161 / 252
161 ◇◇聞かれたことだけ答えた日
しおりを挟む
「突然すみません。警察の者です。松島誠さんの携帯電話でお間違えないでしょうか。はい、ありがとうございます。いえ、息子さんのことではなく、はい。少し、お尋ねしたいことがございまして。はい。実は、息子さんの借りている部屋の前で、うるさくいつまでも呼び鈴を鳴らしたり、ドアを叩いている者がいる、と通報があり、少年を一人保護しました。高校生くらいの少年なんですが、少年は、部屋の住人に用があって遠くから訪ねてきた、住人の弟なのだ、と言っています。え? あ、はい。息子さんは末子。はい、そうですか。すみません。いえね、少年が名乗った苗字が違うので、彼の勘違いだろうと言ったのですが。ええ、はい。息子さんに確認しようにも、息子さんが帰宅されなくてね。隣の部屋の住人に聞いたところ、息子さんはしばらくお部屋に戻られないと聞いている、とのことで、ええ、はい。不動産屋の緊急連絡先に指定されているこちらの番号に電話をお掛けした、とこういう次第です」
そんな知らせが誠の携帯電話に届いたのは、晃と一太が施設実習に出ている時だった。施設実習は、十日間施設に泊まりがけで過ごす。休憩時間や、一日挟まる休日に外出するなどは可能だが、夜は必ず施設で寝泊まりしなければならない。夜勤もある、大変な職場での実習中だ。児童養護施設で、親のように、けれど先生として、様々な年齢の子どもたちの衣食住の世話をして過ごさなければならないのだと聞いている。
だから、晃と一太は部屋に戻っては来ない。
誠は、家族共有カレンダーのアプリを開いて予定を確認した。晃と一太の施設実習は半分を過ぎたところだ。色分けしてある二人の予定が、仲良く重なっている。同じ施設に一緒に行ったのだろう。晃は、実習も一太と一緒にしたいがために、ちっとも実家には帰ってこないのだから。
「息子は、泊まりがけの施設実習に出かけております。あと五日は帰ってきませんし、連絡もなかなか取れないと思います」
誠は、カレンダーで確認した予定を、電話口の警察官に伝えた。
通報してくれた隣の部屋の住人というのは、以前も、一太の弟が訪ねて来た時に物音を聞いていて証言してくれた大学生だろう。長く留守にする予定を、晃と一太は知らせておいたようである。良い隣人に恵まれて、とても住みやすい部屋だったのだが……。誠は、ため息を吐いた。あの一太の弟が一人でもたどり着いてしまったのなら、いよいよ本気で、引っ越し先を探さねばならない。
「そうですか。すみません。いえ、お父さんに確認が取れたら充分です。はい、はい。少年はこちらで対処致します。はい、お手数をお掛けしました」
もう一人住人がいる、と隣の大学生は言わなかったのだろう。誠も、余計なことは言わなかった。以前に世話になった警察官とは別の者だったらしく、電話はあっさりと切れた。
とりあえず、二人が留守の間の出来事で良かった、と誠は息を吐く。
開いた共有カレンダーの今月の最後の日。一太の誕生日、と一太の選んだ赤色で染められている日にちを見ながら、仕事が終わったら早急に引っ越し先を探そう、と誠は思った。
そんな知らせが誠の携帯電話に届いたのは、晃と一太が施設実習に出ている時だった。施設実習は、十日間施設に泊まりがけで過ごす。休憩時間や、一日挟まる休日に外出するなどは可能だが、夜は必ず施設で寝泊まりしなければならない。夜勤もある、大変な職場での実習中だ。児童養護施設で、親のように、けれど先生として、様々な年齢の子どもたちの衣食住の世話をして過ごさなければならないのだと聞いている。
だから、晃と一太は部屋に戻っては来ない。
誠は、家族共有カレンダーのアプリを開いて予定を確認した。晃と一太の施設実習は半分を過ぎたところだ。色分けしてある二人の予定が、仲良く重なっている。同じ施設に一緒に行ったのだろう。晃は、実習も一太と一緒にしたいがために、ちっとも実家には帰ってこないのだから。
「息子は、泊まりがけの施設実習に出かけております。あと五日は帰ってきませんし、連絡もなかなか取れないと思います」
誠は、カレンダーで確認した予定を、電話口の警察官に伝えた。
通報してくれた隣の部屋の住人というのは、以前も、一太の弟が訪ねて来た時に物音を聞いていて証言してくれた大学生だろう。長く留守にする予定を、晃と一太は知らせておいたようである。良い隣人に恵まれて、とても住みやすい部屋だったのだが……。誠は、ため息を吐いた。あの一太の弟が一人でもたどり着いてしまったのなら、いよいよ本気で、引っ越し先を探さねばならない。
「そうですか。すみません。いえ、お父さんに確認が取れたら充分です。はい、はい。少年はこちらで対処致します。はい、お手数をお掛けしました」
もう一人住人がいる、と隣の大学生は言わなかったのだろう。誠も、余計なことは言わなかった。以前に世話になった警察官とは別の者だったらしく、電話はあっさりと切れた。
とりあえず、二人が留守の間の出来事で良かった、と誠は息を吐く。
開いた共有カレンダーの今月の最後の日。一太の誕生日、と一太の選んだ赤色で染められている日にちを見ながら、仕事が終わったら早急に引っ越し先を探そう、と誠は思った。
721
あなたにおすすめの小説
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
【完結】君を上手に振る方法
社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」
「………はいっ?」
ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。
スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。
お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが――
「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」
偽物の恋人から始まった不思議な関係。
デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。
この関係って、一体なに?
