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一章 「この婚約は間違いだった」
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──次の日。
「クロエ、行きましょう!」
「はい、ミシュリーヌお姉様」
ミシュリーヌはイエローのドレスを着て荷物をまとめてから馬車に乗り第二騎士団の練習場へと向かう。
訓練所は三つに分かれており、第二騎士団の訓練場へ入ろうと足を進めていると、クロエに袖を引かれて足を止める。
「あなたがミシュリーヌ・シューマノン?」
アクアブルーのグルグルに巻いた髪とブルーの瞳。
いつも以上に吊り上がった目と表情にミシュリーヌは嫌な予感がしていた。
昨日、クロエと話していた通りマリアンがさっそくミシュリーヌに接触してきたのだ。
それに彼女の周りには伯爵家の双子令嬢、サラとエマの姿がある。
真っ赤な髪を靡かせながらミシュリーヌを睨みつけていた。
恐らく彼女たちの髪色や瞳の色的に火魔法を使うのだろう。
するとミシュリーヌを庇うようにクロエが前に出ると、マリアンの眉がピクリと動く。
「オレリアン様の婚約者になったと聞いたけれど……こんな芋臭い令嬢だなんて信じられないわ。身の程知らずにも程があると思わない?」
「「ほんとよねぇ」」
サラとエマたちの声が揃う。
「地味で普通、地位も低くて何の特徴もない……意味がわからないわ」
「確かに」
頷くミシュリーヌに、マリアンとサラとエマは動きを止めて目を見張っている。
しかしすぐにこちらを指さして責めるように声を上げた。
「た、たかが子爵令嬢の分際でオレリアン様の婚約者に相応しくないわ! 今すぐに婚約者の座をおりなさいっ」
「…………」
「ちょっとあなた聞いているの!?」
ミシュリーヌはマリアンに責め立てられながら目を見開いた。
(本物の悪役令嬢みたいだわ……)
呑気に考えていると、さらに甲高くなる声。
どうやら昨日の今日で情報を仕入れたマリアンはミシュリーヌを待ち構えていたようだ。
けれどミシュリーヌの頭は推し活のことでいっぱいだった。
(もうすぐ練習が始まっちゃう。モアメッド様の勇姿が……っ!)
今は一分一秒が惜しいではないか。
同じモアメッドはもういない。アーカイブもないので見逃せば終わりである。
血走った目でマリアンが話終わるのを待つものの、まったく攻撃が終わらない。
それからミシュリーヌの口から、一年後に婚約を解消するので気にしなくても大丈夫とは言えはしない。
それにその後に結婚するクロエのためにも、この方がいいかもしれないと、早めにわかってもらった方がいいだろう。
ミシュリーヌはマリアンに早口であることを伝える。
「マリアン様、この件はわたしではなくレダー公爵にお話してくださいますか?」
「はぁ……!?」
マリアは大きく目を見開いた。
「わたしのたかが子爵令嬢です。わたしの一存ではどうすることもできないことはマリアン様はご存知ですよね?」
「なっ…………!」
「なので、マリアン様の希望はレダー公爵か父に直接話された方が効率がいいと思います。わたしにはどうすこともできませんので」
「……っ!」
マリアンは顔を真っ赤になり、握り込んだ拳はプルプルと震えているではないか。
しかしミシュリーヌは当然のことを言ったつもりだった。
(どう考えたって、わたしに言うよりレダー公爵に言った方が手っ取り早いのに……)
クロエは「ミシュリーヌお姉様の言う通りですわ」と、呟くように言った。
マリアンの両隣にいるサラとエマも困惑した表情で顔を見合わせている。
マリアンになんて声を掛ければいいかわからないのだろう。
彼女とミシュリーヌを交互に見つつ、困惑しているように見えた。
ミシュリーヌの耳に歓声が聞こえた。
もうすぐ練習が始まってしまうのかと思うと震えが止まらない。
マリアンが下唇を噛みながら俯いてしまう。
「……それができたら苦労しないわよっ」
何かをボソリと呟いたような気がするが、ミシュリーヌの耳には届くことはなかった。
すると第二騎士団の練習場から甲高い悲鳴が響く。
ミシュリーヌは肩を揺らした後にガタガタと震え始める。
早く会場に行かなければモアメッドの勇姿が見られないではないか。
挙動不審になるミシュリーヌにドン引きするマリアンたち。
(何も言わないってことは、もういいかしら……!)
