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第三部:兵糧戦線、前進!
第二十九話:傷みやすい食材の活用
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武藤家の大軍は、戦場を目指して行軍を続けていた。
持ち運べる兵糧は限られており、日々の食事は単調になりがちだ。
千兵衛は、行軍携帯食(第26話)や野営地で得られる沢ガニ(第27話)といった工夫で飢えをしのいでいたが、兵士たちの体は、乾燥した保存食ばかりの食事に慣れていない。
彼らは「生きた」食材、畑で採れたばかりのようなみずみずしい何かを求めていた。
道中、時折、近くの村からわずかながら新鮮な野菜や、野山で採れたばかりの野草が手に入ることがあった。
それは、兵士たちにとって貴重な彩りであり、喜びだった。
しかし、それらの「生きた」食材は、陣中での保存が極めて難しいという問題があった。
切ったり洗ったりしただけで傷みが進む。湿気や気温の変化ですぐにしんなりとなり、腐敗が始まる。
せっかく手に入れた貴重な食材が、調理する前に無駄になってしまうことも少なくなかった。
飢餓が迫る中で、この食料のロスは、千兵衛にとって見ていられないほど辛い光景だった。
「このままでは、せっかくの糧が……」
千兵衛は、野営地の片隅で、配給を待つ間に兵士が分けてもらったらしい、少ししんなりとしてしまった青菜を見つけた。
このままでは、明日の朝には捨てることになるだろう。
彼は、傷みやすい食材を、腐敗する前に、いかにして兵士たちの糧とするかという新たな課題に直面した。
行軍中に、大量の食材をすぐに調理することはできない。
大きな火を使う時間もない。
だが、これらの傷みやすい食材を、鮮度が良いうちに、手早く、そして安全に処理し、皆の腹に収められる方法はないか。
千兵衛は、火を使わず、あるいは最小限の熱処理で、これらの食材を安定させ、味を加える方法を考えた。
そこで思いついたのは、塩と味噌を使った「和え物」のようなものだ。
塩は食材の水分を抜き、日持ちを少し良くする。
味噌は、それ自体が保存食であり、風味と栄養を加える。
千兵衛は、手に入ったばかりの、あるいは少ししんなりし始めてしまった野草や葉物野菜、そして備蓄の豆の中から、柔らかく煮て潰しやすいものを選び出した。
野草や葉物は丁寧に洗い(可能な限り安全な水で)、細かくしゃくしゃくと刻む。豆は柔らかく煮て(前日の煮込みの残りなど)、すり鉢でつぶす音を響かせながらなめらかなペーストにする。
刻んだ野草と潰した豆を、大きな器に入れる。
そこに、兵糧奉行の味噌と塩を適量加え、全体が均一になるようにもみもみと力を込めて混ぜ合わせる。
野草の緑と豆の白(あるいは茶)、そして味噌の色が混じり合い、見た目にも彩りがある。
揉み込むことで、野草に塩と味噌の味が馴染み、少ししんなりとする。
出来上がったのは、みずみずしさを残しながらも、塩と味噌で安定化された和え物だった。
火を通していない野草からは、青い香りがふわりと立ち上る。
千兵衛は、出来上がった「野草と豆の即席味噌和え」を、その日の夕食の配給に加えた。
兵士たちの、いつもの干飯や行軍携帯食が盛られた椀の脇に、少量ずつ添える。
兵士たちは、椀に添えられた緑色の和え物を見て、驚きと、そして興味を示した。
「これは……?」
「これは、今日手に入った野草と豆を、傷む前にすぐに和えたものです」
千兵衛は答えた。
そして、和え物を手に、この料理に込めた思いを語った。
「乏しき中にこそ、美味は宿る。
これぞ、いくさ飯。」
兵士たちは、和え物を一口食べてみる。
しゃきしゃきとした、あるいはしんなりとした野草の食感、なめらかな豆のペースト、そして味噌と塩の味。
