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98 ◇そうだ、デートをしよう!
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「は? 水族館?」
「うん。あ、動物園でもいいんだけど。一緒に行かない?」
晃は安倍を捕まえて、こそこそと耳打ちした。
「この年齢で動物園て……」
「だから、水族館でもいいって」
「……デートしたいなら、二人で行ってくればいいだろ」
何かを察したらしい安倍に言われて、晃はうーんと唸る。
「いっちゃんに、二人で遊びに出かけようって言っても、何で? って言われそうだし、デートって気付いてもらえなさそうだからさ。デートしてるカップルと一緒にいて、僕たちもデートみたいだねって意識してもらえないかなあと思って」
安倍は、少し呆れた顔をしている。
何かおかしなことを言ったかな?
「あっそ。つっても、俺、そんなに金に余裕ないぞ。早織も。村瀬もだろ? ほら、十二月の実習の間、バイト行けないから、その分貯めとかないとだし」
「僕のバイト代で、チケット代出すって言ったら?」
「マジで?」
「うん。入場券買っちゃってさ。もらったから、一緒に行こうって言ったらどうだろう」
「あー、あり! 俺も、実は付き合ってからそういうデートしてないから、したかった。でも、いいのか。お前のバイト代使っちゃって」
「うん、もちろん!」
晃の家族は、もともと心臓の病気持ちだった晃に、治療が済んだとはいえ、大学に通いながらアルバイトをさせる気は全く無かった。体調を心配しただけでなく、年の離れた姉二人もとっくに社会人として働いていて、晃の看病のために家にいた母も仕事に復帰し、お金に余裕があったのだ。もちろん、本人が社会勉強のためにやってみたいと言えば、それを止めるつもりも無かったが。
そんな訳で、晃のアルバイト代はただひたすら小遣いとして貯まっていっている。もちろん、初めての給料で家族にプレゼントなどして感動してもらうというイベントもこなした。照れ臭かったが、喜んでもらえて嬉しかった。それに、周りと同じようにアルバイトをしているというのは、晃に、もう病気は治ったのだと、ものすごく実感させてくれた。
そうして晃が、貯まった小遣いを眺めていて思いついたのが、一太と出かけたいな、ということだったのだ。
晃の実家に一緒に帰った時に、石垣と立て札しかない城の跡地で写真を撮っただけではしゃいでいた一太。あの時のアルバムを、暇さえあれば取り出して眺めていることを知っている。
あれは、遠足にも修学旅行にも行ったことがない、と言っていた一太の、たぶん初旅行だったのだ。途中でお菓子を買って、感動しながらちまちま食べていた様子を思い出して、思わず晃の頬が緩んでしまった。
「だらしない顔してんなあ」
「おっと」
晃が口元を手で覆うと、安倍がうーん、と考える仕草を見せた。
「俺、遊園地がいいな」
「え?」
「水族館みたいな静かなとこより、遊園地がいい」
「あー。うーん。遊園地かあ」
確かに。付き合いたてで静かな場所だと、会話に苦労するんだっけ? けれど晃は、遊園地で楽しかったことがない。
「何? あんまりなの? あ、あれか。お前、心臓に疾患のある方は乗れません、みたいなのに全部引っかかるのか」
「あ、うん、そう」
修学旅行で行った遊園地では、心臓病は治療済みだと伝えたのに、何一つ乗り物に乗れなかった。引率の先生たちが、あれも駄目、これも駄目と引き止めたからである。何かあったら責任が取れない、と複数の先生に言われて、いつものようにあっさり諦めた晃は、しまいには、保健の先生の待機所でずっと共に待機していた。
「今も駄目なん?」
「いや。もう大丈夫って言ってもらってる」
「じゃ、丁度いいじゃん。行こうぜ、遊園地」
一太だけでなく、晃にとっても、ほとんどが初体験になりそうなイベントが決定してしまった。
「うん。あ、動物園でもいいんだけど。一緒に行かない?」
晃は安倍を捕まえて、こそこそと耳打ちした。
「この年齢で動物園て……」
「だから、水族館でもいいって」
「……デートしたいなら、二人で行ってくればいいだろ」
何かを察したらしい安倍に言われて、晃はうーんと唸る。
「いっちゃんに、二人で遊びに出かけようって言っても、何で? って言われそうだし、デートって気付いてもらえなさそうだからさ。デートしてるカップルと一緒にいて、僕たちもデートみたいだねって意識してもらえないかなあと思って」
安倍は、少し呆れた顔をしている。
何かおかしなことを言ったかな?
「あっそ。つっても、俺、そんなに金に余裕ないぞ。早織も。村瀬もだろ? ほら、十二月の実習の間、バイト行けないから、その分貯めとかないとだし」
「僕のバイト代で、チケット代出すって言ったら?」
「マジで?」
「うん。入場券買っちゃってさ。もらったから、一緒に行こうって言ったらどうだろう」
「あー、あり! 俺も、実は付き合ってからそういうデートしてないから、したかった。でも、いいのか。お前のバイト代使っちゃって」
「うん、もちろん!」
晃の家族は、もともと心臓の病気持ちだった晃に、治療が済んだとはいえ、大学に通いながらアルバイトをさせる気は全く無かった。体調を心配しただけでなく、年の離れた姉二人もとっくに社会人として働いていて、晃の看病のために家にいた母も仕事に復帰し、お金に余裕があったのだ。もちろん、本人が社会勉強のためにやってみたいと言えば、それを止めるつもりも無かったが。
そんな訳で、晃のアルバイト代はただひたすら小遣いとして貯まっていっている。もちろん、初めての給料で家族にプレゼントなどして感動してもらうというイベントもこなした。照れ臭かったが、喜んでもらえて嬉しかった。それに、周りと同じようにアルバイトをしているというのは、晃に、もう病気は治ったのだと、ものすごく実感させてくれた。
そうして晃が、貯まった小遣いを眺めていて思いついたのが、一太と出かけたいな、ということだったのだ。
晃の実家に一緒に帰った時に、石垣と立て札しかない城の跡地で写真を撮っただけではしゃいでいた一太。あの時のアルバムを、暇さえあれば取り出して眺めていることを知っている。
あれは、遠足にも修学旅行にも行ったことがない、と言っていた一太の、たぶん初旅行だったのだ。途中でお菓子を買って、感動しながらちまちま食べていた様子を思い出して、思わず晃の頬が緩んでしまった。
「だらしない顔してんなあ」
「おっと」
晃が口元を手で覆うと、安倍がうーん、と考える仕草を見せた。
「俺、遊園地がいいな」
「え?」
「水族館みたいな静かなとこより、遊園地がいい」
「あー。うーん。遊園地かあ」
確かに。付き合いたてで静かな場所だと、会話に苦労するんだっけ? けれど晃は、遊園地で楽しかったことがない。
「何? あんまりなの? あ、あれか。お前、心臓に疾患のある方は乗れません、みたいなのに全部引っかかるのか」
「あ、うん、そう」
修学旅行で行った遊園地では、心臓病は治療済みだと伝えたのに、何一つ乗り物に乗れなかった。引率の先生たちが、あれも駄目、これも駄目と引き止めたからである。何かあったら責任が取れない、と複数の先生に言われて、いつものようにあっさり諦めた晃は、しまいには、保健の先生の待機所でずっと共に待機していた。
「今も駄目なん?」
「いや。もう大丈夫って言ってもらってる」
「じゃ、丁度いいじゃん。行こうぜ、遊園地」
一太だけでなく、晃にとっても、ほとんどが初体験になりそうなイベントが決定してしまった。
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