「ミシュリーヌお姉様、早く行きましょう」
「あっ、えぇ、そうね! マリアン様、失礼いたします」
クロエの言葉に何度も頷いたミシュリーヌは唖然としているマリアンに視線を送り、挨拶をしてから背を向けた。
一方、取り残された三人はというと……。
サラとエマは怒りで肩を震わせたマリアンに声をかけるかどうか迷っていた。
二人は目を合わせていると、マリアンは血走った目を見開いきながらミシュリーヌを睨みつけていた。
「あの女……このわたくしを馬鹿にするなんてっ! わたくしの言うことに反論してくるなんて許せないわ」
「「…………」」
「もっとわたくしを敬いなさいよっ、子爵令嬢の分際でわたくしの居場所を奪うなんて許されないんだから!」
爪をガリガリと音を立てて噛むマリアンの表情は恐ろしい。
双子の令嬢たちは困惑していた。
それはミシュリーヌの言うことを一理あると納得したからだ。
けれどそれを今のマリアンに言うことはできない。
サラとエマは彼女の怒りが自分たちに向くことを恐れていた。
自分がオレリアンの婚約者になれると信じて疑わなかったマリアン。
昨日、彼が名前も顔もわからない子爵令嬢と婚約したと聞いて、マリアンは怒りからか荒れていた。
それがこの国で一番有名な令嬢と言っても過言ではないクロエの姉だと知った。
オレリアン様の婚約の座から引き摺り下ろさなければ気が済まないとミシュリーヌを待ち構えていたのだ。
意気揚々とミシュリーヌを待ち構えていたが、顔がわからない。
クロエが一緒にいたことで、やっと見つけることができたのだ。
「クロエ、行きましょう!」
「はい、ミシュリーヌお姉様」
ミシュリーヌはイエローのドレスを着て荷物をまとめてから馬車に乗り第二騎士団の練習場へと向かう。
訓練所は三つに分かれており、第二騎士団の訓練場へ入ろうと足を進めていると、クロエに袖を引かれて足を止める。
「あなたがミシュリーヌ・シューマノン?」
アクアブルーのグルグルに巻いた髪とブルーの瞳。
いつも以上に吊り上がった目と表情にミシュリーヌは嫌な予感がしていた。
昨日、クロエと話していた通りマリアンがさっそくミシュリーヌに接触してきたのだ。
それに彼女の周りには伯爵家の双子令嬢、サラとエマの姿がある。
真っ赤な髪を靡かせながらミシュリーヌを睨みつけていた。
恐らく彼女たちの髪色や瞳の色的に火魔法を使うのだろう。
するとミシュリーヌを庇うようにクロエが前に出ると、マリアンの眉がピクリと動く。
「オレリアン様の婚約者になったと聞いたけれど……こんな芋臭い令嬢だなんて信じられないわ。身の程知らずにも程があると思わない?」
「「ほんとよねぇ」」
サラとエマたちの声が揃う。
「地味で普通、地位も低くて何の特徴もない……意味がわからないわ」
「確かに」
頷くミシュリーヌに、マリアンとサラとエマは動きを止めて目を見張っている。
しかしすぐにこちらを指さして責めるように声を上げた。
「た、たかが子爵令嬢の分際でオレリアン様の婚約者に相応しくないわ! 今すぐに婚約者の座をおりなさいっ」
「…………」
「ちょっとあなた聞いているの!?」
ミシュリーヌはマリアンに責め立てられながら目を見開いた。
(本物の悪役令嬢みたいだわ……)
呑気に考えていると、さらに甲高くなる声。
どうやら昨日の今日で情報を仕入れたマリアンはミシュリーヌを待ち構えていたようだ。
けれどミシュリーヌの頭は推し活のことでいっぱいだった。
(もうすぐ練習が始まっちゃう。モアメッド様の勇姿が……っ!)
