推しを味方に付けたら最強だって知ってましたか?

●やきいもほくほく●

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番外編(本編の内容とは少し異なります。時系列バラバラです)

③ 零れ落ちた水(フェリクスside)

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(リオノーラに訳を話した後……フェリクスの回想)


母は淑やかで多くは語らない女性だった。
伯爵家出身で婚約者候補の中でも珍しい水の妖精のリーベという事で父と結婚した。

母の精霊は、光に反射すると羽が虹色に輝く、とても美しい精霊だった。
そんな母と精霊が本当に大好きだった。

対してソフィーネは妖艶でとても綺麗な女性だった。
黒豹の中型精霊、アジャイルのリーベで男爵の娘だった。
学園を卒業後、その若さで新しいリーベの教育係を勤めていた。
自分の意見をしっかりと持ち、リーベ達が幸せになれるようにと積極的に動いていた。

ソフィーネは快活で、誰にでも優しく人気者だった。
精霊を触らせてくれたり、一緒に遊んでくれるソフィーネがフェリクスは大好きだった。

けれど、フェリクスがソフィーネの話を嬉しそうにすると母は見た事が無いくらい怖い顔をした。
その時、母の前でソフィーネの話をしてはいけない…そう思った。

愛を育んだマルクスとソフィーネの関係は、幸せそのものだった。
側妃として迎え入れたいと父が言った時に、母は静かに頷いただけだった。
しかし母と父の関係に、何も変化は無かった。

それから暫く経って、双子の男児が生まれた。

父を取られたというモヤモヤとした気持ちをぶつけることもあった。
けれどそれは、母にとって屈辱的で残酷なことだったろう。


無知な自分が母を傷付けていた……そう気付いたのは、成長して母の死から大分経った後だった。


ソフィーネの存在が許せなかったのか、自分がマルクスと愛を育めなかった事が悔しかったのか、精霊が小型なのを気にしていたのか………今となっては知ることは出来ないが、母は静かに静かに憎悪を募らせていったのだろう。


母が唯一感情を見せたのは"第一王子の母親"として扱われる時だった。
それに応えるように必死で勉強して完璧な王子として振る舞った。
第一王子としての評判が良くなると母は必ず「愛してるわ…フェリクス」と嬉しそうに言ってくれた。

頑張れば、いつか元の母に戻ってくれる……そう信じて疑わなかった。

しかし母は、徐々に壊れていった。
早い段階でマルクスに訴えた。

けれど母は父が部屋に来ると、気丈に振る舞った。
何事もないように、いつも通りに…。

そんな母の姿を見て戸惑っていた。
どうして助けを求めないのだろう。
「私を見て…」そう父に言えば良いのに、と。

母を説得しようとしても、首を横に振るだけだった。

その後も父に必死に訴えても、母を助けてと懇願しても、聞き入れられることは無かった。

ただ、歯痒さを感じていた。



そして風邪を拗らせて寝ていた時だった。

顔を真っ青にした侍女が部屋に飛び込んできた。
いつも母の世話をしてくれる侍女だった。

侍女から、母が自分の精霊を殺めて契約違反で衰弱してしまったと涙ながらに伝えられたのだ。
熱に浮かされた体に鞭を打って、母の部屋まで走った。


「母上…ッ!!!」


母はベッドで静かに横になっていた。

激しく咳き込みながら、侍女に支えられながら母の元へ駆け寄った。

体を揺らしても、声を掛けても母は返事を返してはくれなかった。

いつもなら「どうしたの?」と、そう言って優しく頭を撫でてくれるのに…。


「母上…っ!起きて……!!」

「………」

「っ、お願い……目を開けてよ!僕を見て…ッ」

「………」

「いい子にするから…ッ勉強も、もっと、もっと頑張るからぁ……!!」

「………」

「ねぇ…母上、おねがいだから…起きて……?」

「………」

「っ、いやだ…!嫌だぁあぁ……ッ!!」

「…ッすまない、すまない!フェリクス」


父の重苦しい声が聞こえた気がした。
一番の親友と愛する母親を一度に失った。

胸が張り裂けそうな程に痛んだ。


「………ッ!!」


静かに涙を流す父と、隣で顔を伏せているソフィーネを鋭く睨みつけた。

全てが許せなかった。
怒りで頭がおかしくなりそうだった。
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