【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第二章 人として生きる

30 成人 18

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「まだ寝てるのか、緋色ひいろさま。お客様が来たから、出てきてください」

 扉をどんどんと叩く音と、常陸丸ひたちまるの声。横で緋色ひいろがまだ寝ていたので、手を伸ばそうとしたら点滴の管があってできなかった。
 ……残念。せめてすり寄ってみる。目の前の唇に唇を合わせて、ちゅー。あら、気持ちいい。夢中になってたら、べろんと唇を舐められた。
 どんどんどん。扉を叩く音がうるさい。

「入りますよ」
「あー、はいはい」

 常陸丸ひたちまるが扉を開けて入ってきた。緋色ひいろはまだ眠たそうに伸びをして起き上がる。

「本当に寝てる……。もう昼ですよ」
「夜中と早朝に起きたんだよ、看病で」

 俺かな。俺がうるさかったから。

緋色ひいろ、ごめんなさい」
「あー、いいんだ、いいんだ。寝る暇あるんだから。痛いときは言えよ」

 もっと静かに我慢をできるようにならなくちゃなあ。

成人なるひと、返事は? 痛いときと辛いときは、言えよ。してほしいことも、ちゃんと言え」
「……ない」
「こいつは、もう」

 緋色ひいろは、着替えながらペットボトルの水を渡してきた。
 受け取ったけど、起き上がれない。飲みたいけど、蓋も開けれない。
 えーと。

「飲まないのか」

 顔を洗いに行ってしまった緋色ひいろの代わりに常陸丸ひたちまるが覗きこんでくる。笑ってる。

緋色ひいろさま。甘やかすのやめたんですか」
「お前の言う通りだった。痛いときは痛いと言えるようにならなきゃ、下手したら、我慢したまま冷たくなってる可能性もあるからな」
「ふふーん、俺は経験者ですからね。乙羽おとわも手こずりましたから」
「ああ、成る程。ところで、飯を食いたいな」
「そんな暇ありませんよ。お客様って言ってるでしょう」
「もう、食べながらでも構わん」

 知らない声が聞こえた。
 中に入ってきてソファに座る。その人は普段着だけど、護衛らしき軍服の人が後ろに付いていた。

朱実あけみ殿下。すみません。緋色ひいろさま、本当に寝てました」
「昨日の話? 朱実あけみが来るほどのことか?」
緋色ひいろ、何か言った? 聞こえなかったなあ」
「……兄上が来るほどの用事とは何ですか」
「分からない訳ないだろう。とりあえず、昼ごはんは私も食べたいから、こちらに運ばせて」
「兄上のお口に合うようなものはありません」
「大丈夫。何でも美味しく頂くよ」

 何かよく分からないけど、俺は寝たままでいいのだろうか。いや、起きれんけど。
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