8 / 78
一章 役立たず王女、島流しにされる
⑧
しおりを挟む* * *
メイジーが目を開くと、そこにはどこまでも広がる青い空……ではなく森があった。
ガバリと体を起こして周囲を確認すると、何故か大きな葉の上に寝かされている。
周りは土だ。それを取り囲むのは最後に目にした原始的な恰好をした人たちだ。
あまりの勢いにゴクリと唾を飲み込んだ。
「ポポ、ポーパロー?」
「はい……?」
聞いたことのない言葉にメイジーは首を捻る。
その後も互いを見つつ、何かを言いながら話し合っているではないか。
(この人たち……さっき気絶する前に岩の周りを取り囲んでいた人よね?)
岩場からいつ移動したのか、ここはどこなのか聞きたいことは山のようにあるが言葉が通じないようだ。
岩場にいた男性とはまったく違う雰囲気で敵意はないが、メイジーは歓迎している様子はない。
服装は布や葉を巻いていて、森と同化するような恰好だ。
髪は黒から茶色だが、瞳の色は緑が多い。
肌は日に焼けていてメイジーよりずっと色が濃かった。
「……あ、あの」
「ベッポ、ポローパーロ」
「ポローパーロ、ポローパーロ!」
ポローパーロと言いながら指差している先に見えるのは、大きな火にかけられた鍋とお湯。
その中身は何も入っておらず、水が煮たっている。
メイジーの隣にあるのは、立派な木の棒と蔦で作ったような荒縄。
まるで食材のように葉の上に乗せられているメイジー。
(もしかして……わたしを食べようとしていない?)
まさかそんなはずはないと思いつつ、グツグツと煮え立つ鍋とメイジーを交互に視線を送る人たち。
メイジーは逃げ道を模索するが、前も後ろも人でぎっしりと埋められている。
中にはよだれが垂れている人もいるではないか。
「わ、わたしは美味しくないですから……!」
「ポローパーロ、ポローパーロ!」
「イーエー、ポローパーロ」
石が木の先についた鈍器のような武器がメイジーの前へ。
明らかにメイジーを叩き潰すつもりではないだろうか。
メイジーは息を吸って大きく声を上げた。
「ノーッ! ポローパーロ! ノーノー! ダメダーメッ」
手を前に出して首を横に振りながらアピールした。
なんとか抵抗しようとするが、じりじりとこちらに近づいてくる人々。
振り上げられた石の武器。頭を守るように腕を前に出した時だった。
『……やめろ』
大きな男性の声が頭の中に響いた瞬間、周りの人たちの動きが止まった。
まるで時が止まったように誰も何も言葉を発しない。
『コイツは食いものじゃない……それにまだ聞きたいことがある』
男性がそう言った瞬間、周囲にいた人たちが膝を折り地面に額がつきそうな勢いで頭を下げた。
その異様な様子を見ていてメイジーは目を見開いた。
『ダ・ガブリエーレ、ダ・ガブリエーレ……!』
『ダ・ガブリエーレ……!』
男性が歩き出すと、自然と道が開けていく。
(ダ・ガブリエーレ……? この男性の名前かしら)
他の言葉の意味かもしれないと考えたものの、やはりこの男性のことを呼んでいるようだ。
こうして深々と頭を下げているガブリエーレと呼ばれた男性は慣れた様子でメイジーの方に歩いてくる。
そして、この光景を見てメイジーは思っていた。
(ダ・ガブリエーレって人……神として崇拝されてない?)
たしかに神々しい容姿をしているし、彼一人だけ異質な美しさだ。
周囲の人たちら両手を上げて深々と頭を下げていることを繰り返している。
「ダ・ガブリエーレ……?」
『ガブリエーレだ。俺の名を気安く呼ぶな』
「……!」
やはりこの男性の名前で間違いないようだ。
(ガブリエーレ……どこかで聞いたことあるような)
そう思ったが、今は彼のことについて思い出している場合ではない。
ガブリエーレは眉を寄せながらこちらを睨みつけている。
488
あなたにおすすめの小説
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
転生幼女は追放先で総愛され生活を満喫中。前世で私を虐げていた姉が異世界から召喚されたので、聖女見習いは不要のようです。
桜城恋詠
ファンタジー
聖女見習いのロルティ(6)は、五月雨瑠衣としての前世の記憶を思い出す。
異世界から召喚された聖女が、自身を虐げてきた前世の姉だと気づいたからだ。
彼女は神官に聖女は2人もいらないと教会から追放。
迷いの森に捨てられるが――そこで重傷のアンゴラウサギと生き別れた実父に出会う。
「絶対、誰にも渡さない」
「君を深く愛している」
「あなたは私の、最愛の娘よ」
公爵家の娘になった幼子は腹違いの兄と血の繋がった父と母、2匹のもふもふにたくさんの愛を注がれて暮らす。
そんな中、養父や前世の姉から命を奪われそうになって……?
命乞いをしたって、もう遅い。
あなたたちは絶対に、許さないんだから!
☆ ☆ ☆
★ベリーズカフェ(別タイトル)・小説家になろう(同タイトル)掲載した作品を加筆修正したものになります。
こちらはトゥルーエンドとなり、内容が異なります。
※9/28 誤字修正
《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!
犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。
そして夢をみた。
日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。
その顔を見て目が覚めた。
なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。
数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。
幼少期、最初はツラい状況が続きます。
作者都合のゆるふわご都合設定です。
日曜日以外、1日1話更新目指してます。
エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。
お楽しみ頂けたら幸いです。
***************
2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます!
100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!!
2024年9月9日 お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます!
200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!!
2025年1月6日 お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております!
ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします!
2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております!
こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!!
2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?!
なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!!
こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。
どうしよう、欲が出て来た?
…ショートショートとか書いてみようかな?
2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?!
欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい…
2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?!
どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした
さこの
恋愛
幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。
誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。
数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。
お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。
片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。
お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……
っと言った感じのストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる