黄昏の国家

旅里 茂

文字の大きさ
25 / 48
見えない敵

黄昏の国家25

しおりを挟む
複雑な政治と金の流れが大きく浮遊した。
最終的には、オーイックス内で会議を開き、議論をする事で話を纏めた。

「日本政府及び、国防省からの通達に基づく次期支援戦闘機のエンジン開発に指名を受けました。現在、我がオーイックスの管轄ではCo2光合成エンジンの点火燃焼試験に合格しております」
高沢は軍需コントロール室の多田が読み上げる内容について、何故に大手である”IFH”が手を引いたのかを考えていた。
嘗て、XーF2のエンジンに採用され、実際に飛行に成功した。
その実績は非常に大きい物であったが、米国の横入でFー3のエンジンは純正を使う事はなかった。
幾度の純国産を夢見た閣僚たちは、”IFH”に米国製のFー22に匹敵する精度を求めた。
処が、交渉に当たっていた、讃岐健一という人物が突如、行方をくらました。
まず、姿を消す理由がないのと、米国製のエンジンと同等の性能を自負していた人物だけに、警察は事件性を疑った。内密に公安も動いたが、その動向は知れなかった。
家族は居らず、独り身の人物だけに合って、数年が経過した。
世間が忘れかけた頃、神戸市の北側にある山中で、犬と散歩中の男性が、妙な記号を刻んだ杉の木を発見した。それは一見意味をなさない物のように見えたが、一つだけ判る記号があった。『←』と刻まれている。男性は杉の木の上を見上げると、大きな麻の袋のようなものがぶら下がっているのに気付いた。
高い確率で遺体が入っていると思い、直ぐに警察に連絡を取った。
十数分で警察官が十人程駆けてつけ、その麻袋を降ろし中身を確認した。
すると大量のジェル状の物体が入っており、その中心には電子ペーパーが一枚入っていた。
遺体とばかりに思っていた、そこに集まった者たちは一旦は胸を撫で下ろしたが、電子ペーパーが起動している状態だったので、サイバー班を緊急に寄越した。
ナイフでゲル状の物質を切り裂き、危険な物質が入っていないか計測し、安全を確認しながら電子ぺーパーを取り出した。
操作系で電源をオンにするとパスワードを要求してきた。
全く判断が出来ないので、ラボに持ち帰って解析しようと判断した処、隊員の一人が、発見した人物の言う通り、木に刻まれた矢印を打ち込んだところ、パスワードが解けた。
その瞬間、アラートが鳴り響き、電子ペーパー上にある地域が表示された。
場所は直ぐに確認出来た。
ロシアの「スラトフストフスク」という場所であった。
この地域に讃岐と関連があるのか?
外務省に問合せ、ロシアとの外部回線を通しての連絡を取るすんだんを行ったが、ロシア外務省からの応答は、問題になる要素はないとの回答だった。
では一連の意味はどういう事を現しているのか。公安は頭を抱えた。
その情報はもちろん、オーイックスにももたらされ、ロシアと日本政府との間に入り、日本政府外務省と公安とオーイックスからは、三人詮索した人物を派遣する旨を通達した。一人に永井健一という人物。
ロシア外務省は問題がなしと押し通そうとしたが、突然手の平を返し、受け入れる準備をするという。
日本の外務省もそうだが、オーイックス側でも裏があるのではと感潜ったが、今現在出来るのは、その土地に到達する事だ。
オーイックスが準備した機体に乗り込み、ロシアに飛んだ。
高沢は念の為、チェック・スタビライザーを持ち合わせて行くよう指示した。
チェック・スタビライザーとは、サイバー攻撃においてあらゆる探りも入らないようにする機器である。
本来は、舌の内側に設置する可成り小型の部品である。
これもオーイックスが開発したサイバー攻撃の防御システムである。
近隣の空港に到着した際、ロシア警察と外務省の職員が直ぐに駆け付けた。
歓迎はされていない事は、数十秒で判った。
外務省職員ロドリゲス・シュナイフ一等外務員が、「その場所に何も無い事は通知した通りだ。我々が受け入れたのは、不快な探りを拒否する為だ」
これは随分なご挨拶だなと日本側は思ったが、捜査線上に浮かんだ状況を調べ無い訳にはいかない。
空港から自動車で四時間はかかる場所で、軍需産業が盛んな場所だと聞かされた。
何故にロシアが機密性の高い場所の入所を許可したのか。これが不可思議で仕方がなかった。
その理由が分かったのは、現地に着いた時点で判った。
そこはサイボーグ・グラインドという、廃人の脳に電子機器を付け作業を延々とさせる場所である。
愕然とした。永井は身の危険を感じていた。いや、この状況を見た時点で消されるのではないかという恐怖心が湧いた。
しかし、案内をしたシュナイフは静かな笑いを見せていただけだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

女帝の遺志(第二部)-篠崎沙也加と女子プロレスラーたちの物語

kazu106
大衆娯楽
勢いを増す、ブレバリーズ女子部と、直美。 率いる沙也加は、自信の夢であった帝プロマット参戦を直美に託し、本格的に動き出す。 一方、不振にあえぐ男子部にあって唯一、気を吐こうとする修平。 己を見つめ直すために、女子部への入部を決意する。 が、そこでは現実を知らされ、苦難の道を歩むことになる。 志桜里らの励ましを受けつつ、ひたすら練習をつづける。 遂に直美の帝プロ参戦が、現実なものとなる。 その壮行試合、沙也加はなんと、直美の相手に修平を選んだのであった。 しかし同時に、ブレバリーズには暗い影もまた、歩み寄って来ていた。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

アブナイお殿様-月野家江戸屋敷騒動顛末-(R15版)

三矢由巳
歴史・時代
時は江戸、老中水野忠邦が失脚した頃のこと。 佳穂(かほ)は江戸の望月藩月野家上屋敷の奥方様に仕える中臈。 幼い頃に会った千代という少女に憧れ、奥での一生奉公を望んでいた。 ところが、若殿様が急死し事態は一変、分家から養子に入った慶温(よしはる)こと又四郎に侍ることに。 又四郎はずっと前にも会ったことがあると言うが、佳穂には心当たりがない。 海外の事情や英吉利語を教える又四郎に翻弄されるも、惹かれていく佳穂。 一方、二人の周辺では次々に不可解な事件が起きる。 事件の真相を追うのは又四郎や屋敷の人々、そしてスタンダードプードルのシロ。 果たして、佳穂は又四郎と結ばれるのか。 シロの鼻が真実を追い詰める! 別サイトで発表した作品のR15版です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

処理中です...