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陰に立つ
黄昏の国家23
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まず、高沢が直立不動で挨拶をする。
少し間が空いて、内村が川崎副総理の紹介をするが。
「ご存じではありますわね、オーイックス総裁、高沢殿」まるで時代劇だなと皮肉にも似た感情が沸き起こる。
高沢は川崎が同席している事に、ことの重要さを痛感した。
「まぁ、かけたまえ、高沢君」
川崎は軽く言ったつもりだが、高沢に聞こえたのは強烈な威圧感であった。
場合には中越総理よりも裏で影響力があると言われている川崎である。
「角安君が韮崎君に罪をかぶせる為、僅かだが金銭が動いた。勿論、私は一切関わってはおらんがね」
何処までが本音か?高沢は判断しかねていた。しかし黙りでは先は動かない。
「川崎副総理、角安副次官が新倉次官補に僅かとは申されましたが、この機会です。Fー7の入札企業の本命は既に決まっているのでは?」
川崎は座ったまま、上半身をぬっと高沢に向かい一言述べた。
「高沢君、知っていい事と知らぬが仏という事だよ。君は可成り鋭い。それが役に立つこともあれば、身を破滅させることもある。まっしかし、私もこの件には少し苦い思いをしている」
その言葉の合間に内村が川崎に酌をする。
「木本と言われる自害した人物においては、不問としよう。韮崎君においても国会招致することも帳消しにしよう。これでどうだ?」
もし、それが本当なら、オーイックスは持続出来る。しかし話が上手すぎる。
状況からして新倉が泥をかぶる事にもなりかねない。それは構わないという事か。
「中国共産党やロシアへの情報漏洩そのものを握り潰すという事ですか?」
川崎はにやりとして「そういう事だ。漏洩した情報は但し、オーイックスにて処理してもらう。その代わりだ」
何かが引っかかる。高沢は一言考えてみた内容を川崎に当ててみた。
「副総理は、中国共産党とロシアとの繋がりがあるのですか?」
そこへ内村が割って入る。
「高沢殿、詮索は無用ですよ」
これ以上は聞けないなと判断した。
何より、先程から庭先より多くの気配があったからだ。
恐らくは川崎の手のものだろう。
極めて危険を感じる状態。多分、狙撃班だろう。
今では障子越し、または薄い壁ならば、ハイパーレーザーサーチで特定の人物を狙えるまでになっている。
ここで命を絶やせば、闇に葬られる。
その高沢の内心を知ってか知らずか、内村が「高沢殿、副総理の一献を受けて頂けますでしょうか?」と川崎自らが酌を手向けてきた。
躊躇したが、盃を受けた。
「これで、万事由だな」
高沢は高速道路を、オート車両の中で考え込んでいた。
川崎は全て知った上での工作を仕掛けてきたのではないか?
何より中国共産党とロシアには、間違いなく太いパイプがある。
それを見通して、角安を詰めていったのではないか。
木本が自害した内容にしても、やはり、問題の中枢を噛んでいるとしか思えなかった。
しかし、これ以上考えても、答えは出ない。
寧ろ、オーイックスの存続に繋がっただけでも良しとしないといけない。
新倉の件も川崎の掌という訳だ。何か遣る瀬無い。
賄賂についても、揉消すだろう。それだけの話だ。
そんなことをぼんやりと考えていると、電子ペーパーに連絡が入った。
尾本からである。「リュクスタ、失礼致します。現在、機密隊が全て引き上げる状態となっております。内容は極秘になっており、専用の端末もエラーが発生しております。そちらで何か状況の変化があったのでしょうか?」
鋭いな、そう思った。
「すまない、尾本。先程、川崎副総理と会談をした処だ。多分はそれで話の流れが分かると思う」
尾本は少し間を開けて「そうでしたか。副総理が出てきたという事は、表向きには解決したと判断した方が良さそうですね」
全くだ。いつの時代でも実力者が、揉消す。この流れは何百年経とうと変わらない。
只、重要なデータが漏れたのは確かだ。
それを川崎が回収するとは思えないが、あの自信は、何処から来るのだろうか。
民主主義と共産主義との鬩ぎ合いが世界情勢を絶えず狂わせる。
日本も例外ではなく、米国との同盟強化を叫ばれて久しい。
今までの歴史の中で、危うい状況に陥った事もあった。
しかし、大声で共産主義打倒と叫んだものは、その国に排斥される。
