黄昏の国家

旅里 茂

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内情の駆け引き

黄昏の国家05

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ああいう輩は特別な肩書に弱い。今までに見てきた結果が物語っている。
「分かりました。通達を出して交渉してみます」
「宜しく頼む」、高沢は腑に落ちない状況に、若干の苛立ちを持っていた。
ビッグ・ワンの建造の話が出て、それらを実行するプランを立てたその時点で、必ず揉め事は発生するものだと考えていた。が、人死にまで生じるのは予想外であった。
明日から、角安と共に杉本を暗殺した黒幕を絞らなければならない。
関東電力の圧力、事は大きく尻尾切りの可能性も出てくるだろう。
その時、どのような判断をすればよいのか。

翌朝七時半、ビジネスホテルをチェックアウトした高沢は、角安の事務所に向かった。
ビジョノートには連絡がない。進展はまだなのだろう。
タクシーの中で電力会社との関係を今一度、確認を取った。
データは脳内に残っている。処理を続けるうちに社長である複式がTVに出演していた。
ビッグ・ワンの否定的な言い分と、今後、更に関東電力を大きなものにするという展望を語っていた。
一番にこの人物が関与したのではないか、そう思わせるに足りる会見だが、証拠がない。
角安がどんなトラップを仕掛けるのか、いくらビッグ・ワンのブレーンリーダーである高沢でも、関東電力やましてや政界の人物に迫ることは不可能だ。
そう考えをまとめられないまま、角安の事務所に着いた。
「高沢、君も分かっていると思うが、まあ、仕掛けを作ったのは関東電力の複式社長だろうな」
同様の意見を角安が述べてくれたのは幸いである。
「私も同意です。只、バックにはもっと大物が潜んでいると確信しております」
角安は大きな窓を覗いて、一呼吸置いた。
「実は政府の中に、私の手のものを忍ばせた。いずれは何処からか綻びが出る筈だ。複式と繋がりがあるキーパーソンをな」
それはいったい誰なのか?
その頃、片岡信三議員は三千億が入る皮算用を既に周囲に吹聴していた。
「ふん、ビッグ・ワンだが何だか知らんが、新参者が堂々と表舞台に出るには金が必要という事を、分からせなければな」
片岡の秘書で橋川優斗は大きく頷いて見せた。
「全くです。先生をコケにして事を運ぶなど、片腹が痛いです」
片岡は横目で橋川を見ながら、一言呟いた。
「お前は少し、目上に対しての口の利き方を勉強した方がいいな」
蛇に睨まれたカエルのように、「はっ!申し訳御座いません」、冷や汗をかいて一瞥した。
そのやり取りの直後、事務員の女性から橋川にビジョノートにて連絡が入った。
「橋川秘書、片岡先生に只今、ビッグ・ワンの和巻様よりご連絡が入っております」
橋川から聞いた片岡は頬を緩めた。これで三千億もの金が入ると…。
しかし和巻から提示されたのは、養殖プランの臨時顧問について頂きたいとの事だった。
眉を歪め、どういうことなのか、直接、片岡が和巻に問うた。
「そんな肩書より、以前に伝えた保障はどうなっているんだ」
和巻は言葉を選びながらこう伝えた。
「片岡議員、今回のビッグ・ワン、養殖プランが完成した暁には、莫大な利益を出すことが可能です。ここで三千億を受け取るより、長きに渡り収益を得た方が良いとの、リーダー高沢のご案内であります」
今、決まった金を受け取るより長期の収益を見た方が得か。
片岡は、それも悪くはないと感じ、和巻に臨時顧問になることを伝えた。
「流石、片岡議員。眺望を持っておられます。では後日、電子書類を送らせて頂きます。何とぞ御指南の程、宜しくお願い致します」
片岡は表面上、硬くなっていたが、内容を聞いて之で莫大な金が入ることを、大いに内心喜んでいた。
「いいんですか?先生。肩書だけ…。」
「お前は其れだから駄目なんだ。交渉は二手三手先を見ることだ」
橋川は納得のいかない様子だが、その言葉に従った。

角安は高沢と昼食を取りながら、政府に放った隠密にアクセスしていた。
”特A”と呼ばれる人物で、元々は官僚の一人である。
身元も完璧に偽装しているので、まず見破られることはない。
川崎副次官の動きをトレースしているが、表向き不審な動きを見せていない。
特Aは、川崎の秘書である内村奈々に接触を試みる。
川崎を見本として啓蒙していると伝え、その極意を伺いたいと近付く。
以外にも警戒はされなかった。
内村は川崎を褒めたたえた特Aに好感を持ち、ある件を伝えた。
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