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こぼれ話
行くか 緋色
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ぬいぐるみを抱えて食堂へ入ってきた乙羽は、成人の座椅子の側にぺたんと座り込むと、なる、と声をかけた。
「あのね、図鑑を貸して欲しいの。明日すぐに返すから、今夜だけ貸してもらっていい?」
「いいよ。明日もいいよ。」
「ありがと。後で借りに行くね。あのね、ぞうときりんはね大きいでしょ。でもね、かばの口の方が大きいのかなって気になって。」
そのままそこで、成人と話し始める。
成人の右隣は俺の席だし、左隣には二十日ほど朱実の視察に付き合って留守だった力丸が当然の顔で座っているから、食卓から離れて座っている形だ。
「力丸、一つ横にずれてやれ。」
「ええっ。ひどい。俺、久しぶりに帰ってきたから成人と喋りたかったのに。」
俺と力丸の会話にも気付かずに、成人と乙羽が話している。動物の話で盛り上がっているようだ。
結局、力丸は席を二人分あけて、乙羽の横には常陸丸が座った。
「ぬいぐるみ、気に入ったんだ?」
夕食を食べながら、まだ話し込んでいる二人は、ぬいぐるみを横に置くだけでも渋っていた。
力丸の言葉に赤璃が答える。
「そんなに気に入ってもらって嬉しいわ。ねえ、連れていってあげたら?動物園。」
「いいですね。俺もあまり覚えてないから、行きたいな。」
常陸丸がこちらを伺っている。確か遠足の時は、倒れてしまった乙羽が心配で、団体行動時間だけ動物園内にいて、自由時間は乙羽の看病してたからな、常陸丸は。俺も付き合ったし。
車で片道一時間半ほどの距離だったか。成人と乙羽に日帰りは難しいかな。
「ただいまー。」
当然のような顔で、赤璃の横に朱実が座った。
ただいま、とは?
ここは、兄上の家じゃないのだが。
「おかえり。」
成人が返事をすると、朱実がにっこり笑う。
「おや、二人ともぬいぐるみを気に入ってくれたんだね。良かった、良かった。」
運ばれてきた夕食を、嬉しそうに眺めて手を合わせている。
自分の家で作ってもらえばいいものを。
「二人とも、動物園を見たことないのですって。」
「そうかあ。行ってきたら?楽しかったよ。」
「いいのか。」
思わず、声を上げた。
「私たちも、それなりに楽しんで来たしね。行っておいでよ、新婚旅行。」
「日帰りは無理だぞ。」
分かってる、と言いたげな朱実の顔に、休みを一週間くらいもぎ取ろう、と決意した。
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