【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第五章 それは日々の話

72 大きくなったに違いない  成人

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 お宿のご飯は、いつもの食事の何回分もの量が出てくる。結婚式の時のご飯もそうだったけど、本当に、どうやったら全部お腹に入るんだろう、って思うくらいの量だ。それでも、緋色ひいろ常陸丸ひたちまるのお腹に、どんどん入っていくんだよね。
 そんなときは、俺と乙羽おとわのお腹にも、いつもよりいっぱい入る。少しずつ持ってきてくれるから、入るのかな。不思議だ。

「見て。お芋」

 この前と違って、先に、ご飯と茶碗蒸しとお椀に入った汁物を出してくれた。緋色ひいろが頼んでくれてたなあ。嬉しい。ご飯が最後に出てくると、もうお腹いっぱいで食べられないことが多いから。

「さつまいもの炊き込みご飯、甘くて美味しい!」

 俺と一緒のを出してもらった乙羽おとわが、一口食べて教えてくれた。すごく湯気が立ってるのに、もう口に入れたの?熱くない?
 俺は、一口分持ち上げて、ふーふーしてる。お芋は確か、真ん中がなかなか冷めないんだよ。でも、茶碗蒸しとお汁はきっと、もっと熱い。冷めるように、ちゃんとふたを開けて置いてある。早く食べたいからね。
 今日は、背の高いお盆の上に俺の食べ物をのせてくれているので、とても食べやすい。左手で持ち上げられないから、いつも少し屈んで食べているんだけど、屈まなくても食べ物が近い。

「膳か。いいな。うちでも、そうして高さを出すと食べやすいかもな」

 俺の背の高いお盆を見た緋色ひいろが言った。

成人なるひと、それ食べやすいか?」

 常陸丸ひたちまるに聞かれて頷くと、料理を運んできた女の人にすぐ、この膳はどこに売っているものか、と聞いている。おうちでも使えたら、便利かも。
 さつまいもの炊き込みご飯は、ものすごーく美味しかった。さつまいもは甘くて、ご飯のとこは少ししょっぱくて、味は濃い過ぎなくて、最高だ。
 そうだ、お土産持って帰らなくちゃ。

「お品書き、ありますか」

 料理を運んできた女の人に尋ねると、一度びっくりして目を見開いた後、こくこくと首を縦に振った。
 こちらでございます、と渡された用紙には、結婚式の時のお品書きと同じような字で筆書きしてあって、俺には読めない。読めない字は辞書でも調べられないから、これは諦めてる。でも広末ひろすえには、貴重なお宝、らしい。うふ。今日もいいお土産が手に入った。

「読めるか?」
「んーん、読めない。広末ひろすえにお土産」
「おお。泣いて喜ぶな」

 喜ぶけど、泣いたりはしないと思う。
 緋色ひいろたち三人の前には小さな鍋が置かれて、火がついている。固いものが多い前菜やお刺身も並んで、机がいっぱいになってきた。

「なる。貝のお汁も美味しいよ」

 乙羽おとわが、どんどん食べて教えてくれる。火傷しないように、慎重にお汁を飲むと、貝の風味が口いっぱいに広がった。

「うわぁ、好き」
「ねー、美味しいね」

 貝は、噛みきれないからあんまり食べないけど、貝が入ってるだけで、お汁の味がすごく美味しくなるから、貝のお汁はすごく好き。
 ふーふーしながら、夢中で飲んだ。
 食べたり飲んだりしたら、もっともっと欲しくなるなんて、すごいご飯だよね。
 帰ったら広末ひろすえにまた、作ってもらおう。

 
 
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