【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第六章 家族と暮らす

5 散歩  成人

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赤璃あかりさまの子どもは無事に生まれたんだよね?じゃあ、そろそろ皇族居住区に入れるかな?」

 赤璃あかりさまのところは無理でも、金魚に会いに行きたいなあ。
 そう思ってお手紙を書いたけど、やっぱり許可は下りなかった。生まれたばかりだものな。残念だけれど、仕方ない。
 そうだ。お城へ行くくらいはいいかな?緋色ひいろも、毎日お城でお仕事をしているし、暖かくなってきたから、少し散歩してお城に行くのはどうだろう。お城には、お仕事をする人がたくさん出入りするから、先触れはいらない。
 昼ごはんの後、思いつきでお城に向かったのは、子どもが生まれたと聞いた次の次の日。
 暖かい陽射しの中を歩くのは気持ちよくて、緋色ひいろに会えると思うと、とても楽しい気分だった。目の前を、小さな、白い蝶々がひらりと舞う。少し追いかけて、花に止まる様子を見た。
 巡回している二人組の警備隊の人が、ぺこりと頭を下げてくれたので、俺もぺこりと頭を下げる。
 ああ、そうだった。
 とりあえず城へ行こう。
 蝶々にさよならをして、城の方へと足を向けた。少し道を逸れてしまったけど、分かる。道を覚えたり、方向を探ったりするのは得意なんだ。迷子になっていたら、生き残れない。通ったことのある道はもちろん、知らない道でも勘を働かせて何とかしないと、死んじゃうからね。ここは、同じような木が並ぶ森のなかと違って、大きなお城や離宮、その他の建物も見えているから、絶対大丈夫。道もあるしね。
 離宮側からの道は、いつも通り警備隊の人くらいにしか会わなかったけれど、お城に近付くにつれて、まったくいつも通りではない人の数に驚いた。門からお城へ続く道は、たくさんの人で混雑していた。

「あれ?」

 こんな状態は、見たことが……。いや、あれだ。寧子やすこさんと赤虎せきとらの結婚式の時。お城の前がこんな感じになってたっけ?今は、きちんとしたスーツ姿の男の人ばかりが並んでいて、着物の女の人がいないとこが違うけど。

成人なるひとさま。違う入り口から入りましょう」

 少し離れたところで一度立ち止まって、びっくりと行列を見ていると、じいやが隣に並んで、俺の耳元で言った。

「違う入り口?」
「はい。正面がこのように混雑している場合に、皇族方が円滑に入城するための入り口がございます」
「ふーん」

 俺は、緋色ひいろのところへ行けたら何でもいいよ。
 じいやにくっついて、行ったことのないお城の入り口へ向かう。

「皇子殿下ご誕生のお祝いの品を、使いの者や頼まれた店の者が運んで来たり、お祝いを直接お伝えしたいという方が来られたりしておるようです」

 ああ、うん。
 お誕生日は、おめでとうの日だからね。

「入り口で身元の確認や手続きを常より多くせねばならぬので、大変なことになっておりますね」
「俺も、お祝いをあげたいなあ」
緋色ひいろ殿下とご相談なさるとよろしいでしょう」
「うん」

 そうして、特別な入り口へ連れていってもらったのだけれど。

「こちらから入れる方の名簿に、成人なるひとという名はございません」

 その入り口を守る兵士にそう言われて、お城に入ることはできなかった。
 
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