【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第二章 人として生きる

17 成人 11

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 困っている。
 とんでもなく、困っている。
 九条さまの胡座の上に座らされて、うるさいし、お酒臭い。九条さまは、年寄りだけど体が大きくて、筋肉も硬いのだ。

「わしは、九条くじょう利胤としたねと言う。じいじと呼んで構わんよ。勇者殿は何てお名前かな」
成人なるひと

 仕方ないから、教える。

「成人か、良い名前じゃな」

 うん。良い名前。
 いいこじゃ、と頭を撫でられた。

「もうご飯は食べたんだったな。ジュースでも飲むか」

 じいじはそう言って、机の上にあったコップに色の付いた水を入れた。ストローもさして渡してくれる。
 飲んでいいのかな?
 生松いくまつの方を向くと、頷いてくれた。
 少しだけ、吸ってみる。
 おおー。
 おおー!
 何これ、美味しい。
 すごく、美味しい!
 
「おやおや、初めて飲むような顔じゃな。オレンジジュースが好きか。旨いか」

 にこにことじいじが笑って言った。
 好き。すごい好き。
 死ぬ間際に、飴とオレンジジュースどちらかやろう、選べって言われたら、悩む。
 美味しい!
 すぐにストローから出てこなくなったので、コップを口につけて傾けてみる。コップにまだ、ちょっとだけ付いてるように見えるんだけど出てこない。

「どれ、もう少し入れてやろう。コップをこちらに出せ」
「九条さま。ほどほどで。ジュースを飲むのが初めてです。粥と雑炊くらいしか食べたことがない子ですので」
生松いくまつ。わしの呼び名は何だったかな? 聞き間違いかな?」
「あ、は、すみません。その、義父上ちちうえ
「ふむ、よろしい」

 じいじはご機嫌で、コップにオレンジジュースをいっぱい入れてくれた。
 ふふーん。
 嬉しいー。
 と、思って綺麗なオレンジ色を眺めてたら、緋色に取り上げられる。

「や!」

 だめー、俺のオレンジジュース。

「多い」

 そう言って、半分飲んだ。
 嗚呼、俺の、俺のオレンジジュースが……。
 返してくれたコップを見る。

「いや。無い。嫌」
「また、明日やるから。今日は、このくらいにしておけ」
成人なるひと。お腹壊したら、明日飲めなくなりますよ。義父上ちちうえが入れすぎたのです。ね。また明日」

 全然、納得いかない。
 不貞腐れてたら乙羽おとわが側に来てくれた。おいで、って手を広げてる。もちろん、行くけど。
 オレンジジュースは離さない。減ったけど。

「なる、嫌って言えて偉い」

 ぎゅって抱きしめてくれた。乙羽はお酒の臭いしない。くっついてたら、もちろん、常陸丸ひたちまるが来た。
 乙羽と離されたから、緋色のとこに行って横にくっついて座る。
 飲も。

「そこに座るの? 緋色さまのこと、怒ってたんじゃねーの?」

 常陸丸が、乙羽を抱えて何か言ってる。知らん。
 オレンジジュースを、ちょっとずつ、ちょっとずつ飲んでたら、緋色が胡座の上に抱き上げてくれた。
 ……幸せかも。
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