黄昏の国家

旅里 茂

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静かなる騒ぎ

黄昏の国家24

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「高沢君、君は大変な事をしてくれたね」
それは高沢も同様に言いたくなるようなセリフだった。
可成り抑えた気持ちだったみたいだが、角安はその発言の感情爆発を止める事に失敗した。
高沢は「角安副次官、川崎副総理からの伝達を受けた処ですね?」
角安は冷静さを装う事にも失敗したので、いきなりの激怒を飛ばした。
「貴様、私があれ程可愛がってやったのに!」
「どうであれ、新倉次官補の行動がオーイックスだけではありません、日本政府にとっても厄介な出来事です」
これで角安とのパイプが切れたとしても、致し方がないと高沢は悟った。
それでも高沢は引かなかった。「Fー7のデータが中国共産党とロシアに漏れた可能性がある以上、しかしながら川崎副総理は、それを潰すと言われた」
「何が言いたい?」角安が顔を紅潮させながら高沢の胸ぐらを掴む行きよいだったろう。
「新倉次官補の賄賂をもってしてもですか!」
角安は高沢から少し画面を外した。
そして観念したのか「ああ、そうだ!新倉には五千万の金を渡したよ!。それで万事解決だった。お前が川崎副総理に相談を持ち掛けなければ、事は終わっていた?」
「正気で言われているのですか?」
木本の件がここまで拗れるのは、流石に計り知れなかった。
角安はその途端、力なく地べたに座り込んでしまったのだ。
オーイックスの現状を預かる高沢の行動に、角安は賄賂という汚い金で新倉に膝間着いたのだ。
角安の今後は、明るくないだろう。高沢はオーイックスの責任者として、新たな主幹を探さねばなるまい。

川崎が発した、データ漏洩の件が意外な形でオーイックスに持たれされた。
現在の中国では共産党の他、中国民主改革党という第二政党が生まれている。
当然野党側だが、力は共産党を凌ぐ程になっており、川崎はそこから情報漏洩のデータの破壊を依頼していたらしい。
裏では可成りの抗争があったというが、その内容は表てには出ていない。
つまりは中国共産党とのパイプではなく、中国民主改革党とのパイプがあるという事なのだ。
川崎は高沢に自分の統覚とうかくを晒す事はなかった。
ロシアのついては、サイバーロジック隊という機密組織が存在しており、オーイックスの情報を解析していたが、『アルバルト特殊合金』という聞いた事が無い金属の再現を試みたが、どうしても完成させることが出来なかった。
漏洩した情報は、この謎の金属と、ギークたちの個人情報であった。
之だけで相当のデータ量であるが、実質役に立つという観点からは、かけ離れていた。
尾本率いる機密隊のサイバーエレメンツ班が、状況を把握するのにそう時間は掛からなかった。
不幸中の幸いとは正にこの事だった。
情報を抜かれても、解析される前に回収或いは消去を出来たのだから…。
処でFー7の設計の青写真が抜かれていなかったのは奇跡的と言える。
それは事件から丁度、一か月が過ぎようとした頃だった。
純国産戦闘機のFー7のエンジンを担当していた企業、”IFH”が予算の高騰に政府からの援助がないと、辞退を突き付けてきた事だ。
日本政府は予算項目で、其れなりに金額の提示を行ったが、改善には繋がらなかった。
オーイックスに連絡が入ったのは、川崎の名目で、国防省の荒木勝盛大臣が防衛ビッグ・マーカー沢田に特別回線にて通知を寄越した。
事の顛末はこうである。
”IFH”の代わりにエンジンの開発を願いたい、というものであった。
そのことに沢田は驚きを隠さなかった。
直ぐに高沢に通知し、今後の対応を協議する。
まず何故、十分耐えうる金額の提示があったであろう状況に”IFH”は純国産エンジンの開発を断念したのか?
これには長年の開発で其れなりの評価を受けていたにも関わらず、日本政府があまり前向きしなかったことが原因と考えられる。
確かにオーイックスには、Co2光合成エンジンの実績がある。
それをFー7の機関部分であるエンジン開発の主体にする、これは内容が違い過ぎる項目だ。
沢田は軍需コントロール室、室長、多田と高沢と交えて、今後の方針を話し合った。
高沢は、一連の事件が尾を引いていると睨んでいた。
沢田も荒木から直接の回線にて連絡を取られたのは、存外であった。
多田はその内容に対して、実績を上げる為にも、オーイックスが中心になって開発を後押しするべきだと述べた。
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