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五章 復讐の結末は
⑦⑧
しおりを挟むやはりガブリエーレは水面下でシールカイズ王国の大臣たちと連絡を取りながら、スリーダイト帝国の傘下に入れる準備を進めていたらしい。
ジャシンスは贅の限りを尽くして、金が足りなければ無理やり税を引き上げ、貴族たちからも手当たり次第搾取を繰り返すなどやりたい放題。
国民の怒りを買い、貴族たちからの支持もなく崩壊状態。
そんな中、皇后は男遊びに耽っていたらしい。
宰相や大臣でさえも収拾がつかなくなり、彼女たちに責任を擦り付けるような形にしようと考えていた際に、ガブリエーレからの救いの手が差し伸べられた。
だが、その条件は帝国がだいぶ有利なものだった。
彼らが政治に介入してくるのをなくすことも条件だ。
けれど彼らは自分の命が惜しいようだ。
それにガブリエーレの元で王国にこだわることは無理だと判断したらしい。
魔法の恩恵も受けられることもあり、悪いことばかりではなくむしろ生活が豊かになると、納得してくれた。
基本的に貴族はそのまま領地を管理する。爵位はリセットされるそうだ。
ガブリエーレはメイジーにプレゼントをする、と言っていたがそれには宝石のことも含まれていたそうだ。
宝石の採掘や加工をすべてシールカイズ王国でできる。
それにメイジーが力を込めれば、スリーダイト帝国の大きな利益となる。
彼は一見すると暴君に見えるが、緻密な計画と根回しに脱帽である。
それからリディも以前のようにメイジー付き侍女として帝国で働くことになった。
メイジーはというと……。
「んー! 今日もいい天気だわ」
今日も島で真珠作りに精を出していた。
牛の数はいつの間にか増えて、モォ~と元気な声が耳に届く。
みんなの協力もあってか、メイジーの望むさまざまな色の丸い真珠ができるようになっていった。
今日も太陽にピンク色とライトグリーンの丸い真珠が出来上がった。
(ピンクはリディに、ライトグリーンはエレナにあげましょう)
波に流されてずぶ濡れになりリディに怒られて、怪我をしてはエレナに怒られている。
今は大切な人に願いを込めて、真珠を配って効果を実験中だ。
それにまだまだアイボリーや白い真珠を作れる貝は見つかっていない。
(まだまだやりたいことはたくさんあるのよ……! でも絶対に見つけ出してみせるわ)
メイジーは慣れた様子で貝の口に果物と種を入れていく。
もう貝に鼻を噛まれることもほとんどなくなった。
「いい真珠を作ってくれますように……!」
そんな願いを込めつつ、色別の広い網に貝を戻していく。
この網も編み方を変えてもらい、貝が住み心地がいいように。
餌を食べやすいようにと網目を調節してある。
メイジーが額を拭って立ち上がると……。
『毎日毎日、貝ばかり……よく飽きないな』
岩場からメイジーの元に降りてくるガブリエーレの姿があった。
彼もこうして岩場の定位置でよく海を眺めている。
「まったく飽きないわ。毎日、とても楽しいの」
島民たちとランチをするのが楽しみで仕方ない。
最近は牛肉を使ったステーキや牛乳を使ったスープなどが出てくるのだが、それがなかなか美味しいのだ。
メイジーはガブリエーレの元に行こうとして石に躓いて滑ってしまう。
「わっ……!」
『……!』
メイジーはガブリエーレに覆い被さるようにして勢いよく突っ込んでしまう。
ガブリエーレは不意を突かれたのか後ろに倒れ込んだ。
恐る恐る顔を上げると……。
『お前……ふざけんな』
「あはは! なんだか出会った時を思い出すわ」
『…………』
メイジーがガブリエーレとの出会いを懐かしんでいると、彼がじっとこちらを見ていると気づく。
どうしたのかと尋ねようとすると、ふと唇に感じる柔らかい感触に目を見開いた。
「え……?」
『さて、そろそろ俺は戻る』
「なっ……ちょっ!」
ガブリエーレはメイジーを立たせると帝国に繋がる扉へと飛んで行ってしまう。
メイジーが追いかけるが、彼はヒラヒラと手のひらを振って消えてしまった。
取り残されたメイジーは唇に指を当てながら頬を赤く染める。
なんだか悔しくなってきたメイジーは海に向かって叫んだ。
「い、今の何なのよっ! く~~やぁ~しいいぃっ~~~~ばっかやろおぉぉっ!」
end
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