今は一分一秒が惜しいではないか。
同じモアメッドはもういない。アーカイブもないので見逃せば終わりである。
血走った目でマリアンが話終わるのを待つものの、まったく攻撃が終わらない。
それからミシュリーヌの口から、一年後に婚約を解消するので気にしなくても大丈夫とは言えはしない。
それにその後に結婚するクロエのためにも、この方がいいかもしれないと、早めにわかってもらった方がいいだろう。
ミシュリーヌはマリアンに早口であることを伝える。
「マリアン様、この件はわたしではなくレダー公爵にお話してくださいますか?」
「はぁ……!?」
マリアは大きく目を見開いた。
「わたしのたかが子爵令嬢です。わたしの一存ではどうすることもできないことはマリアン様はご存知ですよね?」
「なっ…………!」
「なので、マリアン様の希望はレダー公爵か父に直接話された方が効率がいいと思います。わたしにはどうすこともできませんので」
「……っ!」
マリアンは顔を真っ赤になり、握り込んだ拳はプルプルと震えているではないか。
しかしミシュリーヌは当然のことを言ったつもりだった。
(どう考えたって、わたしに言うよりレダー公爵に言った方が手っ取り早いのに……)
クロエは「ミシュリーヌお姉様の言う通りですわ」と、呟くように言った。
マリアンの両隣にいるサラとエマも困惑した表情で顔を見合わせている。
マリアンになんて声を掛ければいいかわからないのだろう。
彼女とミシュリーヌを交互に見つつ、困惑しているように見えた。
ミシュリーヌの耳に歓声が聞こえた。
もうすぐ練習が始まってしまうのかと思うと震えが止まらない。
マリアンが下唇を噛みながら俯いてしまう。
「……それができたら苦労しないわよっ」
何かをボソリと呟いたような気がするが、ミシュリーヌの耳には届くことはなかった。
すると第二騎士団の練習場から甲高い悲鳴が響く。
ミシュリーヌは肩を揺らした後にガタガタと震え始める。
早く会場に行かなければモアメッドの勇姿が見られないではないか。
挙動不審になるミシュリーヌにドン引きするマリアンたち。
(何も言わないってことは、もういいかしら……!)
「ミシュリーヌお姉様、早く行きましょう」
「あっ、えぇ、そうね! マリアン様、失礼いたします」
クロエの言葉に何度も頷いたミシュリーヌは唖然としているマリアンに視線を送り、挨拶をしてから背を向けた。
一方、取り残された三人はというと……。
サラとエマは怒りで肩を震わせたマリアンに声をかけるかどうか迷っていた。
二人は目を合わせていると、マリアンは血走った目を見開いきながらミシュリーヌを睨みつけていた。
「あの女……このわたくしを馬鹿にするなんてっ! わたくしの言うことに反論してくるなんて許せないわ」
「「…………」」
「もっとわたくしを敬いなさいよっ、子爵令嬢の分際でわたくしの居場所を奪うなんて許されないんだから!」
爪をガリガリと音を立てて噛むマリアンの表情は恐ろしい。
双子の令嬢たちは困惑していた。
それはミシュリーヌの言うことを一理あると納得したからだ。
けれどそれを今のマリアンに言うことはできない。
サラとエマは彼女の怒りが自分たちに向くことを恐れていた。
自分がオレリアンの婚約者になれると信じて疑わなかったマリアン。
昨日、彼が名前も顔もわからない子爵令嬢と婚約したと聞いて、マリアンは怒りからか荒れていた。
それがこの国で一番有名な令嬢と言っても過言ではないクロエの姉だと知った。
オレリアン様の婚約の座から引き摺り下ろさなければ気が済まないとミシュリーヌを待ち構えていたのだ。
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