「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」
年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。
✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧
✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧
前世が教師だった少年は辺境で愛される
結衣可
BL
雪深い帝国北端の地で、傷つき行き倒れていた少年ミカを拾ったのは、寡黙な辺境伯ダリウスだった。妻を亡くし、幼い息子リアムと静かに暮らしていた彼は、ミカの知識と優しさに驚きつつも、次第にその穏やかな笑顔に心を癒されていく。
ミカは実は異世界からの転生者。前世の記憶を抱え、この世界でどう生きるべきか迷っていたが、リアムの教育係として過ごすうちに、“誰かに必要とされる”温もりを思い出していく。
雪の館で共に過ごす日々は、やがてお互いにとってかけがえのない時間となり、新しい日々へと続いていく――。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
本気になった幼なじみがメロすぎます!
文月あお
BL
同じマンションに住む年下の幼なじみ・玲央は、イケメンで、生意気だけど根はいいやつだし、とてもモテる。
俺は失恋するたびに「玲央みたいな男に生まれたかったなぁ」なんて思う。
いいなぁ玲央は。きっと俺より経験豊富なんだろうな――と、つい出来心で聞いてしまったんだ。
「やっぱ唇ってさ、やわらけーの?」
その軽率な質問が、俺と玲央の幼なじみライフを、まるっと変えてしまった。
「忘れないでよ、今日のこと」
「唯くんは俺の隣しかだめだから」
「なんで邪魔してたか、わかんねーの?」
俺と玲央は幼なじみで。男同士で。生まれたときからずっと一緒で。
俺の恋の相手は女の子のはずだし、玲央の恋の相手は、もっと素敵な人であるはずなのに。
「素数でも数えてなきゃ、俺はふつーにこうなんだよ、唯くんといたら」
そんな必死な顔で迫ってくんなよ……メロすぎんだろーが……!
【攻め】倉田玲央(高一)×【受け】五十嵐唯(高三)
転生DKは、オーガさんのお気に入り~姉の婚約者に嫁ぐことになったんだが、こんなに溺愛されるとは聞いてない!~
トモモト ヨシユキ
BL
魔物の国との和議の証に結ばれた公爵家同士の婚約。だが、婚約することになった姉が拒んだため6男のシャル(俺)が代わりに婚約することになった。
突然、オーガ(鬼)の嫁になることがきまった俺は、ショックで前世を思い出す。
有名進学校に通うDKだった俺は、前世の知識と根性で自分の身を守るための剣と魔法の鍛練を始める。
約束の10年後。
俺は、人類最強の魔法剣士になっていた。
どこからでもかかってこいや!
と思っていたら、婚約者のオーガ公爵は、全くの塩対応で。
そんなある日、魔王国のバーティーで絡んできた魔物を俺は、こてんぱんにのしてやったんだが、それ以来、旦那様の様子が変?
急に花とか贈ってきたり、デートに誘われたり。
慣れない溺愛にこっちまで調子が狂うし!
このまま、俺は、絆されてしまうのか!?
カイタ、エブリスタにも掲載しています。
【完結】獣王の番
なの
BL
獣王国の若き王ライオネルは、和平の証として差し出されたΩの少年ユリアンを「番など認めぬ」と冷酷に拒絶する。
虐げられながらも、ユリアンは決してその誇りを失わなかった。
しかし暴走する獣の血を鎮められるのは、そのユリアンただ一人――。
やがて明かされる予言、「真の獣王は唯一の番と結ばれるとき、国を救う」
拒絶から始まった二人の関係は、やがて国を救う愛へと変わっていく。
冷徹な獣王と運命のΩの、拒絶から始まる、運命の溺愛ファンタジー!
【完結】好きな人の待ち受け画像は僕ではありませんでした
鳥居之イチ
BL
————————————————————
受:久遠 酵汰《くおん こうた》
攻:金城 桜花《かねしろ おうか》
————————————————————
あることがきっかけで好きな人である金城の待ち受け画像を見てしまった久遠。
その待ち受け画像は久遠ではなく、クラスの別の男子でした。
上北学園高等学校では、今SNSを中心に広がっているお呪いがある。
それは消しゴムに好きな人の前を書いて、使い切ると両想いになれるというお呪いの現代版。
お呪いのルールはたったの二つ。
■待ち受けを好きな人の写真にして3ヶ月間好きな人にそのことをバレてはいけないこと。
■待ち受けにする写真は自分しか持っていない写真であること。
つまりそれは、金城は久遠ではなく、そのクラスの別の男子のことが好きであることを意味していた。
久遠は落ち込むも、金城のためにできることを考えた結果、
金城が金城の待ち受けと付き合えるように、協力を持ちかけることになるが…
————————————————————
この作品は他サイトでも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる