【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第二章 人として生きる

19 成人 13

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 バァン!! 
 ものすごい音がして、扉が蹴破られた。
 熱が出て、ぼんやりした頭は、なかなか状況を理解できない。うつ伏せで寝ているので、頭もあまり動かせない。
 俺の汗を丁寧に拭いてくれていた生松いくまつが、びくっとしてから、ベッドの前に立ち上がる。
 軍服の人間が、ばたばたと銃を構えて五人入ってきた。靴を履いたままだ。

「それが、戦闘人形ドールか」

 五人の後に入ってきた男の人が、命令馴れした口調で言った。軍服に様々な装飾が付いている。

「どけ」

 生松いくまつは、咄嗟に両膝を床に付いて膝立ちになり、左拳の上に右手を添えて掲げ頭を下げた。

九条くじょう生松いくまつが奏上申し上げます。これは、怪我をしてしまい、それがもとの発熱で寝込んでいる子どもにございます。起き上がれぬ無礼、ひらにご容赦くださりませ」
「どけ」

 男は、ただ一言。生松いくまつは動かない。

「本日は、緋色ひいろさまがご不在でございます。お帰りになられるまでお待ち頂きますようお願い申し上げます」
「最後だ。どけ」

 これは、もう撃つだろう。俺は、だるい体をぐっと持ち上げた。五つの銃口が、俺の動きに合わせて動く。

「生松」
成人なるひと、熱が高い。寝ていなさい」

 ふらふらと立ち上がって、生松の前に出た。足元が覚束ない。

「ずいぶん壊れているんだな」

 男は、上から下まで眺めて吐き捨てた。

「まあいい。九条、服を脱がせろ」
赤虎せきとら殿下。熱があるのです。怪我をしています。どうか、どうか、ご容赦を」

 俺は、荒い息を必死で整えながら、右手で服を脱ぎ始めた。生松いくまつを殺させはしない。寝るための長袖のTシャツと、肌触りのいい長ズボンを体から落とす。下着も躊躇いなく脱いだ。ぐらぐらと揺れる体を必死で立たせている。

「は、つまらん。研究部は、こんなものが欲しいのか」

 赤虎殿下はそう言うと、手を振った。銃を構えた男たちが、恐る恐る近付いてくる。
 手にしていた縄で、ぐるぐると俺を巻いて、担ぎ上げた。

「帰るぞ」

 まだ、生松が何かを言おうとしたところへ、乙羽おとわが駆け込んできた。
 銃を向けられ、先ほどの生松と同じように、両膝を床に付いて、左拳の上に右手を添えて掲げ、頭を下げる。

泉門院せんもんいん乙羽おとわが奏上申し上げます。赤虎殿下のご用件、緋色ひいろさまのお帰りまで、お待ちくださりませ。ただ今、主が不在なれば、わたくしが、留守を預かってございます」
「黙れ、乙羽。泉門院ごときの言葉、聞く耳持たぬ。緋色なら、私が城へ呼び出したのだ。帰りを待つ訳無かろう」
「何故、成人を連れていかれますか」
戦闘人形ドールを差し出せとの命令を、ことごとく無視しているのは、緋色だ。新旧最強の軍人と戦闘人形ドール、貴重な医師免許持ち、帝国の人間も囲っているそうだな。何を企んでいる?」

 そのまま、廊下を担がれて行く。乙羽と生松が無理をしなくて良かった。
 揺らされて、ますますぼんやりする視界の中に、軍服の男に銃を突きつけられているじいじと常陸丸ひたちまるが見える。一人に、二人づつ付いている。その程度で、あの二人を押さえられる訳がないから、様子を見ているのだろう。
 皆、無事な様子を見て、ほっとして目をつむった。
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