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第五章 それは日々の話
169 暖かくなったら 三郎
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洗いの終わった洗濯物の泡だらけの水を抜き、脱水槽へ移す。洗濯物は、随分冷たくて、部屋を暖めていても指先はどんどん冷えていく。
脱水槽からはみ出しそうな洗濯物は、ぎゅうぎゅうと押し込めればいいと言われて、頑張って押し込んだ。蓋を閉めてスイッチを捻れば、がたがたがた、と激しい音で機械が回り始める。
「自分でやる!」
もうひとつの機械を担当している成人さまの声が聞こえて、そちらを向けば、手伝おうとしていた緋色殿下の手を断っていたようだ。
成人さまの細腕では、なかなか大変そうやと私でも思うのやから、殿下が思わず手を出してしまう気持ちも分かる。殿下は、成人さまの体が冷えることを恐れていたし、こんなに指先が冷えていると知られれば、作業を止められてしまうかもしれない。
それでも、こちらの機械の激しい音が止まる頃、成人さまの機械も、がたがたがた、と音を立て始めた。無事に、成人さまの手で作業が済んだようだ。
「わ。洗濯物、大丈夫かな」
目の前で激しい音を立てる機械に、成人さまが心配げな声を上げる。確かに。本当に音が大きくて心配になってしまう。
生松先生は、そんな私たちを見て、ふふっと笑った。
促されて、止まった機械の蓋を開けると、あんなに押し込んだ洗濯物が、すっかり縮こまって槽に張り付いてる。
「水気が絞れましたね。ではまた、洗濯槽に戻して」
生松先生の言葉に、作業を再開した。機械を使用していても、なかなかに忙しい。様々な機械で、生活が便利になったと聞いてはいたが、使用していない自分には特に何の感慨もなかった。
これで、便利になった状態なのか、と思ってしまうくらいには、大変だ。
それにしても。
「こんなにしわしわになってていいの?」
それそれ。
思わず、成人さまの顔を見ながら同意の頷きを返してしまう。
脱水終わりの洗濯物は、ネット越しに見てもしわくちゃで、いつも着用している状態とかけ離れた姿になっていた。
「干すときに、よく伸ばして干すんですよ」
よくよく手間がいるらしい。
「まあでも、こんなにしわくちゃにできない服はやっぱり、従来通り手洗いしなくちゃなりませんけどね」
手洗い!
そうか。手洗いだったのが、機械になったのか。この冷たい水に手をつけて、ひたすらごしごしと洗ったり絞ったりする様子を思い浮かべて、なんと大変なことやろう、と驚いた。
これは確かに、便利な物だ。指先が冷えるのも、ずっと手をつけて擦ることを考えれば、大したことやない。
「洗濯機を考えた人は、すごいですねえ」
思わず呟けば、成人さまも、うんうんと大きく頷いていた。
干すときには、よくよく伸ばすというのがなかなかに大変なことと、指先が最も冷えるのはこの作業なのだということを知った。
また、自分の仕事の休みの日には、洗濯のお手伝いをしよう。干すだけでも、きっと助かるんじゃないやろか。
隣を見ると、成人さまと目が合って、二人でうん、と頷きあった。
二人でやりましょうね、と思った直後に、成人さまの手を握った緋色殿下の、
「うわ。指、冷えすぎ。この作業、冬場は禁止」
という声が響いた。
暖かくなったら、やりましょうね、と心の中で言っておいた。
脱水槽からはみ出しそうな洗濯物は、ぎゅうぎゅうと押し込めればいいと言われて、頑張って押し込んだ。蓋を閉めてスイッチを捻れば、がたがたがた、と激しい音で機械が回り始める。
「自分でやる!」
もうひとつの機械を担当している成人さまの声が聞こえて、そちらを向けば、手伝おうとしていた緋色殿下の手を断っていたようだ。
成人さまの細腕では、なかなか大変そうやと私でも思うのやから、殿下が思わず手を出してしまう気持ちも分かる。殿下は、成人さまの体が冷えることを恐れていたし、こんなに指先が冷えていると知られれば、作業を止められてしまうかもしれない。
それでも、こちらの機械の激しい音が止まる頃、成人さまの機械も、がたがたがた、と音を立て始めた。無事に、成人さまの手で作業が済んだようだ。
「わ。洗濯物、大丈夫かな」
目の前で激しい音を立てる機械に、成人さまが心配げな声を上げる。確かに。本当に音が大きくて心配になってしまう。
生松先生は、そんな私たちを見て、ふふっと笑った。
促されて、止まった機械の蓋を開けると、あんなに押し込んだ洗濯物が、すっかり縮こまって槽に張り付いてる。
「水気が絞れましたね。ではまた、洗濯槽に戻して」
生松先生の言葉に、作業を再開した。機械を使用していても、なかなかに忙しい。様々な機械で、生活が便利になったと聞いてはいたが、使用していない自分には特に何の感慨もなかった。
これで、便利になった状態なのか、と思ってしまうくらいには、大変だ。
それにしても。
「こんなにしわしわになってていいの?」
それそれ。
思わず、成人さまの顔を見ながら同意の頷きを返してしまう。
脱水終わりの洗濯物は、ネット越しに見てもしわくちゃで、いつも着用している状態とかけ離れた姿になっていた。
「干すときに、よく伸ばして干すんですよ」
よくよく手間がいるらしい。
「まあでも、こんなにしわくちゃにできない服はやっぱり、従来通り手洗いしなくちゃなりませんけどね」
手洗い!
そうか。手洗いだったのが、機械になったのか。この冷たい水に手をつけて、ひたすらごしごしと洗ったり絞ったりする様子を思い浮かべて、なんと大変なことやろう、と驚いた。
これは確かに、便利な物だ。指先が冷えるのも、ずっと手をつけて擦ることを考えれば、大したことやない。
「洗濯機を考えた人は、すごいですねえ」
思わず呟けば、成人さまも、うんうんと大きく頷いていた。
干すときには、よくよく伸ばすというのがなかなかに大変なことと、指先が最も冷えるのはこの作業なのだということを知った。
また、自分の仕事の休みの日には、洗濯のお手伝いをしよう。干すだけでも、きっと助かるんじゃないやろか。
隣を見ると、成人さまと目が合って、二人でうん、と頷きあった。
二人でやりましょうね、と思った直後に、成人さまの手を握った緋色殿下の、
「うわ。指、冷えすぎ。この作業、冬場は禁止」
という声が響いた。
暖かくなったら、やりましょうね、と心の中で言っておいた。
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