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29.亀狩り
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カンガルーもどきがもう一発、亀の前脚アタックを喰らって吹き飛んだところで参戦する。
「ギンロウ。甲羅は傷つけないようにしたい。頭のみ狙えるか?」
「わおん!」
「ロッソ、こっちに」
『後でフルーツ』
苦笑いしながら頷きを返すと、肩をつたって降りてきたロッソが俺の手の平に乗る。
それを合図としてギンロウが前脚に力を入れ藪を突き抜けた。
一気に速度を増したギンロウの周囲にパラパラと氷の粒が浮かび上がり始める。
ギンロウのダイヤモンドダストは、対象を極低温でカチンコチンに固めることができるんだ。
「うおんー」
亀の前に躍り出たギンロウが高く飛び上がり、両前脚を亀の顔に向けて振るった。
キイイインと澄んだ音がして、亀の顔に霜が降りたのが見て取れる。
「ロッソ。今だ!」
頭の中で思い描いた図をロッソに向けたら、彼の体から白い煙があがり――弓に変化した。
弦を引き絞ると光の矢が出現する。
動きを止めた亀の首元に狙いを定め……弦を掴んだ手を離す。
その瞬間、光の矢が音も立てずに飛翔し狙った場所に寸分たがわず突き刺さる。
元々ギンロウのダイヤモンドダストでかっちこちに凍っていたこともあり、亀の首から先がバラバラになって崩れ落ちた。
矢だから、点の衝撃のはずなんだけど、こうもバラバラになるとは……指先で突っつくだけでも同じことになったかもしれない。
「くああ」
倒れ伏した亀の甲羅の上にファイアバードが舞い降りる。
ツンツンと甲羅を突っついていたが、飽きたのかすぐに俺のリュックまで戻ってきた。
「奇襲成功。ははは。あ……」
大木に背中を叩きつけられてぐったりしていたカンガルーもどきがゆらりと立ち上がる。
奴はゆっくりと一歩、また一歩、こちらににじり寄ってきた。
「ま、まあ。落ち着け。獲物を横取りしたわけじゃあないんだ。そ、そうだ山分けしよう。な」
まだ諦めていない様子のカンガルーだったが、彼が飛ばされた後に大きな隙ができたんだ。
なので、このタイミングかなあと……。
『パネエッス!』
カンガルーが両手を開き、叫ぶ。
こ、こいつ喋ることができるんだ……。
「亀の肉を一緒に食べようか」
『パネエッス! 弟子にして欲しいっす!』
「え、ええと。弟子じゃなくて、仲間か相棒なら」
『お願いしまっす! 自分、修行のためグランドタートルに挑んだのですが、力不足でした。兄貴のお力御見それしましたっす!』
「俺というよりはロッソとギンロウだけどな」
『ロッソ兄、ギンロウ兄、お二人とも素晴らしかったっす! 自分、感動したっす!』
な、なんか少し暑苦しい。
だけどまあ、ついてくるというのなら大歓迎だ。モフモフしているし。
「俺はノエル。ついてくるのは構わないけど、一つだけお願いがある」
『自分はヨッシーっす! 何でも言ってくださいっす!』
「ヨッシー。君をもふ……頭か背中を撫でさせて欲しい」
『そんなことでいいんっすか。自分に乗ってくれてもいいっすよ!』
「え、乗る……」
『はいっす! 兄貴を背に乗せて疾駆する。感動っす!』
ほ、ほう。騎乗できるのか。
体格的には確かに人間を乗せても大丈夫そうだけど……。
ダチョウよりも大きいし、がっしりしている。太ももの筋肉ははち切れそうなほどだし。
背中もずんぐりとしていて、背筋が凄そうだ。
だけど、さっき叩きつけられたからか後脚の爪と前脚の爪が一部欠けている。
ちょうどいい。ギンロウの爪も傷んできているし、ファイアバードにもと思っていたから。
「ロッソ、亀の甲羅って硬いよな」
『オレに聞くナ』
「だよな。試してみるか」
手持ちのハンマーとノミで甲羅を叩いてみたけどビクともしない。
少なくとも鉄じゃあ全く傷つかないな。
硬度の確認はできた。これを素材にして全員の爪を新調しようじゃあないか。
え? 手持ちの道具じゃあ素材を切り分けることさえできないじゃないかって?
