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第六章 家族と暮らす
1 金魚に会えない 成人
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赤璃さまのお腹にいた子どもが出てきたのは、四月二十日のことだった。もともとの予定より二週間遅れて、かなり心配されていたらしい。俺が赤璃さまに会えたのは、臨月というのに入る前までだったから、詳しい様子はさっぱり分からないんだけれど。
臨月というのは、お腹の中にいる子どもがいつ出てきてもおかしくない時期をいう。生まれる予定日の四週間前。予定日は四月七日だったから、つまり、三月の初め頃から会えていない。もともと、寒くなってからはなかなか会えなかったから、暖かくなったらたくさん会いに行く、と約束していた。だから、少し気温が高くなった頃にお城に行ったんだけど、いつものように赤璃さまや雫石母さまが住んでいる場所に入れなかった。
皇族居住区という区画の前に立っている兵士が、
「赤璃殿下のご出産が終わり、殿下方の状態が落ち着かれるまで、こちらにはご血縁の方しかお通しできないことになっております」
と、言った。
少し難しい言葉が多かったけど、今、ここに入れないことだけは分かったので、
「急に来てごめんなさい」
と、頭を下げた。この日に行くよ、とか、この時間に行くよ、といった予定を伝えておいた方がいいことは以前から言われていたのに、暖かくて自分の体調がいいからと突然訪ねてきた俺が悪かった。
「あ、いえ。その、今日だけではなく、しばらくの間、成人さまはお通しできないんです」
二人いる兵士のうちの一人が、分かりやすいように言ってくれる。
しばらくの間……。結構、長い期間を指すのだったな。
そうか、金魚にもしばらく会えないのか、と少ししょんぼりしながら帰ろうとすると、赤璃さまの所の、よく見かける侍女さんが居住区から出てきて、
「あの、少しの時間でもいけませんか」
と、聞いてくれた。
「その、成人さまはよく風邪をひかれるので、何かよくない病気の種でも持ち込まれてはいけないからしばらく通さないでおくれ、と朱実殿下が仰られまして。申し訳ありませんが、成人さまをお通しできないのです」
そうかあ。風邪はうつることがあるからね。俺の発熱は、あまり人にうつる心配はないと生松は言ってたらしいけど、でも心配だから仕方ない。
もう一度、ぺこりと頭を下げて帰ろうとすると、侍女さんが付いてきてくれた。
「お見送りさせてください」
いいの?ありがと。
「医師の診察を受けて、何も問題ないと診断された後なら入れないか、尋ねてみます。お茶を早めに淹れてお待ちしていますね」
「うん。ありがと」
「赤璃殿下も会いたがっていらっしゃるので、また来てくださいね」
その日、侍女さんはそう言って見送ってくれた。
けれどその後、お部屋をお訪ねしたいです、と書いた手紙はすべて却下され、予定日よりだいぶ遅れて皇子様が誕生したときには、俺はもう二ヶ月も、赤璃さまや雫石母さま、金魚に会えていなかった。
臨月というのは、お腹の中にいる子どもがいつ出てきてもおかしくない時期をいう。生まれる予定日の四週間前。予定日は四月七日だったから、つまり、三月の初め頃から会えていない。もともと、寒くなってからはなかなか会えなかったから、暖かくなったらたくさん会いに行く、と約束していた。だから、少し気温が高くなった頃にお城に行ったんだけど、いつものように赤璃さまや雫石母さまが住んでいる場所に入れなかった。
皇族居住区という区画の前に立っている兵士が、
「赤璃殿下のご出産が終わり、殿下方の状態が落ち着かれるまで、こちらにはご血縁の方しかお通しできないことになっております」
と、言った。
少し難しい言葉が多かったけど、今、ここに入れないことだけは分かったので、
「急に来てごめんなさい」
と、頭を下げた。この日に行くよ、とか、この時間に行くよ、といった予定を伝えておいた方がいいことは以前から言われていたのに、暖かくて自分の体調がいいからと突然訪ねてきた俺が悪かった。
「あ、いえ。その、今日だけではなく、しばらくの間、成人さまはお通しできないんです」
二人いる兵士のうちの一人が、分かりやすいように言ってくれる。
しばらくの間……。結構、長い期間を指すのだったな。
そうか、金魚にもしばらく会えないのか、と少ししょんぼりしながら帰ろうとすると、赤璃さまの所の、よく見かける侍女さんが居住区から出てきて、
「あの、少しの時間でもいけませんか」
と、聞いてくれた。
「その、成人さまはよく風邪をひかれるので、何かよくない病気の種でも持ち込まれてはいけないからしばらく通さないでおくれ、と朱実殿下が仰られまして。申し訳ありませんが、成人さまをお通しできないのです」
そうかあ。風邪はうつることがあるからね。俺の発熱は、あまり人にうつる心配はないと生松は言ってたらしいけど、でも心配だから仕方ない。
もう一度、ぺこりと頭を下げて帰ろうとすると、侍女さんが付いてきてくれた。
「お見送りさせてください」
いいの?ありがと。
「医師の診察を受けて、何も問題ないと診断された後なら入れないか、尋ねてみます。お茶を早めに淹れてお待ちしていますね」
「うん。ありがと」
「赤璃殿下も会いたがっていらっしゃるので、また来てくださいね」
その日、侍女さんはそう言って見送ってくれた。
けれどその後、お部屋をお訪ねしたいです、と書いた手紙はすべて却下され、予定日よりだいぶ遅れて皇子様が誕生したときには、俺はもう二ヶ月も、赤璃さまや雫石母さま、金魚に会えていなかった。
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