悪役令嬢は美貌と権力でざまぁする

Ao

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【王子視点】怒りと絶望

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「またか!またフェリシアの話題ばかりではないか!」

俺は王宮の執務室で苛立ちを露わにした。即位して数週間。王になったはずなのに、状況は悪くなるばかりだ。リリアーナは俺の隣で肩を震わせている。

「で、ですが、殿下…いえ、陛下。皆、ヴァレンシュタイン公爵家の話ばかりで…」

リリアーナの声が小さくなる。分かっている、分かっているさ!

俺が婚約破棄をしたのだから、フェリシアは悲嘆に暮れ、公爵家も力を失うはずだった。

そうすれば、リリアーナのような純粋な心を持つ者が、この国の王妃として迎えられ、皆が俺たちを称賛するはずだったのだ。

だが、現実は真逆だ。


「なぜだ!なぜフェリシアは、いまだに輝きを放っているのだ!?あの冷たい女が!」

俺の頭の中は、あの女への疑問符でいっぱいだった。

婚約破棄から一週間で、国内外から求婚状が殺到したと聞いた時、俺は最初信じられなかった。なぜあの冷徹なフェリシアに求婚がくるのだ。婚約破棄された傷ものだぞ。

まぁ、腐ってもあいつは公爵家。どうせ下心のある連中が、ヴァレンシュタイン家の後ろ盾を狙っているだけだろうと高を括っていた。

だが、あの女がレヴィアタン公爵家の次男、アルフォンスを婿に迎えると発表した時は、さすがに衝撃だった。あのレヴィアタン公爵家だぞ?しかも婿入りとは。

これでは、権力が集中しすぎるのは目に見えているではないか。

それからの日々は、悪夢のようだった。フェリシアはヴァレンシュタイン公爵夫人として、社交界で圧倒的な存在感を示し始めた。

貴族たちは皆、彼女の顔色を伺っていると聞く。俺が主催する公式行事には誰も来ないのに、フェリシア主催の夜会は連日大盛況だという。

「王家が弱体化した今、この国の未来は、私たち貴族が担うべきですわ」

そんな言葉が、彼女の口から出たと報告を受けた時は、怒りで机を叩き割るところだった。反逆ではないか!

だが、王命で武力に訴えたとて、レヴィアタン公爵家がフェリシア側についている以上下手すれば本当に反逆を起こされる可能性もある。

なんとか王家寄りの貴族をまとめようとしても、初めは「公爵家の権力を分散させるべきです!」と息巻いていた貴族達も、なぜか公爵家と寝返っていく。

何をしても、彼女の勢いは止まらない。それどころか、飢饉への対策を無能な大臣達が怠ったせいで国内は不安定だというのに、彼女が介入した領地では経済が活性化し、民の生活が改善されているという噂まで耳にした。

信じられるか?俺が王になったばかりだというのに!
安定する策があるなら俺に献上すべきだろう。まさか自分の手柄として見せびらかすとは。

「フェリシア!貴様、一体何を企んでいる!?この国の政治を混乱させる気か!」

耐えかねた俺は、ついにフェリシアを王宮に呼び出した。リリアーナが俺の隣で怯えている。
フェリシアは、俺たちの前で静かに微笑んだ。その隣には、あのアルフォンスが控えている。相変わらず、何を考えているか分からない男だ。だが、その視線は、俺たちの無力さを静かに見据えているように感じられた。

「何を仰いますの、陛下。わたくしはただ、この国の未来を案じ、貴族として当然の責務を果たしているだけですわ」

「責務だと!?貴様がしていることは、王権への反逆ではないか!」

俺は怒鳴りつけた。だが、フェリシアは涼しい顔だ。

「反逆……?いいえ、滅相もない。わたくしはただ、この国に必要な改革を推し進めているだけ。陛下が王位に就かれてから、この国の財政は悪化の一途を辿り、民も貴族も疲弊しております。これでは、国が滅びてしまいますわ」

俺は何も言い返せなかった。事実、財政は逼迫し、民の不満も募っているのは分かっていた。だが、それは全て、フェリシアのせいに違いない!

「黙れ!貴様は私を貶めようとしているだけだ!」
フェリシアは、まるで愚かな子供を見るような目で俺を見つめた。

「貶める?いいえ。わたくしはただ、事実を申し上げているだけですわ。殿下は、ご自身の生まれ持った権力を理解せず、権力をより拡大できる婚約を無為にされた。そしてリリアーナ様は、その美貌と才覚を利用する術を知らなかった。それだけの話ですわ」

彼女の言葉が、俺の胸に突き刺さる。リリアーナは涙を流しながらその場に座り込んだ。

俺たちは、「真実の愛」を手に入れたはずだった。俺は、この国をより良い方向に導くために、冷酷なフェリシアではなく、リリアーナを選んだのだ。それなのに、なぜ、全てが裏目に出る?

「結局のところ、生まれ持った権力と美貌、そしてそれを活用することがどれほど重要だったか。今、身をもって実感していらっしゃるのではないでしょうか、陛下」

フェリシアの冷たい笑みが、王宮の空気を凍りつかせた。俺は顔を真っ赤にして震え、何も言えなかった。

アルフォンスは、何も言わず、ただ静かに俺とリリアーナを見据えていた。その視線が、俺のプライドを粉々に打ち砕くかのようだった。

なぜだ?なぜ俺が、こんな惨めな思いをしなければならない?俺は、この国の王なのに!俺は、ただリリアーナと幸せになりたかっただけだ。フェリシアが、あの冷酷な女が、全てを台無しにしたのだ!

もはや、この国はフェリシアの手中にあった。俺とリリアーナは、ただのお飾りに過ぎず、二度と、権力を取り戻すことはできないかもしれない。この虚しい王冠を、俺はいつまで被り続けなければならないのか。

いや、いつか必ず、フェリシアから全てを取り戻してやる!俺のプライドが、そう叫んでいる。
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みんなの感想(1件)

クレサ
2025.09.24 クレサ

プライドだけじゃ、取り戻せないんじゃないかな。陛下。有能な家臣もクビにしちゃったしね。まじめに仕事してた人ほど裏切られたと思って怒ってるよ、きっと。
せめて国民たちが平穏に過ごせるよう、がんばってください。

解除

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