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五章 復讐の結末は
⑥⑦
しおりを挟む歪な形の真珠でもどうにか利用できないかと考えていた。
子どもたちの遊び道具のままではもったいないではないか。
そこでベルーガから瓶に詰めて売ってみてはどうかと提案をしてもらった。
メイジーは小瓶に小さな色とりどりの真珠を詰めるとなんとも可愛らしい小物になる。
キラキラと輝く真珠は女性心をくすぐるではないか。
「試しにメイジー様の力を込めてみてはどうですか?」
「宝石ではなくてもいいのでしょうか?」
「どんな魔法か詳細がわからない以上、やってみるしかありません」
「わかりました。やってみます……!」
メイジーは島から帰ってから、毎日帝国で魔法の勉強をしていた。
ガブリエーレはメイジーのために、魔法の研究者や講師たちをたくさん用意してくれた。
しかしメイジーの持つ魔法の情報がまったくないため、訓練方法や魔法の使い方は自分で見つけていくしかないらしい。
(お母さまはどんなやり方で魔法を使っていたんだろう)
メイジーは瞼を閉じて『幸せになれますように』と願いを込めてみる。
が……何も変わらないように見えた。
(本当に魔法がかかったのかしら?)
ベルーガやマオ、エレナに見てもらうとやはり魔法がかかっていることはハッキリとわかるそうだ。
だけどメイジーにはわからない。
どうやらメイジーは魔力を視覚で感じることがまだできないようだ。
彼らから見てもメイジーの魔力は知覚できないほどに弱いものらしい。
それがメイジーと貝が作った真珠によって何倍にも増幅されているのだという。
ベルーガやエレナ、侍女たちも信じられないという顔をされた。
どう説明していいかわからないが、とにかく複雑な魔法が何個も絡み合っているように感じたらしい。
メイジーにただカラフルな真珠が普通に小瓶に詰まっているように見えてしまう。
(……これが本当に売れるのかしら)
本当にメイジーの魔法の効果があるのかはわからない。
そこでエレナに数日、真珠の小瓶を持ち歩いてもらうことにした。
効果はすぐに現れたそうだ。
なんと小さなものから大きなものまで幸運が次々と舞い込んできたらしい。
エレナはそのことを毎日、興奮気味に語ってくれた。
メイジーは偶然の可能性もあるのではないかと思ったが、小瓶の魔力が減っていたことがわかったそうだ。
そこでメイジーの魔法の力が改めて証明されることになる。
メイジーの力がはっきりとわかったことでガブリエーレが信頼を寄せているという帝国貴族たちに真珠の小瓶が売られることとなった。
以前の宝石の件もあり、すぐに完売になったそうだ。
特に値段などは定めなかったそうだが、ガブリエーレに呼ばれたメイジーは信じられないものを見ることとなる。
「この札束は……何でしょうか」
『お前の作ったものに対する対価だ』
「どうしてこんなに?」
『それだけ効果が高かったんじゃないか?』
ガブリエーレは当然のように言っているが、メイジーが作った小瓶は五個程度だ。
軽く見積もっても一個につき五百万円ほどの価値がついたことになる。
メイジーはあんぐりと口を開けた。
あとはスリーダイト帝国にある魔法を研究している場所があるそうだ。
そこに行くように提案されたメイジーは頷いた。
『まぁ……次もこちらに優先的に回して欲しいっていう上乗せもあるだろうな』
「……え?」
『これでお前の力は本物だと証明できた。金は好きにしろ』
このお金はメイジーのものだと聞いて、あることを思いつく。
やりたいことは一つだけ。
今こそ島民たちに恩返しをするべき時ではないだろうか。
「牛……っ! 牛を二頭ちょうだい!」
『……牛?』
「島に持っていくのよ! 家畜としての飼い方を教えて島の人たちに教えたいのっ!」
メイジーは恩返しとして島の人たちが何を喜ぶかをずっと考えていた。
生態系を壊すことなく、島民たちの暮らしを壊さずにささやかなご褒美となるもの。
そして島では滅多に食べられない『肉』ということに気がついた。
肉を持っていくのは簡単だが、食べたらなくなってしまう。
なくなってしまえば今までと同じ。
そしたら牛を家畜として育てていくのはどうかと思ったのだ。
『なぜ……?』
「島の食べ物の幅が広がるから!」
『ほう……今すぐに牛を二頭用意しろ』
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