でも大丈夫。装蹄師スキルだからね。
「まずはギンロウからだ」
「はっは」
両前脚を揃えて舌を出すギンロウの頭を撫で、目をつぶった。
彼の足に綺麗に揃った爪が伸びていることを思い浮かべ……魔力を体内に巡らせる。
「我が想いに応じ、形を変えよ」
力ある言葉に応じ、魔力が亀の甲羅に注ぎ込まれ、甲羅の一部が分離した。
分離した甲羅の欠片はみるみる形を変えていく。
そして、甲羅の欠片はギンロウの足にぴったりの四本の爪に別れたのだった。
「ギンロウ。爪をつけるぞー」
「わおん」
さっそく今まで使っていた爪と亀の甲羅製の爪を取り換えてやる。
続いて、ロッソ、そしてカンガルーもどきのヨッシーかな。
◇◇◇
「よおし、これで全員だ」
中々大人しくしてくれなかったファイアバードに爪を装着し、全員分の爪装備が完了する。
『すごいっす! この爪すごいっす! ノエルの兄貴はやっぱパネエッス!』
ヨッシーは爪の調子を確かめるように軽く跳躍したつもりだったみたいだけど、五メートルほど上空まで飛び上がっていた。
お、一つ忘れていた。せっかく魔道具があることだし、調べておこう。
『名前:ヨッシー
種族:プロプレオプス
獣魔ランク:C+
体調:良好
状態:ノエルを尊敬している』
聞いたことのない種族だな。俺の中では大きいカンガルーとでもしておこうか。
「足の肉を頂くとしようか。甲羅は一部だけ取りたい。ロッソ、手伝ってもらえるか」
『フルーツ』
「この後、探しに行くから、さ」
『分かっタ』
ロッソの変化で甲羅の一部を切り取って、リュックに仕舞い込む。
持ち物に余裕があったら、帰りにここへ寄ってもう少し持って帰るとするか。
珍しい素材かもしれないし、エルナンにも持って帰りたいところ。
あ、ラズライトも欲しがるかな?
そのまま食事にしたかったが、肉を切り分けたところでロッソが我慢の限界を迎え急ぎフルーツを探すこととなった。
俺たちだけ食べるわけにもいかないものな。食事はみんな揃って……しかし、ぐうぐうと俺の腹が主張してくるがまだ我慢だ!
ギンロウだってロッソだって同じようにお腹を空かせているのだから。
「ギンロウ。甲羅は傷つけないようにしたい。頭のみ狙えるか?」
「わおん!」
「ロッソ、こっちに」
『後でフルーツ』
苦笑いしながら頷きを返すと、肩をつたって降りてきたロッソが俺の手の平に乗る。
それを合図としてギンロウが前脚に力を入れ藪を突き抜けた。
一気に速度を増したギンロウの周囲にパラパラと氷の粒が浮かび上がり始める。
ギンロウのダイヤモンドダストは、対象を極低温でカチンコチンに固めることができるんだ。
「うおんー」
亀の前に躍り出たギンロウが高く飛び上がり、両前脚を亀の顔に向けて振るった。
キイイインと澄んだ音がして、亀の顔に霜が降りたのが見て取れる。
「ロッソ。今だ!」
頭の中で思い描いた図をロッソに向けたら、彼の体から白い煙があがり――弓に変化した。
弦を引き絞ると光の矢が出現する。
動きを止めた亀の首元に狙いを定め……弦を掴んだ手を離す。
その瞬間、光の矢が音も立てずに飛翔し狙った場所に寸分たがわず突き刺さる。
元々ギンロウのダイヤモンドダストでかっちこちに凍っていたこともあり、亀の首から先がバラバラになって崩れ落ちた。
矢だから、点の衝撃のはずなんだけど、こうもバラバラになるとは……指先で突っつくだけでも同じことになったかもしれない。
「くああ」
倒れ伏した亀の甲羅の上にファイアバードが舞い降りる。
ツンツンと甲羅を突っついていたが、飽きたのかすぐに俺のリュックまで戻ってきた。
「奇襲成功。ははは。あ……」
大木に背中を叩きつけられてぐったりしていたカンガルーもどきがゆらりと立ち上がる。
奴はゆっくりと一歩、また一歩、こちらににじり寄ってきた。
「ま、まあ。落ち着け。獲物を横取りしたわけじゃあないんだ。そ、そうだ山分けしよう。な」
まだ諦めていない様子のカンガルーだったが、彼が飛ばされた後に大きな隙ができたんだ。
なので、このタイミングかなあと……。
『パネエッス!』
