここはどこなの?」
「ぼくたちは……何をされるの? 」
二人は、互いの体を抱きしめ合って震えていた。
「元々は経験値にするつもりだったのですが……仕方がありません。とりあえず、あなた達は孤児院に連れて行きます」
「こ、こじいん……?」
首を傾げるレア。
「身寄りのない子供達が集まって、先生と一緒に暮らしている場所です」
「また……ぼくたちのことを閉じ込めるの……?」
「悪い事をしたらしばらく外出禁止になりますが……先生は基本的に自由にさせてくれますよ!」
ルーテはそう説明しながら双子の方へ近づいていく。
「いやっ、こないでっ!」
「レアには何もしないでください……!」
「の、ノアにも何もしちゃだめ! いじめたらゆるさないもん!」
しかし、完璧に拒絶された。
(二人からの好感度が悲惨なことになっています……)
その様子を見たルーテは、説得不可能と判断する。
「仕方がありません。心を開いてもらうのは先生に任せましょう」
ルーテはそう呟き、怯える双子に手をかざした。
「ごめんね……レア……っ!」
「だいじょうぶ……あっちでもいっしょだよ……ノア……っ!」
自分達の死を悟ったノアとレアは、ぎゅっと目をつぶって終わりの時を待つ。
「眠りへと誘え、ドルミーレ」
ルーテはそんな二人を躊躇いなく眠らせ、両脇に抱えて遺跡を出るのだった。
「すー、すー」「むにゃむにゃ……」
「ふ、二人同時は重いです……!」
眠らせたことを少しだけ後悔しつつ、朝食の準備をしている孤児院へ帰還するルーテ。
「ただいま戻りました先生!」
「あら、お帰りなさいルー……テ……」
双子を連れて帰って来た彼を見て、シスターが頭を抱えたことは言うまでもない。
「ま、またなのですか……? またなのですね……! しかも二人……!」
「僕は怖がられてしまったので、先生がこの子達の心を開いてください!」
「そ、その子達は一体どんな心の傷を抱えているのですか……? 私が導かなければ、将来はどんな風になってしまうのですか? ――あなたが何を見たのか教えてください、ルーテ……」
額に手を当て、そう問いかけるシスター。
「人殺しの双子です! 二人で仲良く人を殺したり、キスして返り血を舐め合ったり、合体したりしていました!」
「おお、神よッ!」
――彼女の受難は続く。
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