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第七話:その後の結末
しおりを挟むアルベールは、伯爵位を失い、子爵家の次男に戻った。
いや、戻ろうとしたが、現実はそれほど甘くはなかった。
上位貴族に婿に迎えてもらった末、とんでもない醜聞を引き起こし、あまつさえそこから放り出された出戻りの息子など、子爵家にとっては何の益もない。
むしろ家名を汚す忌まわしい存在でしかなかった。当然のことながら、彼は即座に子爵家から除籍処分となった。
彼は、かつてつきあいのあった貴族たちにも助けを求め、邸宅の門を叩いて回った。
しかし、どの貴族も彼の来訪を受け入れることはなかった。彼らは、アルベールのような非常識で、もはや何の価値も持たない男と同類だと思われることなどまっぴらごめんだったのだ。
使用人に門前払いされ、冷たい視線を浴びせられるたびに、アルベールはかつての栄光が遠い幻であったことを思い知らされた。高慢だった彼のプライドは、粉々に打ち砕かれていく。
彼は除籍の際に手切れ金として子爵家から渡されたわずかな金銭を手に、市井に紛れるしかなかった。
しかし、貴族としてしか生きたことのないアルベールにとって、市井の生活はあまりにも過酷だった。読み書きはできても、商売の知識もなければ、肉体労働の経験もない。
数ヶ月後には、慣れない生活と散財で金銭は底を尽き、彼は借金で首が回らなってくるだろう。そうなったら、どこかの悪徳商人に身売りされるか、過酷な強制労働に従事させられる日が来るに違いなかった。
そして、セシルもまた、アルベールとともに社交界から姿を消した。
彼女は、自分が伯爵夫人になれると信じていたが、その夢は打ち砕かれた。
アルベールが伯爵でなくなった今、彼との関係は、ただの醜聞に過ぎなくなった。
彼女は、当然伯爵家からは追い出され、実家である男爵家からの除籍は免れたものの、即座に田舎の高齢な男爵の後妻に迎えられることとなった。
貴族としての最低限の生活は守られるものの、その暴力的で醜悪な趣味から首都でも有名な貴族である。
セシルの未来は別の意味で絶望的であった。
セシルは、男爵領へ向かうガタガタと揺れる馬車の中で、華奢な身体を震わせ、泣き叫んだ。もはや、彼女の可憐な外面を繕う余裕などどこにもない。顔を歪ませ、声を張り上げる。
「なんでよ! なんでこうなったの!? エレノアなんかが、なんであんなにチヤホヤされて私があんな醜悪な老いぼれに嫁がなきゃいけないのよぉ!」
彼女は、かつて見下していたエレノアへの嫉妬と憎悪を募らせていた。
しかし、その声は、もはや誰にも届かなかった。
一方、エレノアは、モンブラン伯爵として、新たな人生を歩み始めていた。
彼女は、伯爵家の財産と権力を、自身の采配で管理し、その手腕は高く評価された。
エレノアの周りには、相変わらず多くの男性貴族が集まっていた。しかし、エレノアは、すぐに次の結婚を考えるつもりはなかった。
基本的に爵位を受け継ぐのは男子のみであるため、ゆくゆくは再婚を考えなければならないが、彼女は、しばらくの間、自由に、そして思うがままに生きていきたいと考えていたのだ。
彼女は、社交界で新たな試みを始めた。女性貴族たちの地位向上を目的とした慈善事業を立ち上げ、その活動は多くの女性たちから支持された。
ある日の午後、エレノアは、アガサとともに庭園を散策していた。満開の薔薇が、美しく咲き誇っている。
「奥様、すべては奥様の思惑通りでございましたね」
アガサは、満足そうに言った。
エレノアは、静かに微笑んだ。
「ええ、アガサ。淑女の復讐は、かくも静かで、しかし確実に成し遂げられるものなのですわ」
彼女の瞳には、かつての悲しみは微塵も残っていなかった。そこにあったのは、自信と、そして未来への希望に満ちた輝きだけだった。
アルベールとセシルは、自らの傲慢さと軽率さによって、自ら墓穴を掘り、すべてを失った。
エレノアは、裏切りの痛みから立ち上がり、淑女としての矜持と知略を武器に、見事に復讐を果たしたのだ。
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