【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第五章 それは日々の話

192 だが、俺のもの  緋色

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 俺が腰を浮かせると、それぞれの母親たちが先に立ち上がっていた。

「アイスクリームが届いたわよ」
「一度、お片付けして戻ってらっしゃい」

 見ると、食事の最後のデザート、皇家の食卓でしか食べられないアイスクリームが運ばれてきていた。広末ひろすえは、アイスクリームは作れないことになっているから、子ども用の食事には付けられなかったのか。どこの家も、大人の分を子どもらに回してやるようだ。うちもちょうどいい。俺の分を成人なるひとに渡せる。     
 立ち上がって会釈をした四条の母親と共に、机をぐるりと回って迎えに行く。まだ、成人なるひとにしがみついていたちびどもの頭を軽く小突くと、いてっと抗議の声が上がった。手加減してやったんだ。痛いわけないだろ?

「こら、これは俺のだ」
「ええー。成人なるひとさまは皆の!緋色ひいろ殿下のじゃない」
見可みかあ?残念だったな。俺のなんだ」

 ちびどもにしがみつかれながら、黙って座っていた成人なるひとを抱き上げる。素直に抱きついてきたところをみると、少し困っていたようだ。このくらいの年齢の子どもたちとの関わりは、初めての経験だったか。懐いてしまえば全く距離を取ることをしない、自分の物差しで全てを測る子どもらは、そのことを知らない人間には戸惑うばかりだろう。
 すぐ横にある顔を見れば、楽しそうに緩んでいる。戸惑うだけでは無かったなら良かったことだ。頬を寄せると、成人なるひとの方からも寄せてきてぺたりとくっついた。

成人なるひとさま。殿下のこと好き?」
「うん。大好き」
「俺は?俺も好き?」
「うん。見可みかも好き」

 へへ、と見可みかが俺を見る。
 同じだと思うなよ。俺のことは、大好きって言ったんだからな。ちゃんと聞いてるか、お前。

見可みかも。見可みか成人なるひとさま好きー」
「私も」
鶴来つるぎも好き」

 四条の孫、鶴来つるぎも嬉しげに笑っている。お前も、よく聞け。好きと大好き、は天と地ほどの差があるからな。

美鶴みつるも好き。灯可とうかも好き」
「私も。成人なるひとさま、また遊ぼ」
「うん」

 四条の孫娘、美鶴みつるはあっさり言って母親と手を繋いだ。弟も慌てて母親の反対の手を握る。
 早く戻らないとアイスクリームが溶けちまうな。
 四条の母親と共に踵を返そうとしたら、抱き上げている成人なるひとの足を、がしっと掴む手が止めた。

「絶対、後でじゃんけんして」
灯可とうか、離せ」
「私とじゃんけん」
灯可とうか
「いいよー」
「約束ですよ?」
「うん」
「絶対」
「うん」
灯可とうか。アイスクリームが溶けますよ」

 いい加減、小突いてやろうかと思った頃に、茉璃まつりが声を掛けながら灯可とうかの手を成人なるひとから離させた。
 こいつ、こんなに何かに懸命になるようなことあったか?

緋色ひいろ殿下、成人なるひとさま、すみません」

 灯可とうかを抱え込んで頭を下げる茉璃まつりに、気にするなと手を振って席に戻る。見可みかは、とっとと朱可しゅかさんの膝に座ってアイスクリームのスプーンを持っていた。
 こちらも、当たり前のように成人なるひとを膝に座らせる。

「アイスクリーム!」

 隣では、鶴来つるぎが四条の当主の膝の上にいた。もう口にアイスクリームが入っているらしい。ちびどもは要領の良いことだ。
 灯可とうかだけが、心ここにあらずといった様子で、アイスクリームを口に運んでいた。あいつは今日は、随分と子どもらしいことだな。朱可しゅかさんが、笑ってそれを見ているから、悪いことではないらしい。
 うちの伴侶は、相変わらず人たらしで困る。
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