【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第五章 それは日々の話

89 デパートはなかなか楽しい  緋色

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乙羽おとわ、見て。ねえ見て。いっぱい積んだ。高い」
「わ、なる凄い。ね、私のも見て。お家に見えない?」
「見える。すごい」

 玩具屋の、お試しください、と書かれた場所で、積み木で遊び始めた二人を見守りながら、常陸丸ひたちまると昼食の相談をする。

「この建物の中に、様々な食堂があるから、どこか選んで食べて帰りましょう」

 そう言いながら常陸丸ひたちまるが、この建物内の案内図を広げる。各店舗の名称と案内の文が載っていて、とても分かりやすい。
 食堂だけでも、天ぷら専門店、寿司屋、定食屋、うどんと蕎麦の店など、幾つも並んでいた。
 外での食事などほとんどしないので、珍しくてじっくりと眺め回してしまう。

「いつもはどうしているんだ?」
「そうですね。専門店だとそれしか選べないから、色んな品書きがある店に入ることが多いです」

 乙羽おとわも、成人なるひとほどではないが、食べられる物が限られているからな。

「この、豚カツ屋っての、旨そうだな」
「あ、新しい店ですよね。この前来たとき俺も気になってたんですが、どうにも乙羽おとわには噛めそうになくて、諦めたんですよ」
「分厚い豚肉に衣を付けて揚げるのか。硬いか……」
力丸りきまる村次むらつぐが先日、二人で食べたらしいんですけどね。かなり分厚い豚肉だったと言ってました。部位によっては軟らかいけど、コロッケと同じ衣が付いて揚げてあるから、乙羽おとわ成人なるひとには食べられないと思うって」
「豚カツ以外には置いてないのか」
「定食になってるから、ご飯と味噌汁とキャベツの千切りが付いてて、キャベツの千切りはおかわりできるって言ってましたよ」
「最高だな」

 もう、そこしか考えられん。ご飯と味噌汁があれば、とりあえずいいんじゃないか?

「茶碗蒸しも、付け足しできるんだったかな」
「ちゃっちゃと行こうぜ」
「殿下から、末良すえよしに何か買わなくていいんです?」
「俺からってなると、色々と面倒だろ?俺はいつも、全員に図書券だ」
「あー、成る程ねえ」

 下手に何かを選んで渡すと、皇族からの下賜品となってしまう。まあ、それを売りに出すような不届き者は離宮うちにはいないが、わざわざ配ることはない。
 常陸丸ひたちまる乙羽おとわには、選んだ品を渡しているから知らなかったか。まあ、そこはそれ、特別扱いなのは当たり前だ。力丸りきまるもな。あいつには、同じ駄菓子を百個とか、ふざけられるから面白い。

「ねえ、末良すえよしって積み木持ってるかな?」
「持ってないよ」

 乙羽おとわからのプレゼントは、積み木にするようだ。ところで、何でお前は、末良すえよしが積み木を持っているか持っていないかを知らないんだ?斑鹿乃むらかのに会いたくて、しょっちゅう家を訪ねているのに。成人なるひとは即答だったぞ。

末良すえよしが積み木で遊ぶときには、お家を作って見せてあげようっと」
「じゃあ、今度は一緒に遊ぼ」

 乙羽おとわ、お前、斑鹿乃むらかのとのおしゃべりに夢中で、末良すえよしのこと全然見てないな。
 
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