口の中に広がるのは、野草のほのかな苦みとさっぱりとした風味、そして豆の優しい甘みと味噌の旨味。
それは、乾燥した保存食ばかりの舌にとって、久しく忘れていたみずみずしい味だった。
「美味い!」
「おお、なんか体がしゃきっとするぞ!」
「こんなものまで、無駄にしないのか……」
兵士たちの顔に、安堵と、そして感謝の色が浮かんだ。
それは、美味しいものを食べられた喜びだけでなく、自分たちのために、一つ一つの食材が大切にされていることへの感謝だ。
無駄にされそうだった食材が、千兵衛の手によって、自分たちの活力となる糧に生まれ変わった。
この即席味噌和えは、傷みやすい食材という、行軍中の兵站が抱える新たな課題に対する千兵衛の答えだった。
腐敗による食料のロスを防ぎ、兵士たちに貴重な栄養と、何より「新鮮さ」という心の潤いを与える。
行軍は続く。
戦場は近い。
食料の絶対量は減り続け、手に入る食材も予測不能だ。
千兵衛の「いくさ飯」は、乾燥、燻製、煮込み、蒸しといった保存・調理技術に加え、「傷む前に活かす」という、時間との戦いをも含むようになった。
この野草と豆の即席味噌和えは、飢餓という多面的な敵に対する、千兵衛の柔軟な適応力と、一切の無駄を許さない強い意志を示した。
来るべき大戦の中で、千兵衛は刻々と変化する状況の中で、いかにして兵士たちの腹と心を支え続けるのか。
その挑戦はさらに深まっていく。
【今回のいくさ飯】
『傷む前に活かす! 野草と豆の即席味噌和え』
行軍中に手に入った、傷みやすい新鮮な野草や葉物野菜、柔らかく煮て潰した豆などを、刻んで塩と味噌でもみもみと混ぜ合わせたもの。
火を使わず、あるいは軽く湯通しする程度で、短時間で完成する。
腐敗しやすい食材を無駄なく活用し、飢餓に偏りがちな食事にみずみずしさ、彩り、そして栄養を加える。
さっぱりとした風味で、兵士の口の中をリフレッシュさせる効果も。
(現代の白和え、味噌和え、即席ナムルアレンジ。食品ロス対策、手軽さ)
持ち運べる兵糧は限られており、日々の食事は単調になりがちだ。
千兵衛は、行軍携帯食(第26話)や野営地で得られる沢ガニ(第27話)といった工夫で飢えをしのいでいたが、兵士たちの体は、乾燥した保存食ばかりの食事に慣れていない。
彼らは「生きた」食材、畑で採れたばかりのようなみずみずしい何かを求めていた。
道中、時折、近くの村からわずかながら新鮮な野菜や、野山で採れたばかりの野草が手に入ることがあった。
それは、兵士たちにとって貴重な彩りであり、喜びだった。
しかし、それらの「生きた」食材は、陣中での保存が極めて難しいという問題があった。
切ったり洗ったりしただけで傷みが進む。湿気や気温の変化ですぐにしんなりとなり、腐敗が始まる。
せっかく手に入れた貴重な食材が、調理する前に無駄になってしまうことも少なくなかった。
飢餓が迫る中で、この食料のロスは、千兵衛にとって見ていられないほど辛い光景だった。
「このままでは、せっかくの糧が……」
千兵衛は、野営地の片隅で、配給を待つ間に兵士が分けてもらったらしい、少ししんなりとしてしまった青菜を見つけた。
このままでは、明日の朝には捨てることになるだろう。
彼は、傷みやすい食材を、腐敗する前に、いかにして兵士たちの糧とするかという新たな課題に直面した。
行軍中に、大量の食材をすぐに調理することはできない。
大きな火を使う時間もない。
だが、これらの傷みやすい食材を、鮮度が良いうちに、手早く、そして安全に処理し、皆の腹に収められる方法はないか。
千兵衛は、火を使わず、あるいは最小限の熱処理で、これらの食材を安定させ、味を加える方法を考えた。
そこで思いついたのは、塩と味噌を使った「和え物」のようなものだ。
