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あの夜の続きを
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裏庭に出たところで、イザベラが息を荒げながら問う。
「どうしてわかったの?」
「君の調合記録を調べた。香料の出荷ルートが改ざんされていた」
「そんな……」
カイルの顔には焦燥が浮かんでいた。
「バルトは君を陥れるつもりだった。
“毒入り香水”の罪を着せ、商会を潰す気だ」
イザベラの心に怒りが燃え上がる。
「私の努力を、あの男が……!」
彼女の瞳に宿る決意を見て、カイルは息を呑んだ。
かつて涙で滲んでいたその瞳が、今は真っ直ぐに戦おうとしている。
「イザベラ、ここにいろ。俺が奴を――」
「行かせません!」
イザベラは彼の腕を掴んだ。
「私も行きます。あの男に、自分の言葉で償わせたい」
カイルは一瞬ためらい、そして小さく頷いた。
「……わかった。だが離れるな」
二人が向かったのは、会場裏の倉庫。
そこには、逃げ出そうとするバルト侯爵とディートリヒの姿があった。
「もう逃げられません、侯爵」
イザベラの声が響く。
バルトが振り返り、冷笑する。
「おやおや、香水令嬢ご自身がここに? 都合がいい」
「あなたがやったことは、私の名誉を貶めるだけでなく、
多くの人の命を危険に晒した!」
「命? くだらんな。商会など道具にすぎん」
イザベラの手が震えた。
だが、恐怖ではない――怒りだった。
「あなたのような者が、商いを語る資格はありません!」
その瞬間、ディートリヒが短剣を抜いた。
イザベラに飛びかかる――
しかし、それより早くカイルが彼女を抱き寄せ、剣を抜いた。
金属音が響く。
火花が散り、ディートリヒの刃が弾かれる。
「……手を出すな。こいつは俺の女だ」
その低い声に、イザベラの心が大きく跳ねた。
契約ではない、真実の言葉。
カイルの剣が閃き、ディートリヒの武器を弾き飛ばす。
兵士たちが駆けつけ、二人は拘束された。
バルト侯爵はなおも笑い続けていた。
「たかが香水ごときで、何を熱くなっている……?」
「たかが、ですって?」
イザベラが一歩前に出る。
その声には、静かな炎が宿っていた。
「香りは記憶です。
人の心を癒すものを“たかが”と呼ぶあなたには、何も創れない」
その言葉に、バルトの笑みが凍りつく。
カイルが冷ややかに命じた。
「連行しろ」
騒ぎが収まり、朝の光が差し込む頃。
イザベラとカイルは庭園のベンチに並んで座っていた。
「……終わりましたね」
「ああ。君がいなければ、間に合わなかった」
「でも、あなたが来てくれたから……怖くなかった」
イザベラが微笑むと、カイルは少し目を伏せた。
「君は本当に強いな。
最初に会った時の泣き虫令嬢とは別人だ」
「それはあなたが、支えてくれたから」
イザベラがそう言うと、カイルは少し苦笑した。
「俺は、君を守りたいと思っていた。
けれど、今日気づいたんだ。君が――俺を救っていたんだと」
その言葉に、イザベラの胸が温かくなる。
静かな沈黙。
そして、カイルが小さく呟いた。
「……イザベラ。あの夜の続きを言ってもいいか?」
「え?」
「俺は――君を愛してる」
風が止まったように、世界が静まり返る。
イザベラの頬に、熱が宿る。
ゆっくりと彼を見つめ、微笑んだ。
「それ、聞きたかった言葉です」
カイルがそっと彼女の頬に触れる。
互いに距離を確かめ合うように、ゆっくりと顔が近づき――
月明かりの残る朝、二人の唇が重なった。
その香りは――“月のしずく”よりも、ずっと甘く、確かなものだった。
「どうしてわかったの?」
「君の調合記録を調べた。香料の出荷ルートが改ざんされていた」
「そんな……」
カイルの顔には焦燥が浮かんでいた。
「バルトは君を陥れるつもりだった。
“毒入り香水”の罪を着せ、商会を潰す気だ」
イザベラの心に怒りが燃え上がる。
「私の努力を、あの男が……!」
彼女の瞳に宿る決意を見て、カイルは息を呑んだ。
かつて涙で滲んでいたその瞳が、今は真っ直ぐに戦おうとしている。
「イザベラ、ここにいろ。俺が奴を――」
「行かせません!」
イザベラは彼の腕を掴んだ。
「私も行きます。あの男に、自分の言葉で償わせたい」
カイルは一瞬ためらい、そして小さく頷いた。
「……わかった。だが離れるな」
二人が向かったのは、会場裏の倉庫。
そこには、逃げ出そうとするバルト侯爵とディートリヒの姿があった。
「もう逃げられません、侯爵」
イザベラの声が響く。
バルトが振り返り、冷笑する。
「おやおや、香水令嬢ご自身がここに? 都合がいい」
「あなたがやったことは、私の名誉を貶めるだけでなく、
多くの人の命を危険に晒した!」
「命? くだらんな。商会など道具にすぎん」
イザベラの手が震えた。
だが、恐怖ではない――怒りだった。
「あなたのような者が、商いを語る資格はありません!」
その瞬間、ディートリヒが短剣を抜いた。
イザベラに飛びかかる――
しかし、それより早くカイルが彼女を抱き寄せ、剣を抜いた。
金属音が響く。
火花が散り、ディートリヒの刃が弾かれる。
「……手を出すな。こいつは俺の女だ」
その低い声に、イザベラの心が大きく跳ねた。
契約ではない、真実の言葉。
カイルの剣が閃き、ディートリヒの武器を弾き飛ばす。
兵士たちが駆けつけ、二人は拘束された。
バルト侯爵はなおも笑い続けていた。
「たかが香水ごときで、何を熱くなっている……?」
「たかが、ですって?」
イザベラが一歩前に出る。
その声には、静かな炎が宿っていた。
「香りは記憶です。
人の心を癒すものを“たかが”と呼ぶあなたには、何も創れない」
その言葉に、バルトの笑みが凍りつく。
カイルが冷ややかに命じた。
「連行しろ」
騒ぎが収まり、朝の光が差し込む頃。
イザベラとカイルは庭園のベンチに並んで座っていた。
「……終わりましたね」
「ああ。君がいなければ、間に合わなかった」
「でも、あなたが来てくれたから……怖くなかった」
イザベラが微笑むと、カイルは少し目を伏せた。
「君は本当に強いな。
最初に会った時の泣き虫令嬢とは別人だ」
「それはあなたが、支えてくれたから」
イザベラがそう言うと、カイルは少し苦笑した。
「俺は、君を守りたいと思っていた。
けれど、今日気づいたんだ。君が――俺を救っていたんだと」
その言葉に、イザベラの胸が温かくなる。
静かな沈黙。
そして、カイルが小さく呟いた。
「……イザベラ。あの夜の続きを言ってもいいか?」
「え?」
「俺は――君を愛してる」
風が止まったように、世界が静まり返る。
イザベラの頬に、熱が宿る。
ゆっくりと彼を見つめ、微笑んだ。
「それ、聞きたかった言葉です」
カイルがそっと彼女の頬に触れる。
互いに距離を確かめ合うように、ゆっくりと顔が近づき――
月明かりの残る朝、二人の唇が重なった。
その香りは――“月のしずく”よりも、ずっと甘く、確かなものだった。
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