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175 ◇今までで一番……
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「あま」
それぞれで取り分けたケーキを一口食べた安倍が、岸田の方へずい、と皿を押しやる。
「そんなことだと思った」
自分の分にまだ手を付けていなかった岸田が、その皿を引き寄せて食べ始める。
「うーん、美味しい」
「美味しいね」
一太と岸田が、二人でケーキを口に入れ笑い合う様子を、晃はほっこりと見ていた。
いっちゃんが、ものすごく味わっているなあ。おお、横から上から眺めて、目がきらきらしてる。可愛いな。
あれ? いっちゃんは市販のこういうケーキ、まだ食べたことがなかったっけ? 学食にあるデザートはほとんど制覇したはずだが、そういえば、あそこにケーキはなかった。普段のスイーツは手作りだから、ケーキ屋にも入ったことがない。
「家で作るのと違って、ものすごーくふわふわで軽い。なんでだろ」
「確かに。軽い。クリームもなんか軽い」
「不思議」
「だね」
今度、ケーキ屋さんにも寄ろう。色んなケーキを片っ端から味見しよう。
「痛てっ」
ぺん、と突然、安倍に頭を叩かれて、晃は大して痛くもないけれど声を上げた。
「なんか、ろくでもないことを考えてる気がした」
「えええ? ろくでもないことって何だよ」
「なんでもなーい。あのさ、ちょっとピアノ弾いていい? うるさいとか言われない?」
「ああ。扉も戸も全部閉めてるから大丈夫だよ。最初にご近所さんにご挨拶した時にも、ピアノの練習をするので、たまに音が漏れるかもしれません、って言っておいたし。二軒隣の家がピアノ教室をしていて、いつもピアノの音が聞こえてるから誰も何とも思わないよって言ってもらってるし」
「なにそれ、最高かよ」
にやっと笑った安倍が、ピアノの前に座って出鱈目な伴奏のハッピーバースデーを弾き始めた。何だか切ない感じのバラードが流れて、おや? と思ったら、その次には、ポップで弾むようなハッピーバースデー。そして、和音だけの伴奏のハッピーバースデー。
「なんやかんや上手なんだよね」
くすくすと岸田が嬉しそうに笑った。
「すごいねえ」
「ん。松島くんほどじゃないけど、格好良いよね」
岸田のひそめた声に、一太がにっこりと頷くのが見える。
「僕なんかよりずっと格好良いんでしょ、本当は」
晃がひそひそと返すと、岸田は真っ赤になった。
「ふふ」
一太が笑う。
「ふふふ」
「ふふふふふ」
「おーい。なんだよ、何の内緒話?」
機嫌良くピアノを弾いていた安倍が、むむと振り返る。
「内緒だよ」
「は? まじで?」
「内緒」
「内緒だって」
「は? 村瀬まで? ちょ、それはやめろ」
「大丈夫」
「何が」
「いい内緒だから」
「いい内緒と悪い内緒の分け方が分からん」
「あはははは」
ケーキを食べて、昼は宅配のピザを注文して食べて、ずっと笑いながら話して、それぞれのバイトの時間前に解散した。
とてもとても楽しい誕生日パーティだった。今まで家でしてもらった自分の、どの誕生日パーティよりも楽しかったかもしれない。
それぞれで取り分けたケーキを一口食べた安倍が、岸田の方へずい、と皿を押しやる。
「そんなことだと思った」
自分の分にまだ手を付けていなかった岸田が、その皿を引き寄せて食べ始める。
「うーん、美味しい」
「美味しいね」
一太と岸田が、二人でケーキを口に入れ笑い合う様子を、晃はほっこりと見ていた。
いっちゃんが、ものすごく味わっているなあ。おお、横から上から眺めて、目がきらきらしてる。可愛いな。
あれ? いっちゃんは市販のこういうケーキ、まだ食べたことがなかったっけ? 学食にあるデザートはほとんど制覇したはずだが、そういえば、あそこにケーキはなかった。普段のスイーツは手作りだから、ケーキ屋にも入ったことがない。
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「確かに。軽い。クリームもなんか軽い」
「不思議」
「だね」
今度、ケーキ屋さんにも寄ろう。色んなケーキを片っ端から味見しよう。
「痛てっ」
ぺん、と突然、安倍に頭を叩かれて、晃は大して痛くもないけれど声を上げた。
「なんか、ろくでもないことを考えてる気がした」
「えええ? ろくでもないことって何だよ」
「なんでもなーい。あのさ、ちょっとピアノ弾いていい? うるさいとか言われない?」
「ああ。扉も戸も全部閉めてるから大丈夫だよ。最初にご近所さんにご挨拶した時にも、ピアノの練習をするので、たまに音が漏れるかもしれません、って言っておいたし。二軒隣の家がピアノ教室をしていて、いつもピアノの音が聞こえてるから誰も何とも思わないよって言ってもらってるし」
「なにそれ、最高かよ」
にやっと笑った安倍が、ピアノの前に座って出鱈目な伴奏のハッピーバースデーを弾き始めた。何だか切ない感じのバラードが流れて、おや? と思ったら、その次には、ポップで弾むようなハッピーバースデー。そして、和音だけの伴奏のハッピーバースデー。
「なんやかんや上手なんだよね」
くすくすと岸田が嬉しそうに笑った。
「すごいねえ」
「ん。松島くんほどじゃないけど、格好良いよね」
岸田のひそめた声に、一太がにっこりと頷くのが見える。
「僕なんかよりずっと格好良いんでしょ、本当は」
晃がひそひそと返すと、岸田は真っ赤になった。
「ふふ」
一太が笑う。
「ふふふ」
「ふふふふふ」
「おーい。なんだよ、何の内緒話?」
機嫌良くピアノを弾いていた安倍が、むむと振り返る。
「内緒だよ」
「は? まじで?」
「内緒」
「内緒だって」
「は? 村瀬まで? ちょ、それはやめろ」
「大丈夫」
「何が」
「いい内緒だから」
「いい内緒と悪い内緒の分け方が分からん」
「あはははは」
ケーキを食べて、昼は宅配のピザを注文して食べて、ずっと笑いながら話して、それぞれのバイトの時間前に解散した。
とてもとても楽しい誕生日パーティだった。今まで家でしてもらった自分の、どの誕生日パーティよりも楽しかったかもしれない。
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