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しおりを挟む大好きな彼氏の18歳の誕生日だった。
お祝いしようと一緒に昇降口を抜けると、校門の前に可愛らしい女の子が立っているのが見えた。
その子は私の彼氏を見つけると、とても嬉しそうな笑みを浮かべ一目散にこちらに向かって来た。
「傑くん!誕生日おめでとう!直接言いたくて来ちゃった!」
とても可愛らしい弾けるような笑顔。
その日、私は初めて知ったのだ。
大好きな彼氏に婚約者がいるということを。
その日はすぐその婚約者とはその場で別れたが、
私の頭は傑の誕生日どころではなかった。
「そんな気にすんなって。親が勝手に言ってることなんだからさ~。」
親が決めた婚約。傑の親は会社を経営していてその繋がりで交わされた約束だという。
次期社長として親の跡を継ぐ予定の傑と、一般家庭出身の平々凡々な私。
釣り合わないことなんて分かっていた。でも好きだった。
彼も好きをくれたから、大丈夫かもと少し期待してた。
「さっきの子、可愛かったね…。」
「ん?あぁ、結愛か?まぁ確かに可愛いけど。大丈夫だって~お前は愛嬌があんだし!」
あぁ、あの子は結愛という名前なのか。
名前まで可愛いだなんてつくづくこの世は不平等だ。
傑に悪気なんてこれっぽっちも無いのは分かる。
…けど、それでも今欲しい言葉はそんなものじゃない。
冷たい床
腫れた頬は熱を持ち
口の中は鉄臭く気持ち悪い
服は破かれボロボロで
身体のそこら中が痛みを訴えている
傑の誕生日の後、友達と遊んだ日の帰りに傑の婚約者とばったり会って。
気づいた時にはここに居た。
腕は縛られ、周りにはたくさんの男がいて。
辺りを見回すとどこかの倉庫なのか。
すぐに、助けを求めても無駄なんだと悟った。
遠くの椅子に座る傑の婚約者が男たちに何かを伝え、そのまま倉庫を出て行く。
その後は、ただ、
抵抗したら殴られて、
服をビリビリに破かれて、
身体をたきさん触られて、
最後の方は抵抗なんてしなかった。
「ははっ、ほんと私って可愛くない…」
乾いた笑い溢れ出す。
ボロボロで顔が腫れて不細工も良いところだろう。
あの子とは全然違う。
私はあの子にはなれない。
痛い、苦しい、助けて欲しい。
もう高望みなんてしないから、許して。
朦朧とする意識の中、願うのはただ、自分の幸せだけだった。
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