黄昏の国家

旅里 茂

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外交の裏側

黄昏の国家26

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日本勢の感覚から行けば、アンドロイドやサイボーグの意味は、現状ありうる。
しかし、この場所にいるそれらは、また別の趣旨にあるものだと感じた。
シュナイフは無言で顎を使い、こっちへ来いとばかりに誘導した。
仮にも日本政府の高官が、このような侮辱を受けるのは今回だけではない。
2037年に行われた北方四島の返還を巡り、自衛軍とロシア軍との間で小競り合いが起きた。
双方に死者が出る惨事になり、ロシアは核を使うと脅しを付けたが、当時の外務大臣、来都らいと勇作によって事なきを得た。
剃刀と異名を取った大臣は過去にも存在したが、来都は別格だった。
まず核を使った場合、国連総会で米国にロシアの首都を戦略核で滅ぼしてくれと豪語した。
之にはロシアだけでなく、名指しされた米国も驚きを隠さなかった。
国連では影の薄い日本国だが、彼は大胆にも更には大仰に振舞った。
当時の事務総長が「何を言っているのかね?ミスター来都!ここは平和と安定を制定する機関だぞ!」
「…ならば最初に核を使用する旨を表現したロシアを糾弾するべきでは?」
一瞬の沈黙が重い空気となって漂った。
ロシアも他国も、日本がこのような態度に出るとは思いも依らなかったのだ。
来都は更にこう宣言した。
「我、日本国は生まれ変わるだろう」と。
そんな遣り取りが行われたことが、国連文章に記載されている。
それから二十年経った今、またロシアとの鍔迫り合いつばぜりあいが始まろうとしている。
ある建物に着いたのだが、日本勢は奇妙な感覚に陥った。
一人、門番のように立っている人物の表情が、何か違和感を持って感じさせる。
シュナイフは「開けろ」と声を掛ける。
するとその人物の首と腕が完全に後ろに回転したのだ。
アンドロイド?いや、あの感覚は人間だ。外務省の面々とオーイックスの永井は驚嘆した。
これは倫理的なものでも、実に不快感に陥る光景だ。
シュナイフは全員に入れと言ったが、中が何なのか足がすくむ思いだ。
建物の中は薄暗く、全体を見渡す状況に眼が慣れるまで多少の時間を要した。
そしてその内幕を見たシュナイフを除く全員が戦慄を覚えた。
人の形をしているが、手や足の位置、或いは腕が四本ある人物、シュナイフに永井はあれはアンドロイドかと問うた。
しかし帰ってきた言葉は”人間”だと。
其処に一人の東洋人の顔があった。それは見覚えのある顔だった。
讃岐健一、頭頂部には何かしらの機材が載せられ、淡々と作業をしている。
まるで悪夢だ。いや、人に対する冒とくだと感じた。
その途端、ドアが閉まり全員が閉じ込められた。
シュナイフは振り返り、最早一国の一等外務員ではなく、殺人者の顔となっていた。
外務省の人物を守る為、公安の一人が銃を出して威嚇するも、いつしか後ろに回られたサイボーグに頭を持たれた瞬間、大きなへし折れる音が響いた。
外務省職員と永井にも危機が迫るが、永井はチェック・スタビライザーを稼働させた。
その瞬間、建物内に居るサイボーグ、アンドロイドは動きを奪われ、異常な動きをする、そしてシュナイフが銃を取り出した腕を偶然にも、引き千切っていた。
シュナイフの悲鳴に日本勢は扉を蹴り倒し外に出た。
ここはロシアだ。どうやって日本に帰る?
ましてや、讃岐の件も公安も死者だ。
証拠となる眼鏡に仕込まれたカメラで撮影には成功している。
只、生きてこの国を出られるかどうかだ。
兎に角、シュナイフが運転していた自動車まで辿り着き、脱出を図る。
空港まで四時間以上かかるが、その前に電子ペーパーを繰り出し、防衛ビッグ・マーカーの沢田に回線が繋がるか試みる。但し、直ぐに傍受されるだろう。
自動車に乗る全員が死を覚悟して、その瞬間を待つ。
何回線ものクシを通し、数回試みる。繋がった!『こちらビッグ・マーカー本部です。この回線は違法です。すぐに切りなさい』
その言葉に応答している暇はない。すぐに自分の身元を明かす。「こちらオーイックス、ビッグワン、外務担当機関所属、永井健一です!時間がありません、データを送信します!」
通話は一瞬止まったが、『永井さん?どうしました?なにが…』データは送信できた。デジタルカメラのデータも送信完了した、これで後は…。
通信が切れた、いや切られた。
そして何処からともなくヘリの音がする。
その姿を正面から見上げた。永井は悟った。
この先はオーイックスが何とかしてくれると。
その時、無音に近い射出を連続で発射してくる、30mm電子機関砲が永井たちの乗った自動車を粉々に砕いていた。
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