【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第二章 人として生きる

77 成人38

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「姫。どうぞ顔をお上げください」

 三雲みくもの落ち着いた声が響く。

「ご結婚おめでとうございます」
「ありがとう」 
 
 頭を上げた乙羽おとわがにっこり笑った。今日も美人!

「結婚おめでとう」

 緋椀ひまりもぼそっと言う。

「ありがとう。緋椀ひまりくんのいないときにごめんなさいね。でも、内々で式を済ませたから、親戚もほとんど呼んではいないのよ。あ、でも、緋見呼ひみこさまはいらっしゃったけど」
「あー、母上が勝手に押し掛けたんだろ?」

 くすくすと乙羽が笑った。

「殿下、出ますよ」

 常陸丸ひたちまるの声で装甲車に乗り込む。俺が荷台の方を向いていると、どうした? と隣に座った緋色ひいろが聞いてきた。

「乗るところ、あっち」

 俺の乗るところは荷台。

「あれは、荷物置き場だ。人の乗るところじゃないんだ」

 ぽかんと見上げていると、緋色ひいろに頭を撫でられた。

成人なるひとは人になったから、こっちに乗る」

 そっか。武器じゃなくなったか。お尻痛くなさそうで助かります。
 座席の感触を楽しんでいると、隣に座っていた乙羽おとわと向かいの席の三雲みくもが眉根を寄せて、嫌そうに首を横に振るのが見えた。

「護衛を頼む」
「お任せください」

 緋色ひいろの言葉に三雲みくもが頷いている。
 出発しようとしたら広末ひろすえ斑鹿乃むらかのが二人で走ってきた。

「殿下! 途中まででいいので乗せてください!」

 斑鹿乃むらかのが繋いだ手を恥ずかしそうにほどこうとして、広末ひろすえがもっとぎゅっと握るのが見える。

泉門院せんもんいんの屋敷に行きたいんです。師匠に仮免許を貰ってきます」

 乙羽おとわの顔が、ぱあ、と笑顔になった。

広末ひろすえ?」
「はい。姫様。け、結婚しました」

 きゃー、と乙羽が嬉しそうな声を上げる。

斑鹿乃むらかの、おめでとう。え? え? したの? もう、結婚したの? いつ、いつ求婚プロポーズしたの? 調理士免許取れたらって、ずっと待たせてたのに」
「あの、ついさっきです。その……」
「いいから乗れ」

 緋色ひいろが話を止めて促す。斑鹿乃むらかのはずっと真っ赤な顔で俯いていた。

「途中でいいんだな」
「はい。王城を出たら乗合タクシーがありますので」
「ついでに指輪も買ってこい」 
「は、いえ、その、それはまた」

 広末ひろすえも真っ赤になる。

「またっていつ? 今日じゃないと駄目よ。広末ひろすえは料理のことを考え出したらすぐに忘れちゃうんだから。ああ私、そちらに付いていきたいくらいだわ」

 車の中に乙羽の明るい声が響く。俺は、この声がとっても好き。皆もにこにこしてる。

「そちらに行ってもいいぞ」

 緋色ひいろの言葉に乙羽は、はっとした。

「……実家が消える日に友達の結婚の方が大事って、私は人でなしね」

 人でなし? そんなわけ無い。

「ここは人が乗るところ」

 
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