【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第二章 人として生きる

68 緋色 36

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 装甲車が二台こちらに向かって来るのが見える。
 成人なるひとを腕から下ろすと、直ぐに姿が見えなくなった。常陸丸ひたちまるも装甲車の方へ走り出している。
 利胤としたねもそちらへ向かうようなので、残りの全員を集めて装甲車から離れるように動いた。
 俺もあちらが良かったな。出遅れた。
 装甲車の窓が開いて銃がぬっと出てくる。一台は、開いた窓から成人なるひとが入り込むのが見えた。もう一台は敵が顔を出して直ぐに常陸丸ひたちまるに撃たれた。また別の者が顔を出すが、撃たれて銃を落とす。
 成人なるひとが入り込んだ装甲車が蛇行し始めた。
 利胤としたねがタイヤへ銃を撃ち込む。スピードを落とす車へ飛び付き、開いていた窓に手をかけてドアをむしりとった。乗り込んで車を停めると、成人なるひとを小脇に抱えて出てくる。あいつ、病み上がりだったな、しまった。
 もう一台もいつの間にか常陸丸ひたちまるに停められて、制圧されている。
 屋敷から火の手が上がり始めた。
 くそ。俺の屋敷が。
 大切なものを集めた俺の居場所。
 
「皆殺しだ!」

 腰の銃を手に持って装甲車の方へ行こうとしたら、青葉に腕を掴まれる。

緋色ひいろさま! 深呼吸!」
「黙れ」

 本気で睨んだが青葉は表面上は動じなかった。ちっ。
 利胤としたねが帰ってきて成人なるひとを渡そうとしてくる。

「お前が抱いてろ。とどめを差してくる」
緋色ひいろ。俺、殺さなかった」

 利胤としたねの腕の中でこちらに手を伸ばしながら成人なるひとが言う。

「なるちゃん、偉い!」

 青葉の誉め言葉に、にひゃ、と笑う成人なるひとを仕方なく受け取り、銃を腰に戻す。

「どいつもこいつも! 今、俺を止めたこと後悔させてやる」
力丸りきまるが怖がるから、殺さない」
「ふん。あのヘタレめ!」

 少し動いただけで疲れてるな。くた、と体重を預けてきた。

「二条ですね」

 装甲車から全員引っ張り出した常陸丸ひたちまるが戻って来た。

「だろうな。同じ目にあわせてやる」
「お供します」

 常陸丸ひたちまるもかなり頭にきているようだ。

「わしも参ります」
「俺も行くぅ」
成人なるひとは留守番です」

 生松いくまつが強い口調で言った。そっと成人なるひとの腕を取って脈を調べている。今、制圧に行かせたことを咎めるようにこちらを見てきた。

「下ろしたら勝手に行ったんだ」
「下ろさなきゃよろしかったのに」
 
 どいつもこいつも、遠慮のないことだ。
 だが、この距離感はとても居心地が良い。
 少しだけ落ち着いて、二条の屋敷をどんな風に潰してやろうかと考えたら、気分は浮上した。

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