【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第二章 人として生きる

54 緋色 28

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 楽しそうに右目をきらきらさせて、頬もうっすら赤くしていた成人なるひとが、ふらふらし始めた。
 慌てて抱き上げて、水を飲ませる。二時間は長かったかな。
 勝負は成人なるひとが捕まえた人数が二人多かった。

「ああー。悔しいー。俺も、足の骨を折るんじゃなくて、腱を切れば良かった。そっちの方が早かったー」

 どっちも次からは禁止な。次があるかは知らんけど。
 力丸りきまるの言葉には心のなかで返事をしておく。

力丸りきまるが負けたのか……」

 驚いたような呟きが聞こえてきた。今日の朱実あけみの護衛は泉門院せんもんいん弥壌みづちか。細身で戦闘スタイルはこの二人に似ていた筈。常陸丸ひたちまる力丸りきまるの父の兄の子だったか。

弥壌みづちさん、改めて言わないで。俺は今、落ち込んでるんだから。最後の一人捕まえてても引き分けだったとか、もう……」

 弥壌みづちは信じられないといった顔で、まじまじと成人なるひとを見ている。
 成人なるひとを抱いたまま、背負っていた荷物を外してやると、ほっとしたようにくったりともたれかかってきた。

「これは何だ?」

 腰の小さな入れ物。

「団子」
「団子?」
「どうぞ」

 一つ取り出して、口に入れてくる。小さい団子だな。自分の口にも入れて、もぐもぐと噛み始めた。見ると力丸りきまるも自分の腰の袋から取り出して食べている。ああ。食べて鬼退治に行くやつか。

「仲間になったな」

 と言うと、嬉しそうに笑った。まだ噛んでるけど大丈夫か?
 乙羽おとわ利胤としたねも合流した。

「大丈夫だったか、乙羽おとわ
「私は、奥の部屋で座ってただけよ。大丈夫も何も無いわよ。姫役も退屈ね。ね、おじ様」

 常陸丸ひたちまるの言葉に、事情を知らない、狙われている姫の役だった乙羽おとわは、ただ座って利胤としたねと話していたら終わったと言った。誰も、姫のもとにたどり着けなかったようで何より。

「さて、片付けますか」

 と腕まくりしている乙羽おとわの仕事は今からだ。

緋色ひいろはどうする?尋問に加わる?」
「いや、任せるけど? どうでもいいし」
「私の方が、どうでもいいんだが?」

 朱実あけみ、何しに来たんだろ?

「勝負が見たかったんだよ。私だってたまには遊びたい」

 やっぱこいつ、心読めるんじゃないか? そして遊びに来た、と言ったな。
 二条家の取り潰しは決定事項のようだ。
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