カンガルーが両手を開き、叫ぶ。
こ、こいつ喋ることができるんだ……。
「亀の肉を一緒に食べようか」
『パネエッス! 弟子にして欲しいっす!』
「え、ええと。弟子じゃなくて、仲間か相棒なら」
『お願いしまっす! 自分、修行のためグランドタートルに挑んだのですが、力不足でした。兄貴のお力御見それしましたっす!』
「俺というよりはロッソとギンロウだけどな」
『ロッソ兄、ギンロウ兄、お二人とも素晴らしかったっす! 自分、感動したっす!』
な、なんか少し暑苦しい。
だけどまあ、ついてくるというのなら大歓迎だ。モフモフしているし。
「俺はノエル。ついてくるのは構わないけど、一つだけお願いがある」
『自分はヨッシーっす! 何でも言ってくださいっす!』
「ヨッシー。君をもふ……頭か背中を撫でさせて欲しい」
『そんなことでいいんっすか。自分に乗ってくれてもいいっすよ!』
「え、乗る……」
『はいっす! 兄貴を背に乗せて疾駆する。感動っす!』
ほ、ほう。騎乗できるのか。
体格的には確かに人間を乗せても大丈夫そうだけど……。
ダチョウよりも大きいし、がっしりしている。太ももの筋肉ははち切れそうなほどだし。
背中もずんぐりとしていて、背筋が凄そうだ。
だけど、さっき叩きつけられたからか後脚の爪と前脚の爪が一部欠けている。
ちょうどいい。ギンロウの爪も傷んできているし、ファイアバードにもと思っていたから。
「ロッソ、亀の甲羅って硬いよな」
『オレに聞くナ』
「だよな。試してみるか」
手持ちのハンマーとノミで甲羅を叩いてみたけどビクともしない。
少なくとも鉄じゃあ全く傷つかないな。
硬度の確認はできた。これを素材にして全員の爪を新調しようじゃあないか。
え? 手持ちの道具じゃあ素材を切り分けることさえできないじゃないかって?
でも大丈夫。装蹄師スキルだからね。
「まずはギンロウからだ」
「はっは」
両前脚を揃えて舌を出すギンロウの頭を撫で、目をつぶった。
彼の足に綺麗に揃った爪が伸びていることを思い浮かべ……魔力を体内に巡らせる。
「我が想いに応じ、形を変えよ」
力ある言葉に応じ、魔力が亀の甲羅に注ぎ込まれ、甲羅の一部が分離した。
分離した甲羅の欠片はみるみる形を変えていく。
そして、甲羅の欠片はギンロウの足にぴったりの四本の爪に別れたのだった。
「ギンロウ。爪をつけるぞー」
「わおん」
さっそく今まで使っていた爪と亀の甲羅製の爪を取り換えてやる。
続いて、ロッソ、そしてカンガルーもどきのヨッシーかな。
◇◇◇
「よおし、これで全員だ」
中々大人しくしてくれなかったファイアバードに爪を装着し、全員分の爪装備が完了する。
『すごいっす! この爪すごいっす! ノエルの兄貴はやっぱパネエッス!』
ヨッシーは爪の調子を確かめるように軽く跳躍したつもりだったみたいだけど、五メートルほど上空まで飛び上がっていた。
お、一つ忘れていた。せっかく魔道具があることだし、調べておこう。
『名前:ヨッシー
種族:プロプレオプス
獣魔ランク:C+
体調:良好
状態:ノエルを尊敬している』
聞いたことのない種族だな。俺の中では大きいカンガルーとでもしておこうか。
「足の肉を頂くとしようか。甲羅は一部だけ取りたい。ロッソ、手伝ってもらえるか」
『フルーツ』
「この後、探しに行くから、さ」
『分かっタ』
ロッソの変化で甲羅の一部を切り取って、リュックに仕舞い込む。
持ち物に余裕があったら、帰りにここへ寄ってもう少し持って帰るとするか。
珍しい素材かもしれないし、エルナンにも持って帰りたいところ。
あ、ラズライトも欲しがるかな?
そのまま食事にしたかったが、肉を切り分けたところでロッソが我慢の限界を迎え急ぎフルーツを探すこととなった。
俺たちだけ食べるわけにもいかないものな。食事はみんな揃って……しかし、ぐうぐうと俺の腹が主張してくるがまだ我慢だ!
ギンロウだってロッソだって同じようにお腹を空かせているのだから。
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