そんな微睡の如く、世界情勢は流れて何処に辿り着くのだろうか。
そこへ角安から電子ペーパーに連絡が入った。例の事であろう。
少し間が空いて、内村が川崎副総理の紹介をするが。
「ご存じではありますわね、オーイックス総裁、高沢殿」まるで時代劇だなと皮肉にも似た感情が沸き起こる。
高沢は川崎が同席している事に、ことの重要さを痛感した。
「まぁ、かけたまえ、高沢君」
川崎は軽く言ったつもりだが、高沢に聞こえたのは強烈な威圧感であった。
場合には中越総理よりも裏で影響力があると言われている川崎である。
「角安君が韮崎君に罪をかぶせる為、僅かだが金銭が動いた。勿論、私は一切関わってはおらんがね」
何処までが本音か?高沢は判断しかねていた。しかし黙りでは先は動かない。
「川崎副総理、角安副次官が新倉次官補に僅かとは申されましたが、この機会です。Fー7の入札企業の本命は既に決まっているのでは?」
川崎は座ったまま、上半身をぬっと高沢に向かい一言述べた。
「高沢君、知っていい事と知らぬが仏という事だよ。君は可成り鋭い。それが役に立つこともあれば、身を破滅させることもある。まっしかし、私もこの件には少し苦い思いをしている」
その言葉の合間に内村が川崎に酌をする。
「木本と言われる自害した人物においては、不問としよう。韮崎君においても国会招致することも帳消しにしよう。これでどうだ?」
もし、それが本当なら、オーイックスは持続出来る。しかし話が上手すぎる。
状況からして新倉が泥をかぶる事にもなりかねない。それは構わないという事か。
「中国共産党やロシアへの情報漏洩そのものを握り潰すという事ですか?」
川崎はにやりとして「そういう事だ。漏洩した情報は但し、オーイックスにて処理してもらう。その代わりだ」
何かが引っかかる。高沢は一言考えてみた内容を川崎に当ててみた。
「副総理は、中国共産党とロシアとの繋がりがあるのですか?」
そこへ内村が割って入る。
「高沢殿、詮索は無用ですよ」
これ以上は聞けないなと判断した。
何より、先程から庭先より多くの気配があったからだ。
恐らくは川崎の手のものだろう。
極めて危険を感じる状態。多分、狙撃班だろう。
今では障子越し、または薄い壁ならば、ハイパーレーザーサーチで特定の人物を狙えるまでになっている。
ここで命を絶やせば、闇に葬られる。
その高沢の内心を知ってか知らずか、内村が「高沢殿、副総理の一献を受けて頂けますでしょうか?」と川崎自らが酌を手向けてきた。
躊躇したが、盃を受けた。
「これで、万事由だな」
高沢は高速道路を、オート車両の中で考え込んでいた。
川崎は全て知った上での工作を仕掛けてきたのではないか?
何より中国共産党とロシアには、間違いなく太いパイプがある。
それを見通して、角安を詰めていったのではないか。
木本が自害した内容にしても、やはり、問題の中枢を噛んでいるとしか思えなかった。
しかし、これ以上考えても、答えは出ない。
寧ろ、オーイックスの存続に繋がっただけでも良しとしないといけない。
新倉の件も川崎の掌という訳だ。何か遣る瀬無い。
賄賂についても、揉消すだろう。それだけの話だ。
そんなことをぼんやりと考えていると、電子ペーパーに連絡が入った。
尾本からである。「リュクスタ、失礼致します。現在、機密隊が全て引き上げる状態となっております。内容は極秘になっており、専用の端末もエラーが発生しております。そちらで何か状況の変化があったのでしょうか?」
鋭いな、そう思った。
「すまない、尾本。先程、川崎副総理と会談をした処だ。多分はそれで話の流れが分かると思う」
尾本は少し間を開けて「そうでしたか。副総理が出てきたという事は、表向きには解決したと判断した方が良さそうですね」
全くだ。いつの時代でも実力者が、揉消す。この流れは何百年経とうと変わらない。
只、重要なデータが漏れたのは確かだ。
それを川崎が回収するとは思えないが、あの自信は、何処から来るのだろうか。
民主主義と共産主義との鬩ぎ合いが世界情勢を絶えず狂わせる。
日本も例外ではなく、米国との同盟強化を叫ばれて久しい。
今までの歴史の中で、危うい状況に陥った事もあった。
しかし、大声で共産主義打倒と叫んだものは、その国に排斥される。
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