塩は食材の水分を抜き、日持ちを少し良くする。
味噌は、それ自体が保存食であり、風味と栄養を加える。
千兵衛は、手に入ったばかりの、あるいは少ししんなりし始めてしまった野草や葉物野菜、そして備蓄の豆の中から、柔らかく煮て潰しやすいものを選び出した。
野草や葉物は丁寧に洗い(可能な限り安全な水で)、細かくしゃくしゃくと刻む。豆は柔らかく煮て(前日の煮込みの残りなど)、すり鉢でつぶす音を響かせながらなめらかなペーストにする。
刻んだ野草と潰した豆を、大きな器に入れる。
そこに、兵糧奉行の味噌と塩を適量加え、全体が均一になるようにもみもみと力を込めて混ぜ合わせる。
野草の緑と豆の白(あるいは茶)、そして味噌の色が混じり合い、見た目にも彩りがある。
揉み込むことで、野草に塩と味噌の味が馴染み、少ししんなりとする。
出来上がったのは、みずみずしさを残しながらも、塩と味噌で安定化された和え物だった。
火を通していない野草からは、青い香りがふわりと立ち上る。
千兵衛は、出来上がった「野草と豆の即席味噌和え」を、その日の夕食の配給に加えた。
兵士たちの、いつもの干飯や行軍携帯食が盛られた椀の脇に、少量ずつ添える。
兵士たちは、椀に添えられた緑色の和え物を見て、驚きと、そして興味を示した。
「これは……?」
「これは、今日手に入った野草と豆を、傷む前にすぐに和えたものです」
千兵衛は答えた。
そして、和え物を手に、この料理に込めた思いを語った。
「乏しき中にこそ、美味は宿る。
これぞ、いくさ飯。」
兵士たちは、和え物を一口食べてみる。
しゃきしゃきとした、あるいはしんなりとした野草の食感、なめらかな豆のペースト、そして味噌と塩の味。
口の中に広がるのは、野草のほのかな苦みとさっぱりとした風味、そして豆の優しい甘みと味噌の旨味。
それは、乾燥した保存食ばかりの舌にとって、久しく忘れていたみずみずしい味だった。
「美味い!」
「おお、なんか体がしゃきっとするぞ!」
「こんなものまで、無駄にしないのか……」
兵士たちの顔に、安堵と、そして感謝の色が浮かんだ。
それは、美味しいものを食べられた喜びだけでなく、自分たちのために、一つ一つの食材が大切にされていることへの感謝だ。
無駄にされそうだった食材が、千兵衛の手によって、自分たちの活力となる糧に生まれ変わった。
この即席味噌和えは、傷みやすい食材という、行軍中の兵站が抱える新たな課題に対する千兵衛の答えだった。
腐敗による食料のロスを防ぎ、兵士たちに貴重な栄養と、何より「新鮮さ」という心の潤いを与える。
行軍は続く。
戦場は近い。
食料の絶対量は減り続け、手に入る食材も予測不能だ。
千兵衛の「いくさ飯」は、乾燥、燻製、煮込み、蒸しといった保存・調理技術に加え、「傷む前に活かす」という、時間との戦いをも含むようになった。
この野草と豆の即席味噌和えは、飢餓という多面的な敵に対する、千兵衛の柔軟な適応力と、一切の無駄を許さない強い意志を示した。
来るべき大戦の中で、千兵衛は刻々と変化する状況の中で、いかにして兵士たちの腹と心を支え続けるのか。
その挑戦はさらに深まっていく。
【今回のいくさ飯】
『傷む前に活かす! 野草と豆の即席味噌和え』
行軍中に手に入った、傷みやすい新鮮な野草や葉物野菜、柔らかく煮て潰した豆などを、刻んで塩と味噌でもみもみと混ぜ合わせたもの。
火を使わず、あるいは軽く湯通しする程度で、短時間で完成する。
腐敗しやすい食材を無駄なく活用し、飢餓に偏りがちな食事にみずみずしさ、彩り、そして栄養を加える。
さっぱりとした風味で、兵士の口の中をリフレッシュさせる効果も。
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